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これからの日本をつくる"働き方"のストーリー

全員がリモートワークやフレックスタイムを実践する会社ーー人事制度が"活用される"秘訣

株式会社Waris
多様な働き方ができる社会の実現に向けて、自分たちから新しい働き方を体現している株式会社Waris。社員の75%を育児中の母が占め、リモートワークやフレックスタイムをフル活用しながら日々働いています。とはいえ全員が制度を活用するためには、"ただ作るだけ"では不十分。私たちも2017年現在までに、多くの試行錯誤を積み重ねてきました。

多様な働き方のある社会実現を目指すなら、まずは自分たちで体現したい

▲左から3番目から、共同創業者の米倉史夏、河京子、田中美和

リモートワーク導入、兼業OKーー。一億総活躍社会の実現に向けて「働き方改革」が叫ばれるようになった2017年現在、このような人事制度を設ける企業も少しずつ増えてきています。

ただ私たち株式会社Warisでは2013年の創業時からリモートワークを取り入れ、2015年には正式な人事制度として「リモートワーク制度」「フレックスタイム制度」「理由や期間に利用制限のない短時間勤務制度」「兼業OK制度」を導入してきました。

なぜそんなに早くから新しい働き方に取り組んだのか? その背景には3名の共同創業者に共通する想いがあります。

出版社で女性誌の編集に携わり、女性の悩みを聞いたことがきっかけでキャリアカウンセラーになった田中美和。マイノリティ支援をしたいと人材紹介会社に勤めていた河京子。子育てと仕事の両立の難しさからフリーランスになった米倉史夏。

それぞれが結婚や出産、育児など働く場所や時間に制限があるため、仕事を継続できない優秀な女性がたくさんいることに課題を感じていました。Warisはそんな3人が「女性の社会進出をサポートしたい」という想いで立ち上げた会社です。

とはいえ、当時米倉は小さい子どもを持つお母さん。河も前職と兼業していたこともあり、3人で時間を合わせて働くというのは現実的ではありませんでした。

自分たちにとって最適な働き方はどんなものかーー。そう考えた結果、創業時から自然とリモートワークを取り入れたのです。

全員で会うのは毎週火曜日の定例会議のときぐらい。それ以外の時間は各々のペースで仕事を進めながらも着実に事業を伸ばし、それに合わせて社員も増えていきました。

「誰もが自分の能力を生かして生き生きと働き続けられる社会の実現」を目指すなら、まずは自分たちからその働き方を体現して発信するべき。そう考えるようになったことがきっかけで、2015年にリモートワークやフレックスタイムを正式な人事制度として導入しました。

ただ制度を作りさえすれば上手くいくかといういと、そんなことはありません。私たちもこれまで何度も課題に直面してきました。

社員が増えることでぶつかった「コミュニケーションの壁」

▲人事を務める西原沙季

社員が5〜6人のときはWarisのスタイルもすんなりと浸透し、同じようなやり方でスムーズに日々の業務が進んでいました。ところが社員が10名にさしかかった頃から、少しずつコミュニケーションの難しさを感じることが多くなってきました。2014年にWarisに加わり人事を務める西原沙季も、課題感を感じていました。

西原 「ちょうど人数が増えたタイミングだったこともあり、コミュニケーションや組織作りに課題を感じることがありました。例えば全員が参加する定例会議で、みんなが空気を気にしすぎて言いたいことを抑えて飲み込んでしまうような場面もあったように思います」

リモートワークやフレックスタイムといった取り組みは、時間や場所の制約をなくせる一方で、どうしても日頃のコミュニケーション量が減ってしまいがちです。実際メンバー間の交流を促す目的で外部の講師を招いて対話をすると、回数を重ねるうちに「言いたいことが言えない雰囲気がある」という正直な意見も出るようになりました。

Warisではコミュニケーションの意識的な活性化こそがリモートワークをする上で最重要課題だと考え、さまざまなコミュニケーション施策を実行してきました

社内で月一度ランダムにメンバーを組み合わせてランチをする「ランダムランチ」、社内でペアを組んでランチをする「バディ制」、子どもを寝かしつけた21時や22時から任意参加で行う「オンライン飲み会」「オンライン読書会」はその一例です。「ランダムランチ」は以前からある仕組みですが、その費用は会社が負担するように変えました。

