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これからの日本をつくる"働き方"のストーリー

目的は"働きがい"の追求。さくらの働き方改革、新制度をめぐる人事部の1年

さくらインターネット株式会社
働き方改革。2017年現在、多くの企業が模索を重ねています。さくらインターネットでは2014年以降、社内の組織体制や人事制度の見直しに着手してきました。そして2016年10月、「さぶりこ」と名付けた働き方プラットフォームを策定。その取り組みを主導した人事部の視点から、改めてこの1年の活動を振り返ります。

この会社には働きがいがない? 社内調査がもたらした危機感

▲さくらインターネット 人事部のメンバー。左からふたり目が川村。

直接的な引き金となったのは、2015年に実施した社内調査でした。外部機関に委託して行なった、社員の“働きがい“に関する調査。人事部のメンバーは、その結果に焦りを覚えます。川村貴宏もそのひとりでした。

川村 「私たちの予想を、下回る結果だったんです。『総合的にみて、働きがいのある会社だと言える』と回答した社員は、54.6%。この調査結果が思わしくなかったことで、社内の働き方改革に対する議論がさらに活発化していきました」

当時、さくらインターネットの社内にはさまざまな課題がありました。

仕事の効率化を求めるあまり、蔓延するようになった余裕のない空気。多様なライフステージにさしかかる社員が出てきたことで、不足が目立ちはじめた社内制度の柔軟性……。

そうした課題を解決していこうと取り組みを進めていた矢先のこと。働きがい調査の結果がひとつのきっかけとなり、人事部主導で新たな社内制度を整備することになりました。

どうしたら、社員個人が“働きがい“を追求できるようになるか。それこそが、制度整備の最大の目的でした。

川村 「ただ働きがいだけを追求しようとすると、ともすれば“働きがい搾取“になりかねません。だからこそ、社員が働きがいを感じられる環境にするためには、会社が“働きやすい“環境を提供する必要がある。みんなで話をするうちに、そんな考えに至ったんです」

ここで重要なのは、決して、はじめから社員にとっての「働きやすさ」の整備にフォーカスしていたわけではなかったということです。

会社として目指すのは、あくまでも個人の“働きがい“の追求。その方針のもと、プロジェクトが動きはじめました。

満場一致で生まれた人事制度づくりのポリシーは「社員を信じる」こと

▲制度づくりのワークショップの様子

これからのさくらインターネットに、必要な制度はどんなものか。新制度をつくるにあたり、人事部だけで考えるのではなく、まずは社長以下役員全員を巻き込んだワークショップを開催しました。

ディスカッションを重ねた結果、当社としての人事ポリシーが明確になります。それは「性善説にもとづく」という軸。つまりは会社として、「社員を信じる」スタンスを貫くということです。参加したメンバー全員の意見が一致した結果でした。

明確になったポリシーのもと、人事部は社内イベントを行なっていきます。制度設計に対する意見交換の場を設け、役員や管理職のメンバーはもちろん、社員からも制度の提案を募ったのです。

こうした議論の結果、でき上がった制度が「さぶりこ」です。「さぶりこ」という名称は、“Sakura Business and Life Co-Creation”を略したもの。2016年10月、正式に社内で運用しはじめました。

「さぶりこ」には7つの制度があります。

・仕事が早く終われば定時の30分前に退社できる「ショート30」
・勤務時間を10分単位でスライドできる「フレックス」
・20時間分の残業手当をあらかじめ支給する「タイムマネジメント」
・心身のリフレッシュを目的とした「リフレッシュ(各種休暇)」
・さまざまな場所で勤務を可能にした「どこでもワーキング」
・複業を受け入れ、社外活動に携わることを推奨する「パラレルキャリア」
・産休・育休明けにもフレキシブルな働き方ができる「ファミリータイム」

もともと社内で整備していた「リフレッシュ(各種休暇)」「ファミリータイム」などに加え、新規の制度を2017年4月にかけて徐々に追加していきました。

次のステップは、いかに社内へ浸透させるかです。

川村 「制度はつくることがゴールではありません。社員に活用してもらい、継続的に運用できなければ意味がありませんから」

制度構築から1年をかけて、背景や想い、活用事例を社内に発信

▲社内イベントの様子

できあがったばかりの「さぶりこ」をたずさえ、1年間、人事部ではその理解と浸透をはかるために、さまざまな施策を企画してきました。

人事部からの制度説明を繰り返し行なうことはもちろん、トップや役員からの発信も強化。会社としても本気で改革に取り組んでいる姿勢を示すとともに、制度に込められた意図や想いを丁寧に伝え続けています。

さらに、「制度をどう使ってほしいか」という視点からの発信も行なっています。

川村 「さぶりこの活用事例を、社員から募る取り組みもはじめました。集めた事例は社内報で発信し、『使いたいけれど、使い方がイマイチわからない』ということが起こらないように努めています」

特に、時間の使い方の自由度を上げた「ショート30」と「フレックス」は、多くの社員に利用されています。

育児や介護で働く時間に制約のある社員をはじめ、「通勤ラッシュを避けて出社したい」、「朝早く出社し、集中して働きたい」、「退勤後に勉強会やセミナーに出席したい」など、制度利用の理由はさまざま。

川村 「働き方の自由度が上がり、社内の雰囲気が全体的によくなりつつあるのを感じています。現在は制度を使う必要のない社員の間にも、自分自身に何か制約が生まれたとき、真っ先に『仕事を辞めること』を考えなくてもよくなった……という認識が広がっているように思います」

ただ一方で、ずっと社内で試行錯誤を続けていることもあります。

たとえば、パラレルキャリアやどこでもワーキングは、今までになかった勤務体系です。人事考課や勤怠管理の方法を、新たに確立する必要があります。

川村 「働き方が多様になればなるほど、先にルールを決めるのが難しくなるんですよね。だから今は、現場で起きることにその都度対応している状況です。管理する側とマネージャー側とのコミュニケーションは、人事部としてこれからの課題です」

こうした新たな課題と向き合いながらも、新制度「さぶりこ」とともに走り続けた人事部の1年が過ぎていきました。

目指しているのは、単なる制度構築ではなく「組織の風土づくり」

「経営・管理者層が細かく管理をしなくても、従業員がきちんと仕事をすると信頼されている」——。

2017年、前年に引き続き行なわれた“働きがい”に関する社内調査。この問いに「はい」と答えた社員は、2015年に比べて16%増加しました。「総合的にみて、働きがいのある会社だと言える」と回答した社員の比率も、14%上昇。

社員を信じて、性善説を軸としたさくらインターネットの働き方改革は、少しずつ成果につながりつつあるのです。

「制度の浸透はまだまだこれから」と思っている川村ら人事部のメンバーも、社内の変化に一定の手応えを感じています。

自分が働く時間のコントロールにとどまらず、パラレルキャリアの制度を活用し、新しいチャレンジをはじめる社員も出てきました。

川村 「もともと当社には、さぶりこ以前から社員の自立を推奨する空気がありました。会社としても、ぜひ社内では得られない経験をしてもらうとともに、社外で得た知見を社内で活かしてほしいと考えています」

人事部が作ろうとしているのは、単なる「働きやすい制度」ではありません。あくまでも、制度は手段のひとつでしかないのです。

会社として目指しているのは、さぶりこを自由に活用して、仕事において良質な成果を出している人が、高い評価を得られるような社風をつくることです。

7つの制度からなる「さぶりこ」とともに、この取り組みはこれからも続いていきます。社員一人ひとりが、十分な“働きがい”を感じられる組織にしていくために。

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