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WORKSTORYAWARD2018

これからの日本をつくる100の“働く”をみつけよう「Work Story Award 2018」の受賞ストーリー、
一次審査通過ストーリーを公開しています。

青森-宮城-東京-静岡を繋ぐ。多拠点間1on1で実現したチームワーク向上

株式会社ugo
同じメンバーで同じ業務をずっと行なっていると、次第にマンネリ化して、閉塞感が漂ってしまう......というのは、何も珍しいことではありません。実は株式会社ugoの青森オフィスでも、そんな時期がありました。そこで私たちが、そのマンネリ&閉塞感を打破するためにはじめたのが、多拠点を繋いだ1on1だったのです。

社内に漂う閉塞感を打破するためにはじめた1on1

▲代表取締役の渡部玲児(右)と、濱松英生さん(左)

私たちugoは、印刷物のECサービスを提供している会社です。青森、宮城、東京と3カ所にオフィスを構え、テレビ電話やチャットツールでコミュニケーションを取りながら、連携してサービスを提供しています。

青森にあるカスタマーセンターでは、親会社である株式会社帆風から転籍しているメンバーが多く、なかには20年以上勤続しているメンバーも。我慢強く真面目に仕事をこなすメンバーが多く、まさに縁の下の力持ち的存在です。

しかし、その一方で、年齢的に健康の不安や介護などを抱えているメンバーも増えており、長年同じ業務内容を続けていることによるマンネリ感もあり、なんとなく組織全体に閉塞感が漂うようになっていました。

その様子は、東京本社に勤務し、毎週のテレビ電話や2カ月に1度の青森訪問で顔を合わせていた代表取締役の渡部玲児にも肌感覚として伝わっていました。

渡部 「これはなんとかしないとなって思いました。どうせ働くなら、ここで働く意味をちゃんと噛み締めてほしいし、仕事って楽しいって思ってほしいですからね。

打開策を考えたときに、思いついたのが 1on1。以前コーチングを学んだのですが、その威力を目の当たりにしたことがあったので、コーチングを活かせるものがいいかな、と」

最初は一部のメンバー4、5人で試験的にトライ。週に1度30分、時間をとって話をしてみた結果、以前よりも心を開いて話せるようになり、お互いの内面的な部分に対する理解が深まっているのを実感できました。

「これはうまくいくかもしれない――」そう思った渡部は、徐々に参加メンバーを増やしていったのです。

普段関わらない人との1on1で、いままで見えなかったものが見えてきた

▲多拠点間を結ぶテレビ電話での1on1

最初こそ手応えを感じていた1on1。サポーター(聞き手)役を渡部1人から数人のリーダーに増やしていくと問題点も出てきました。お互いに本音を話すようになった分、マイナスな感情も表面に出てくるようになったのです。

逆に警戒して本音を言わなかったり、1on1というそれまでとはまったく異なるコミュニケーションをとることに違和感を覚えてしまうなどのケースも見られました。

サポーター役のリーダー達からは、自信を無くしたり、苛立ったり、ついには活動を疑問視する声が上がりはじめました。

とはいえ、1on1をやめるというのは時期尚早である、ほかに何か方法があるはずだと頭を巡らせた渡部。思い切って、「チームを交差して行なう1on1」と「利害関係のない社外の人と行なう1on1」を実施してみることにしたのです。

「利害関係のない人」として声をかけたのが、場作りカウンセラー代表の濱松英生さん。渡部とは数年前にコーチングスクールで出会って意気投合して以来、交流を続けていました。

濱松 「最初は見ず知らずの人間である私に対してぎこちなかった人もいたんですけど、回数を重ねるごとに心を開いて信頼してくれて、だんだんと深い部分まで共有させてもらえるようになりました」

濱松さんには、まず1人だけ担当してもらい、徐々に増やして現在は10人程と1on1してもらっています。

「チームを交差」する場合は、テレビ電話も使って、業務上ではあまり関わりのない人とも1on1を行なっています。

直属の上司には話しづらいことも相談がしやすく、いつもと違った見方でアドバイスをもらえたと、その効果を実感しているメンバーは多いようです。

また、1on1には「逆指名制」も取り入れており、メンバーに誰と1on1をしたいかアンケートをとって、3カ月ごとに組み合わせをチェンジしています。

もちろん全体のバランスを取ることが必要なので、100%リクエスト通りの組み合わせにすることは出来ませんが、相手をある程度選べることで、相性がいい人や話してみたい人と30分間会話ができる機会は、双方にとっての大きなメリットになります。

