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WORKSTORYAWARD2018

これからの日本をつくる100の“働く”をみつけよう「Work Story Award 2018」の受賞ストーリー、
一次審査通過ストーリーを公開しています。

「称賛し合う文化」は自発的な行動を生むーー組織の一体感醸成で得た確信

株式会社ミナジン
株式会社ミナジンでは、中小企業向けに多様な人事サービスを扱っています。その多様性ゆえ、部門間での連携や意思疎通がしにくい側面がありました。そこで「ピアボーナス」という仕組みを導入し組織の一体感醸成を試みました。結果的に業績にも貢献した、ピアボーナス導入の背景や想いをお伝えします。

社内のコミュニケーション不足がお客様とのトラブルに発展することも……

どんな会社でも人数が増えていけばトラブルや課題は発生するもの。業績向上にフォーカスすることも大切ですが、お互いがお互いに認め合い、感謝や尊敬の気持ちを表現していくことも、組織づくりの上でとても重要だと、私たちミナジンは考えています。

株式会社ミナジンは、人事部にあまりリソースを割くことができないベンチャー・中小企業向けに、勤怠管理システム・給与計算アウトソーシング・人事制度コンサルティングなど6種類の人事サービスを提供しています。

社員約40名が3拠点に分かれて勤務しており、エンジニア・コンサルタント・社労士など、多様な職種の人材が混在。バックグラウンドや気質の違うメンバーをひとつの目的に向かってまとめていくという部分で課題感がありました。

取締役副社長の野崎友邦は、社員同士のコミュニケーションの質を高める必要があると感じていました。

野崎 「飲み会で集まって仲良くなるということはありましたが、それとは違うレベルで、社内のコミュニケーションのあり方を変えていきたいという思いはありました。

たとえば上司と部下のコミュニケーションだと、ネガティブなフィードバックがどうしても多くなってしまいます。どの会社でも多かれ少なかれあることかもしれませんが、人が集まったらそれぞれの役割で壁ができるので、そこもなんとかしたいなと思っていました」

また、社内コミュニケーションの不足が、お客様への対応に支障をきたすことも……。

野崎 「サービス間でのクロスセルによって、お客様をトータルサポートしていこうというのは経営陣のメッセージとして常に伝えていました。しかし、給与計算スタッフと勤怠管理スタッフの連携が取れておらず、クレームが発生してしまうこともありました。

お客様からすれば、同じ会社のサービスを使っているのに、情報が共有されていないために問い合わせに対応してもらえない、という状況になっていたんです」

こうしたトラブルについては、現場にも問題意識はありましたが、人的リソースが分散している分、交流する機会もなかなかなく、改善しきれずにいたのです。

社員同士で感謝や称賛の気持ちを送る「ピアボーナス」に着目

ミナジンでは、会社として課題解決に取り組むために組織サーベイを実施しました。すると、「人間関係」「裁量」「キャリア機会の提供」「困難時の支援」などで高いスコアが出た一方で、「部署間の協力」そして「承認・期待」のスコアが低く出ていることが判明。

人間関係は良好であり、困難時の支援はしてくれるものの、互いを認め合い、承認し合う関係性が薄いという結果が出ました。

野崎 「当社は必ずしも個人主義で業績を上げてきたような組織ではありません。ですが、職種もサービスも多様な分、連携を取るのが難しいんですね。それと、普通に仕事をしていると、あえて相手を褒めたり、認めたりということを口には出さない傾向があります。

サーベイの結果を見て、成果を承認し合う文化をつくり、部署間の協力を進めれば、業績向上にもつながるのではないかと考えました」

そこで注目したのが、「ピアボーナス」というコミュニケーションと評価のツール。Googleが導入している評価指標ツールとして、野崎は自社への導入を検討しました。

野崎 「コミュニケーションを誘発する仕組みですね。基本的に感謝したり、称賛したりしたときに贈られます。そこには返信という形のコメントは付けられないので、周りから異論を言われることがありません。かつ、個人間でのコミュニケーションなんですね。

