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これからの日本をつくる"働き方"のストーリー

「幸せが生まれる関係性をつくる」 低迷事業部を変えた信頼と尊重のマネジメント

株式会社ガイアックス
昨今、長時間労働などの問題が浮き彫りとなり、働き方改革に着手する企業が増えています。しかし改革は、単に残業規制などをするだけでは進みません。労働環境の改善を行いながら、業績も2倍に上げた事業部長、管大輔は「何のために働くのか?」を考え抜き、信頼ベースのマネジメントを構築しました。

負のスパイラルからの脱却! 最年少事業部長が改革に着手

▲ソーシャルメディアマーケティング事業部 管大輔

長時間労働などが重要課題として問題視される世の中。ガイアックスも、決して例外ではありませんでした。その中で、ドラスティックな改革を行い、働きやすい環境づくりと業績の向上を両立した部署があります。それが、ソーシャルメディアマーケティング事業部です。

法人クライアントのソーシャルメディアのコンサル・運用代行などを中心に行っているソーシャルメディアマーケティング事業部。実は、2015年9月まで、離職率は高く長時間労働も当たり前の、疲弊しきった部署でした。2017年現在の事業部長である管大輔は、新卒入社以来、同事業部に勤務してきました。

管 「入社して2年半で、入社時にいたメンバーは全員退職していました。人数が少なかったこともあり、ひとりあたりの案件数が増えてしまって。長時間労働になるとクオリティが落ちてミスが起きて、ミスの対応に追われて、また労働時間が伸びて……という負のスパイラルに陥っていましたね」

しかも、ソーシャルメディアという成長市場にもかかわらず、業績は横ばい。社内での評判も悪く、「あの部署では働きたくない」と言われてしまう始末。バリバリ働きたいという思いで入社し、毎日の長時間労働を苦にしていなかった管も、この事業部の状況には危機感を覚えざるを得ませんでした。そんな2015年9月、管に転機が訪れました。

管 「本部長と、定期的にレビューする時間を持っていただいているんですが、その中で、部署の課題や解決策などを提案させてもらっていました。そのときに『じゃあ、お前がやってみたら?』と言われたんです」

こうして彼は、当時26歳の管は最年少部長に就任。そこから改革がスタートしました。ところが彼を待っていたのは、「働くこと」「生きること」を考えさせられる日々だったのです。

いかに伝えるかを考えていたら、自分に向き合わざるを得なくなった

▲ガイアックスの執務エリア

管がまず行ったのは、メンバーとの関係づくり。1ヶ月間かけて、一人ひとりと徹底的に向き合い、現状への不満や仕事への想いを引き出していきました。

管「最初に考えたのが、なぜ、何のために、みんながうちの部署で働いているのかということ。メンバーそれぞれにとって重要なのは、仕事の満足度だけではなく、プライベートも含めて、人生が充実しているかということなので、そういう部分も話しながら進めました」

同時に、マネジメントに必要な組織経営や心理学についてもインプット。この事業部をどうしていきたいのかを考え続けました。そうするうちに浮かんできたのが、「自分自身がどんな生き方をしたいのか?」という問い。

管 「僕自身がなぜ事業部長になって、組織を伸ばしたいのかと考える中で、そもそも自分は何のために生きているのか、どういう時に喜びや幸せを感じるのかという部分とも向き合うことになって。いかにみんなに伝えるかということを考えていたら、自分に向き合わざるを得なくなったんです」

それまでの人生では考えたことのなかったこの問いと真剣に向き合った結果、「自分の人生が素敵だ!と思えているオトナを増やしたい」と思い至った管。そして、まずは自分の部署でそれを実現するために、さまざまな試みを行っていきました。

管「たとえば、待遇の改善です。とにかく仕事に集中できる環境をつくるために、不要な制度は全部壊そうと。そこでリモートワークやフレキシブルワークを導入したり、クラウドソーシングを活用することにしました」

なかでも最も大きかったと実感しているのが、「利益」重視から「売上」重視へと評価方針が転換したことでした。

管 「伸びている市場だったので、今は良くても、数年後には利益をとれなくなると思って、売上を上げる方がいいということを会社に提案しました。そして、それまでコストカットしていた部分をどんどん投資するようにしたんです」

