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WORKSTORYAWARD2018

これからの日本をつくる100の“働く”をみつけよう「Work Story Award 2018」の受賞ストーリー、
一次審査通過ストーリーを公開しています。

「新たな働き方」と「新事業」を社員主導で創出。ワークプレイスデザインの可能性

株式会社ウエダ本社
物売りではなく"働く環境の総合商社"へーー。OA機器の卸売として、さまざまな中小企業のオフィスや働き方、働く人をサポートしてきたウエダ本社。オフィスの存在意義を示し、いきいきと働ける場をつくろうと、2015年にオフィスのリデザインに踏み切ります。そこで見出した、新たな価値をのぞいてみましょう。

社員主導で進めたワークプレイスのリデザインで、行動と意識が変わる

▲ウエダ本社は、「いきいきと働ける場」を構築するためにワークプレイスのリデザインに踏み切った

2018年で創業80周年を迎えたウエダ本社。OA機器やオフィス家具の卸売、オフィスのトータル設計などを通して、さまざまな企業や人の働き方をサポートしてきました。

ところが、長い間、当社の社員自身が働く環境の大切さに気付けていないという課題があったのです。

30人ほどという少人数でありながら、執務スペースは2フロアに分かれ、コミュニケーションが取りにくい状況が発生。誰がどのお客様に対し、何をしているのかが見えにくくなっていました。

そのため、社員の相互理解を促すことができず、社内の雰囲気もどこか暗く活気がない状況でした。

――このままでは、単なる“物売り”になってしまう。

危機感を覚えたウエダ本社は、改革に乗り出します。2013年に「働く環境の総合商社」というコンセプトを掲げ、企業の働く環境に関わるスペース、ツール、スタイルを総合的に改善するワークプレイスデザインの研究に着手したのです。

自社のオフィスを使っての研究がスタートしたのは、2015年のこと。京都工芸繊維大学の仲研究室と共同で、社員が主導となりプロジェクトを進めてきました。

まず、「いきいきと働ける場とは、どのように構築していくのが良いのか」をテーマに設定。ワークショップなどを通じて、自社の課題を洗い出し、コンセプトをつくり、レイアウトを考えるところまで、社員主導で取り組んできました。

こうしてリデザインしたワークプレイスのコンセプトは、「 UEDA MISSION 『人をいかす。未来をつくる。』」「 bazaar/バザール 人がいきいきと行きかう場 」。

以前は、5階と6階の2フロアに分かれていた執務スペースを6階に統合し、5階はカフェスペースや応接室、作業場に。

屋内に設置したシンボルツリーを毎月社員で彩ったり、オフィスの中心に案件ボードを設置して案件情報を見えるようにしたりと、印象や風土が大きく変わりました。

子連れ出社、「ありがとうカード」の復活など、社員の意識が高まる

▲ワークプレイス5階にあるシンボルツリー。毎月社員で飾り付けをしている

プロジェクトをけん引していた原田大輔は、その変化を強く感じていました。

原田 「やっぱり、コミュニケーションが明らかに増えていきましたね。以前は、営業と設計製作のチームでフロアが異なっていたので、日常的に話すことがなく距離がありました。ところが、物理的に近くなったことでちょっとしたことでもすぐに聞くことができるようになったんです」

また、カフェスペースも、プロジェクトメンバーの中本はるかが想定していたよりも有意義に使われていました。

中本 「5階のカフェスペースは毎月飾り付けを変えて、気分が変わるようにしています。また、カフェスペースの利用は全社員が考えながら決めていったので、『カフェテリア』『ボードルーム』『ワークルーム』と目的をもって使えています」

カフェスペースがあっても有効に使われていないオフィスも少なくありません。「役員や上司が本心ではスペースの利用を認めていない」ことが原因のひとつとして挙げられます。

しかし、ウエダ本社では、全社員が利用を推進しています。そのため、リラックスタイムや打ち合わせなどに利用され、メリハリのある働き方ができるようになりました。

また、他にも自然発生的に起こったできごとがありました。

原田 「『ありがとうカード』の復活はそのひとつ。誰かへの感謝の言葉を書いて、ボックスに入れておくと、まとめてその人に渡されるという仕組みです。以前、この取り組みをはじめたときは、立ち消えてしまった。
ところが、ワークプレイスをリデザインしたことで再開する運びになり、カードをさまざまな場所に置くなど、うまく使われるような工夫やアイデアがいろいろな人から出るようになりました」