組織としてマネージャーが話し合って決める、声をかけるというものではなく、単純に個人同士の対話ができる。そういうものが当社には必要じゃないかと思いました」

社員同士のポジティブなコミュニケーションが守られるのがピアボーナス。「称賛し合える文化」をつくる上でマッチすると感じ、取り入れることにしました。

互いを知ることで、リアルなコミュニケーションも増え始める

ピアボーナスの導入にあたっては、その意図や背景を社員に伝えたり、トライアルを実施するなど、入念な準備を行いました。それでも当初は、社員がどう感じるかは未知数の中での導入となりました。

野崎 「新しい取り組みなので、どう受け止められるかはわからないですよね。白けるかもしれないですし、『こんなんやってどうなるの?』と思われるかもしれない。そこはわからなかったですが、思ったよりスッと入ったなという印象はありました。結構アクティブな感じもあったので、うまく機能するんじゃないかと思いましたね」

ピアボーナスは、コメントをもらうとポイントが加算され、それが少額の報酬にもなるという仕組みです。もちろん会社としてのコストはかかるものの、それ以上に価値を感じています。その価値のひとつが、社員が会社のことを「知ることができる」点です。

野崎 「ピアボーナスのやり取りはオープンになっていて、全員が見られるんです。普段は部門が分かれていて、現場で誰がどんな仕事をしているのか、同じオフィスにいても全然わからないわけです。

でも、ピアボーナスのやり取りは基本的に仕事に関係することなので、見るだけで僕もみんなも社内のことがよくわかるようになるんですよね。あとは誰がどんなことに対してポジティブな感情を抱くのかもよくわかります」

運用を開始して、部門間の壁ができてしまう大きな要因は、お互いのことを「知らない」ことだと感じました。タイムライン上に流れる他部門のコメントを見ることで、自社の他のサービスへの関心が深まったという社員もおり、「称賛し合う」だけではない効果も見え始めます。

野崎 「オンラインだけでなく、リアルなコミュニケーションも増えました。何かのきっかけで接点を持ったり、名前を知ったりしていると、連携しようというときにも話しやすくなりますよね。そういったところで部署間を越えた動きも出始めました。

今では、ある社員の発信をきっかけに、各サービスの説明会とクロスセル推進が自発的に行われています」

ピアボーナスをきっかけにして組織にこのような変化が起こり始めたのは、互いの“リスペクト”が生まれたからではないかと私たちは考えています。

内向きの施策が外への意識を高めるきっかけにーー業績にも貢献

ピアボーナス導入後の組織サーベイでは、1カ月目から改善が見られました。「承認する文化」に関わるスコアが軒並み向上。それに加え、クロスセルの実績も、導入半年後には3社から12社へと伸びています。

社員同士の承認自体は、内向きの施策ではありましたが、これによって業績への貢献やお客様への意識が高まったことは、野崎をはじめ経営陣にとって考えてもいなかった成果でした。

野崎 「経営者というのは、やっぱり先を見て、打ち上げ花火を上げるといいますか……みんなの視点を上向きにさせることが必要ですよね。

ただ、それと同時に、毎日花に水をやるような丁寧さみたいなものも必要だということに気づきました。それが承認ということなんだと。どちらだけでもいけなくて、バランスが大事だと思います」

今回の施策を通して、認め合う習慣は一定数生まれました。今後は、こうした習慣をクラウドツール上だけで終わらせず、日々の声かけ、アワードなどのリアルな表彰の場をつくるなど、「文化」として定着させ、さらに発展していけるための施策を検討しています。

野崎 「お互いを承認するベースはできたと思っているので、ちょっとした『ありがとう』に加えて、大きな成果をあげた人に対してきちんと『すばらしいね』って言えるような施策も考えたいですね。

今は OKRという新しい仕組みも取り入れ始めて、個人とチーム、会社全体の『ありたい姿』を共通認識として持ってもらうこと。そこに近づくためにどうアクションを取るか、切磋琢磨の状態にするための方法を練っているところです」

互いに認め合える組織風土をつくれば、お客様に提供する価値もあがっていく。その確信を得られたという意味でも今回の取り組みは大きな成果でした。課題はまだまだあるものの、私たちは今後も一つひとつ施策やプログラムの設計を行い、お客様への価値提供へとつなげていきます。

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