メンバー同士のコミュニケーション活性化

▲親会社である株式会社帆風から転籍しているメンバーも多く在籍する青森県八戸にあるカスタマーセンター

1on1を通してコミュニケーションが活性化し、温かい好循環が生まれた例がありました。

青森で勤務する50代メンバーは職人気質で一目置かれている一方、少々孤立気味な一面もありました。仕事はやって当たり前、できて当たり前という意識であまり愛想がなく、周りのメンバーと少し距離がある状況でした。

そんな周りとの関係性が災いして、若い人に引き継ぎたい業務をなかなか引き継げずにいたのです。

最初に上司と行なっていた1on1は、その上司が以前所属していた部署の元部下だったこともありコミュニケーションがうまくいかず……。

そこで、濱松さんが担当することになったのですが、彼の口から語られたのは、意外な言葉だったのです。

濱松 「上司との 1on1はどうだったかと聞くと『アレのおかげで社内の人とコミュニケーションが出てきて、仕事が進むようになった。よかった』と。

ただ一方で、『小っ恥ずかしかった』とも(笑)。悪態をつきながら 1on1をやっていたのに、実は感謝していたことがわかったんです」

周囲のメンバーに対しても同じでした。やってくれたことに対して「ありがとう」は言わないけれど、実は感謝していて「あいつ、忙しいのにすぐにやってくれたから助かった」と。

社内の人間には「小っ恥ずかしくて」言えなかったことも、濱松さんという社外の人間には言えたのです。

じゃあ、その気持ちを社内の人間に伝えるにはどうすればいいのか?

濱松さんは、当時導入したばかりの目標管理システムに搭載されているピアボーナス機能を使って、「ありがとう」の気持ちを込めてコインを送ることを提案しました。

50代のメンバーが実際にコインを送ってみると、周囲の反応が変わってきました。取っ付きにくいと思われていたのが、シャイで無口なだけで実は心根の優しい人だとわかってもらえたのです。

もっと効果を出すために、1on1への試行錯誤に終わりはない

▲八戸カスタマーセンターの忘年会

1on1をはじめて約1年。会社が大きく改善した……とまではまだ言えません。

しかし、確実にメンバーの意識が変わってきています。いままで自分の意見を積極的に発言するメンバーが少なかったのに、だんだんと意見を言ってくれるメンバーが増えてきました。改善に向けての素地ができたようです。

濱松 「 1on1によってお互いが信頼関係で結ばれるようになったからなんでも言い合えるようになったんだと思います。なんでも言い合えるからいいアイデアが生まれてきて、それに向けていい行動やチャレンジが生まれてくるでしょう。

これからは、そういう好循環がどんどん生まれてくるはずですよ」

1on1の効果として信頼関係が生まれ、その結果として、自分たちが「ここで働く意味をかみ締められる」ようになることが理想です。

渡部 「最近は 1on1に対してもメンバーが意見を言ってくれるようになっていて、『濱松さん以外の外部サポーターとも話がしてみたい』という声が上がっています。

1on1の効果を実感しているからこその声でしょうね。これはいま検討中です」

ほかにも1on1の改善は日々検討を重ね、最近は頻度と時間についても試行錯誤中。現状は毎週あるいは隔週1回30分ですが、人によっては週に1回15分で行なうことを実験的に始めました。

その理由は「チャンスを逃したくない」から。1on1は学びのチャンス。成功も失敗もできるだけ早く振り返ることで、次の成功につなげやすくなります。

人によっては1回の時間は短くてもその方が確実に成長するかも?という仮説からです。その成長の実感がお互いの信頼関係を築いていくことに繋がるのです。

メンバー同士の関係の質が上がり、コミュニケーションが活性化することで好循環が生まれる――。

それこそが、私たちにとって最大の1on1の効果。これからもメンバー同士の好循環を続けられるよう工夫を重ねていきます。

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