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これからの日本をつくる"働き方"のストーリー

「念い」をつなぐ働き方改革――「スマートワークプロジェクト」

UQコミュニケーションズ株式会社
通信の発展に貢献することを目指すUQコミュニケーションズは、少数精鋭のチームで目覚ましい事業成長を続けてきました。その一方、各々の社員が背負う業務量は増し続けていきます......。そんなとき、総務・人事部が提案したのが「スマートワークプロジェクト」の導入。新規事業拡大と働き方改革、この一見相容れない改革に踏み切るまでには、さまざまな「念い」がありました。

相反する「念い」――奮闘のはじまり

▲社長と総務・人事部メンバー

「つなぐで感動を」を掲げ、モバイルインターネットサービスを提供するUQコミュニケーションズ。総務・人事部がスマートワークの導入を試みはじめたのは、2014年11月。現在の社員数より約3分の2程度の人数規模でした。

全国規模の通信事業を少数精鋭で展開し、順風満帆な事業成長を続ける一方、WiMAXという主軸事業に加え、スマートフォン事業へ新規参入するために、業務が繁忙を極めている時期……。少数精鋭で全社一丸となって事業を拡大してかなければならない中で、社員からは「今でさえ大変なのに、今後更に仕事量を増やして、力業で対応するのは限界」という声が挙がっていました。

そんな成長過渡期に、総務・人事部からのスマートワークプロジェクト(同社における働き方改革の名称、通称「スマワク」)の提案。

事業拡大の繁忙を極めている中での働き方改革という、相反するかのように見えるこの提案に対し、もちろん社長の野坂章雄からの賛同も得られず……。

とはいえ、UQコミュニケーションズ総務・人事部は諦めません。ここから約1年。奮闘がはじまります。

経営戦略のひとつとしてーー「スマワク」誕生の瞬間

次なる提案に向けて、総務・人事部のメンバーは、なぜ働き方改革をするのかをさまざまな視点で提案するため、先進事例を学びに他社の人事部を訪問。働き方を特集した雑誌を見ては、面識のなかった企業にもコンタクトをとりました。

他社の事例も参考にしつつ、社長と議論を重ねる中で、今の「組織と人」の課題は何なのか?というテーマにたどり着きます。

少子高齢化の中で、企業が持続的成長をし続けるには、個人のスキル向上と、組織としてのチーム力の底上げが不可欠であり、働き方改革はその手段となり得るのではないか……。

今は市場を攻めている時。だからこそ「働き方改革は後回し」ではなく、忙しいからこそ、スキルアップをして生産性を向上し、新規業務やより付加価値の高い業務に時間を費やす必要があるのではないかという結論に至りました。

「会社として大きく前進するため、スマートワークを実施しよう」――。

働き方改革は、まさに「経営戦略そのものだ」という、社長の判断と、総務・人事部の信念が一致した瞬間。

それは、最初の提案から約1年経過した2015年12月の出来事でした。

スマワク実現に向けてーー社内に繋げたい「念い」

▲チームでコンサルティングを受ける様子

このプロジェクトの提案をしたのは、総務・人事部の山田由紀子。

彼女は2児の母で、以前から時間制約のある中で、子育てと仕事の両立を図るため日々奮闘していました。一方、仕事で消化不良を起こしたり、挫折感を味わうことも……。しかし、その気持ちが原動力となり、限られた時間の中で、最大のアウトプットを出すことを常に意識し、必然的に時間効率化の発想が生まれ、スキルアップのための自己啓発・資格取得にも励みました。

山田 「資格取得の過程で、知識を習得し、自分の業務を俯瞰して見ることができるようになりました。それだけでなく、同じ資格を持つ社外の方々と交流するようになったことで、外から得た視点を自社内に持ち帰り、業務に活かすといった好循環を身を持って体感しました。

ワーク・ライフシナジーの効果を自ら感じたので、それを社内でも広げたい!それが原点でした。」

ただ、当時会社は年々売り上げを伸ばし、事業としても拡大期。そのような時期に、あえて真逆だと感じられる「働き方改革」に着手することは、やり方を間違えると利益に大きく影響しかねず、恐怖心と常に背中合わせでした。