ワークプレイスをリデザインする際に全社員でワークショップをしたことなどから、全員が働き方や働く環境の有効利用を「自分ごと」としてとらえられるようになったのです。

また、子どもをどうしても預けられない時にオフィスへ連れてくる社員もいました。ワークプレイスの変更により、新しい働き方が推奨されているというコンセプトが会社全体の意図として社員へ伝わり、「子どもを連れていける」という雰囲気が生まれたのです。

そしてウエダ本社には、もうひとつ嬉しい変化が訪れます。

オフィスツアーのほか、ソフト面から支援する新事業が生まれる

▲セミナーやオフィスツアーを開催。社外から1500人以上が訪れている

ウエダ本社に訪れた変化。それは、社外の方に対して、“ノウハウ”を提供できるようになったことです。

原田 「お客様にオフィスツアーをして、ワークプレイスをつくっていくプロセスをご説明しています。ウエダ本社としては、プロジェクトの立ち上げ、課題のヒアリング、有効なオフィス設計ができると説明します。オフィスツアーをすることによって、成約率が約80%と非常に高くなるんです」

それまでは、競合との相見積もりにより、価格競争となることも多く、成約率も高いと言えない状況が続いていました。

ところが、こうして“ソフト面から支援をする”というウエダ本社のオリジナリティが生まれたため、相見積もりを取られてしまうこともないのです。

原田 「私たちが納品まで完了したあとも、お客様が自ら働き方を改善している事例が増えています。
たとえば、部署を横断してメンバーを募り『オフィスコンシェルジュ』のチームを新設したお客様もいらっしゃいました。働き方に関する課題を解決したり、議題にあげたりして、自走していく仕組みです」

他にも、女性社員が自主的に「女子会」を開き、ヒアリングやワークショップを重ねて働く場づくりを行なっているお客様もいらっしゃいました。

原田 「ワークプレイスのリデザインが大規模になるため慎重に検討したいというお客様には、3日間のワークショップパッケージをご提供することもあります。理想の働き方や働く場を描いていただき、課題を洗い出し、いかに理想に近づけるかを図面化する。
また、図面をみながら改善点や実現の可能性をさらに深掘りしていきます。それによって、今後のプランニングをより精密にすることができるのです」

こうしてソフト面でお客様をサポートできるようになったことにより、思わぬ変化が生まれました。

原田 「お客様からの評価に手ごたえを感じるようになったことで、社員一人ひとり自社に対する誇りをもてるようになってきました。
オフィスツアーで自社のメリットや強みをしっかり説明できるようになったのも大きいですね。規模の大きな会社にも負けない部分があると自負できるようになったんです」

ワークプレイスのリデザインにより、ウエダ本社しか提供できないメソッドやノウハウを手に入れ、競合にも負けない提案ができるようになりました。

当初の課題だった“物売り”から脱却し、お客様にさらに寄り添った働く環境のトータル設計ができるようになったのです。

「はたらくを彩る」をコンセプトに、いつでもどこでも働ける環境を目指す

▲プロジェクトを主導してきた原田大輔(左)と中本はるか(右)

ワークプレイスのリデザインに踏み切ったことで、社員の中には「自分たちで会社をつくり上げていく」という意識が生まれました。

「意見を言っていい」「アイデアはどんどん出した方がいい」という空気が醸成されたのです。

2018年11月現在も、さまざまなプロジェクトが進んでいます。ひとつには、今のメソッドをパッケージとしてさらに確立したものにしていくこと。それにより、より多くのお客様に提供することができるようになります。

原田 「ウエダ本社としては、いつでもどこでも働けることを目指しているので、時間や場所にとらわれず働ける環境をつくってきます。
そのために現在取り組んでいるのは、サテライトオフィス。大企業では実現しているところもありますが、中小企業でも気軽に利用できるようなハブ的な役割が担えたらと思っています。
たとえば、旅行先でリラックスしながら、育児をしながらなど、いろいろな働き方を実現することが幸せに直結すると考えています。実際に場所のめぼしも付けて、立ち上げようとしています」

ウエダ本社は80周年を迎えた2018年、『はたらくを彩る』という企業コンセプトを立ち上げました。

さまざまな人が快適に働ける環境を、多面的に支援する総合商社として、歩み続けたいという想いが込められています。

中本 「働く場所や環境が、自分たちの在り方、ブランドを象徴したものになるよう、お客様にご提供していきたいです」

会社の想いがオフィス環境に現れ、さらにその環境により、働き方自体が変わっていく。そのような好循環をつくることができれば、企業はさらに魅力を増すでしょう。

ウエダ本社は、そんな環境づくりを多方面から支援していきます。

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