この思い切った制度改革と方針転換は、事業部メンバーに大きな影響を与えました。

若さゆえ、ことごとく見透かされた考えの浅さ――3年で売上10倍を目指す

▲打ち合わせ風景

事業部長に就任後に立てた事業部目標は、「3年間で売上を10倍にすること」。しかし、この目標をすんなり受け入れられることができないほど、メンバーは疲弊していました。

管 「当時から利益は出ていたので、なぜ、そこから売上を伸ばす必要があるのかとか、今以上に過酷な労働環境になるんじゃないかとか、それぞれの不安もあったと思います。そこで、どういう戦略で、なぜ、3年で10倍にできると思っているのかを、一人ひとりに話していきました」

当時のメンバーは全員、管より年上。マネジメントを行う過程では、失敗することもたくさんありました。

管 「事業部長になった直後、本に書いてあることをそのまま言ったりしていたら、それをことごとく見透かされました。『……で、本当のところ菅くんはどう思ってるの?』と。本当に、大人はごまかせないなと感じましたね(笑)」

それでも、伝えることはやめませんでした。前述の通り、管自身が自分と向き合った末に出した言葉は、彼に人の心を動かす力を与えます。「事業部を良くしたい」。その想いが徐々にメンバーに伝わることで、売上などの成果としても出はじめました。そして、それがよりメンバー同士の関係性を深めていったのです。

その結果、2016年の売上は前年比で2倍に上昇。顧客単価は150%、新規案件獲得数も220%増など大幅に業績を伸ばすことになりました。その間の離職率は4分の1となり、新規入社者の75%がリファラル採用となるなど、短期間で評判も回復。

この改革は、全社にも波及していきました。実は当社にリモートワークが普及したのは、このソーシャルメディアマーケティング事業部の成果を目の当たりにしたことがきっかけだったのです。

No.1だけを目指す若者から、メンバーの人生を尊重するリーダーへ

▲事業部のメンバーと(左から3番目が管)

管は、この改革が成功したのは、経営陣のブレない姿勢のおかげであるとも考えています。

管 「四半期ごとに見ると、かなりの赤字を出したこともあったんです。それで落ち込んでいると、『赤字を出しちゃいけないって方針じゃないでしょ。売上を伸ばすことにフォーカスしているんだから』と言ってもらえて。状況が悪くなっても、方針をブラさないでいてくれたのが、本当にコミットできた理由のひとつですね」

そのおかげもあり、管自身も、ブレない姿勢で事業部を率いていくことができました。

管 「メンバーには、1、2年たったときに、『最初から言っていることと、やっていることが全然ブレてないですよね』とか、『当時は突拍子もないことを言っていると思っていたけど、実際に実現できるんだなとわかって考え方が変わった』というようなことを言ってもらえて、すごくうれしかったですね」

働き方改革により、社内で一番ブラックな部署から、一番会社をリードする部署へと成長したソーシャルメディアマーケティング事業部。その根底にあるのは、メンバーの幸せを追求したマネジメントでした。

管 「どういう人生を送りたいのか、それぞれ幸福観も違います。各メンバーと話していくうちに、一人ひとりの価値観にちゃんと向き合わないと、マネジメントはできないなと。それまでの僕は、圧倒的にNo.1になりたくて、みんなで協力して何かを成し遂げることにはあまり興味がなかった。だけど、一人ひとりと向き合う中で、仕事がその人の人生に与えるインパクトの大きさを感じて、単純に業績を伸ばすことだけではダメなんだと思いました」

「幸せは、人と人との関係性の中でしか生まれない」

これは、管が自分自身と向き合い、メンバーと向き合うことを通じてたどり着いた幸福観です。メンバー一人ひとりの人生を尊重し、信頼し、任せていくことで、よりよい関係を築くことができ、それが業績にもつながってくる。

その正しいサイクルが、人を幸せにし、社会をより良いものにしていくのではないかと私たちは考えています。働き方改革を進めるうえで大切なのは、規制や管理ありきの改革ではなく、人と人との信頼や幸福と紐づいていることなのです。

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