山田 「根底にあったのは、長い目で見て社員のためになることをやりたい、ということでした。今までと真逆のことをやるには、色々な反発・抵抗があることは覚悟の上……。

それでも、今後の少子高齢化、人生100年時代、AI化の進展といった社会環境の変化を考えると、避けては通れない施策だと考えました。それであるならば、世間に先駆けてやりたい。そのような『念い』で始めました。」

山田の不安な気持ちを支えたのは、上司のある言葉――。

最初にこの施策へのチャレンジを上司に打診した日、「パンドラの箱を開ける怖さがあるけど、でもやってみよう。」といった背中を押す一言がすぐに返ってきたのです。

山田 「途中色々な困難がありました。くじけそうになることもありましたが、その度に何度もこの言葉に救われました。」

色々な人の気持ちに支えられ、スマートワークプロジェクトは始動します。

少しずつ広がる「念い」――これからの未来に向けて

▲スマワクの取り組みのひとつ、立ち会議スペース

「一部だけでなく、全社で取り組む施策もあった方が良いのではないか」――。

当初、トライアルとして社内の一部のチームに限定し、外部のコンサルを受けることのみを考えていました。しかし、経営層からの、このひとことをきっかけに、改革の加速度を高めるため、全社施策も並行して実行することにしました。

2016年6月、残業を20時までとした計画的な業務遂行、朝型勤務の奨励、会議の時間短縮など、形が見える施策から着手。

現場レベルにおける課題感はそれぞれの職場によって異なる面があるため、株式会社ワーク・ライフバランスのコンサルタントによるサポートも、全社施策とは別に並行して実施。

事業の最前線の部門から3チームを選び、スモールスタートで開始。しかし、スマワクの意義を正しく理解、納得してもらうまでには時間を要しました。

残業を20時までとした計画的な業務遂行、朝型勤務の奨励といった施策に焦点が当たり、「会社は時間外を削減しようとしている」、「単なる時短施策だ」という反発が出たり、本来の意図が上手く伝わらず、社員にやらされ感が表れていきます……。

そこで、役員、総務・人事部、社外コンサルタントから、その意義や方向性を繰り返し提示し、少しずつその「念い」を伝えていきました。これを繰り返すうち、実践してくれる社員が現れ始め、取り組みの本質に気付き、明らかに行動が変わる社員が少しずつ増えてきました。

従来からの業務の効率化を行うだけでなく、廃止する業務の基準を決め、実行したチーム。働き方改革の本質に気づき、後半その取り組みが加速したチーム。複数人体制を実施することで、個人単位での業務の偏りをなくし、お互いを称賛しあうことで、関係性の質を高めたチーム。

三者三様の経過報告は、社内における先進事例になっていきます。当初「うちの会社で働き方改革は無理だ」とささやかれていましたが、社内における事例がそれをどんどん打ち消していきました。

実際にやってみることで、相互の仕事の分担を見直したり、会社全体として業務フローを変えるなど、今までとは異なる視点が身に付き、メンバーの視座は上がってきます。そして、この取り組みは「マネージメントそのものだ」という"気づき"が出はじめていったのです。

2017年度からは、3チームから24チームに拡大し、来年度は一気に全社に広げていく予定。

働き方改革が世の中で注目を集めている今こそ「なぜ、私たちは働き方改革に取り組むのか」、表面的ではない本質論を、社会全体で考えるべき時が来ているのではないでしょうか。

働き方改革は、「なぜ働くのか」、「いつ、どんな時にやりがいを感じるのか」、 「日々新たな発想で仕事ができているか」という、働きがいや生きがい、働く意義を自らに問い直すきっかけになると、私たちは考えます。それを見出し行動することができれば、もっといきいき働くことができるのではないか……。

そんな活力ある社会を生み出すべく、UQコミュニケーションズの改革はこれからも続きます。

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