合わせて上長との個別面談も各メンバーのペースに合わせて週1回から実施。キャリアからプライベートに至るものまで、悩みを相談できる環境を設け、縦と横のコミュニケーションを促進しました。

西原 「今は何でも思ったことを言えるカジュアルな雰囲気ですが、そこに至るまでに1年くらいかかったように感じます。コミュニケーション施策を重ねていくうちに、信頼関係がより醸成されてきた印象です」

全員が制度をフル活用するためには、常に試行錯誤を重ねる

▲野外オフィスの取り組みも

「制度があるだけで実際は使われていない」のではなく、全員が新しい働き方をフル活用する。

Warisでは制度を運用していて何らかの課題に直面した際、それぞれが当事者意識を持ち改善案を出し合うことを続けてきました。それはコミュニケーション施策に限らず、日常的に使うツールについても同様です。

たとえばリモートワークには欠かせないビデオ会議ツール。有料のものも含め複数種類のツールを試し、毎回全員で良かった点や悪かった点をフィードバックして最適なものを探し求めました。中にはリモートツールを活用している企業へヒアリングに行ったメンバーもいます。

西原 「一度有料のテレビ会議システムに落ち着いたのですが、その後も他のツールを試し続け現在活用しているのはGoogleのハングアウトです。ただ今でももっと使いやすいものがないか、常に試行錯誤しています」

フレックスタイムや短時間勤務制度を導入すると、業務時間もバラバラです。業務の途中で一時的に抜けるメンバーも少なくありません。そんな時にどうやって他のメンバーに伝えるのがいいか、細かいことですがいろいろと実験しました。

西原 「最初は普段使用しているチャットツールに勤怠用のルームを作り、始業時と就業時に毎回投稿するようにしていました。でも実際にやり続けていると非効率ではないかという意見が多くて、途中で抜けるときにだけ『何時から何時まで稼働できません』と伝えるように変えたんです」

時間や場所の制約を認め、みんなが働きやすい環境の実現を目指して

▲会議の様子

2017年現在、Warisでは16人のメンバーが働いています。そのうちの12名は育児中のお母さん。全員が人事制度を上手く活用しながら、仕事と家庭の両立にチャレンジしています。

子どもが病気がちで昼過ぎに学校へ迎えに行く日々を過ごしていたあるメンバーは、フレックスタイムとリモートワークを活用して仕事を続けています。2歳の子を持つメンバーは保育園の夏休み期間、実家へ帰省し両親や親戚にサポートしてもらいながら業務を遂行しました。

また共同創業者のひとりである河は、配偶者の転勤のため、福岡へ移住。社内会議はテレビ会議を活用し、月に一度の東京出張以外は福岡からWarisを引っ張っています。

新しい働き方を自分たちから実践し続けた結果、設立から間もないベンチャー企業であるにも関わらずWarisに興味を持ってくれる人も増えました。最近では大手IT企業で部長職を経験した男性が「今までの1社で働き続ける働き方から、もっと多様な働き方にチャレンジしたい」とWarisに参画。早速制度をフル活用し、他社と兼業しながら働いています。

クライアントとの新しい取り組みや登録者の増加に繋がるなど、提供するサービスにおいても大きな影響がありました。

「誰もが自分の能力を生かして生き生きと働き続けられる環境」をまずは自社で体現しよう。そのような想いで人事制度を作ってから、約2年が経ちました。

会社が大きくなるにつれてコミュニケーションの課題に直面した時期があったのも事実です。それでもこの働き方を変えることはせず、その都度メンバー全員で課題に向き合い、細かい改善を積み重ねてきました。

西原 「私自身も、プライベートで海外に行っている間、ずっとリモートワークをさせてもらいました。時差がある中、初めての試みだったのですが、快く受け入れてもらって。育児、介護などの理由や、オフの活用など、場所や時間に制限があったとしても、それを認めた上で働きやすくしてくれる環境があります。仕事を続けられることは嬉しいですし、それがモチベーションのひとつにもなっています」

Warisのメンバーは誰ひとりとして現在が完成形だとは思っていません。全員がさらに生き生きと働き続けられる環境の実現に向けて、これからも取り組み続けます。

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