主婦こそが働き方改革の主役! ーー主婦の「眠れる力」を引き出す、新しい仕組み
「働き方改革」など存在しない時代に生まれた、非常識な働き方
「埋もれている女性の力を掘り起こしたい」ーー 。ソフトブレーン・フィールドはそのような想いがきっかけとなって、2004年に誕生した会社です。
当時の日本には結婚や出産、子育てを機に家庭に入り、まとまった時間がとれないことが原因で社会に復帰できない女性が数多くいました。一方でこれから人口減少にともない労働力不足が少しずつ深刻化していくはず。そのような考えのもと、私たちは創業時から女性たちの「眠れる力」を引き出す挑戦をしています。
私たちが提供している「フィールド・クラウドソーシング」はまさに女性にとって働きやすい環境を突き詰めた結果、生まれた仕組みです。私たちが「キャスト」と呼ばれる働きたい個人と、様々な業務を委託したい企業をつなげる役割を果たしています。
時間給ではなく訪問単価制を採用し、女性たちが好きな時間に無理のない範囲で働ける環境を整備。スキマ時間に自宅近くの店舗などで働く「店頭活動」をはじめ、在宅ワークや派遣など多様な形で活用が進み、全国で約7万人が登録するまでになりました(2017年現在)。
その中核を担っているのは優れた能力を持っているにもかかわらず、さまざまな制約があり力を発揮できずにいた主婦の方々です。
会社を創業した2004年といえば「働き方改革」といった考え方はなく、クラウドソーシングのような新しい働き方も存在しませんでした。そのような時代に、なぜ主婦をはじめとした女性の力に注目し、わざわざ常識的な働き方とは異なる取り組みをはじめたのかーー。
その背景には、創業者である木名瀬博の前職時代の体験がありました。
「主婦の力は偉大」現場で活躍する主婦の存在がすべてのはじまり
木名瀬はソフトブレーン・フィールドを創業する前、アサヒビールの子会社に取締役として在籍していました。手がけていたのは実店舗の売上拡大をお手伝いする、フィールドマーケティングと呼ばれる事業です。
その当時、木名瀬を驚かせたのが、共に働く女性社員の優秀さやパフォーマンスの高さでした。
彼女たちは常に仕事の効率を考え、限られた時間で成果を出すために創意工夫を続けていました。それは過去に働いた経験だけではなく、家事や子育てを通して培ったスキルや要領の良さも影響しているのではないか。木名瀬はそのように考えたのです。
仕事を通じて彼女たちの思考力や発想力、女性ならではの繊細さや、卓越なコミュニケーション力に刺激を受けるようになった木名瀬。次第に、将来日本を脅かすであろう労働力不足の解決策として、彼女たちの力をより引き出せないかと考えるようになります。
そのアイデアを実現するためには、まず「女性が働けない原因」を徹底的に取り除く必要がありました。働きたいのに働けない女性が存在するのはなぜか。課題を深掘りした結果、「年齢」「時間」「場所」「評価」という4つの要素が浮かび上がったのです。
結婚や出産を機に専業主婦になった女性は、年齢がネックとなり正規雇用で再就職をすることが困難。そもそも育児や家事のためにまとまった時間を確保できない上に、離れた勤務地に通うことが難しいという問題も抱えていました。女性の力を十分に引き出すという観点では、成果に応じた適正な評価も求められます。
これらを熟考した末に完成した概念こそが、自らのスキルを活用して近場の店舗で働ける「フィールド・クラウドソーシング」です。
当時は時間拘束型の働き方が一般的な中、スキマ時間に仕事ができるように訪問単価制度を導入。個々の業務の達成度にポイントをつけて数値化することで、頑張った人がしっかりと評価される仕組みを作りました。
たしかに前例はありませんでしたが、この形であれば女性たちのパワーを社会で発揮できるはず。そう考えたのです。
仕事を通じて主婦が見つけた、お金以外の働く意義
いくら働き手の女性たちにとっていい環境であったとしても、ビジネスとして成立させるためには仕事を発注する企業側にもメリットがなければいけません。
その点「実際に買い物をしている主婦の目線」は企業が喉から手が出るほど欲しいものでした。高いスキルに加えて商品知識や消費者視点を持つ女性たちは、企業にとって貴重な戦力になります。
まさにそれを体現しているのが、キャストとして飲料メーカーと食品メーカーの定期ラウンダーを務める香取敬花さん。ふたりの子どもを育てながら、夫の会社で経理事務をしていた主婦の方です。
主婦業や夫の業務をサポートしながらも、自分の生活スタイルに合わせて仕事をできないか。そのような想いで、香取さんは2016年6月からキャストとして働きはじめました。
彼女の役割は定期的に実店舗を訪れ、主婦の目線を活かして売り場の設計やメンテナンスをおこなうこと。スキマ時間を効率よく活用し、店舗の従業員とも連携を取りながら実績を残し高い評価を受けてきました。
香取さんのように高いスキルを活かして現場でバリバリ活躍されている方もいれば、社会復帰のファーストステップとしてレシート入力など簡単な在宅ワークからはじめる方もいます。「働く理由」は人それぞれ。ただキャストへのアンケートを通じてわかったのが、必ずしも「家計を支えること」が目的ではないということです。
家事や育児に専念する中で、次第に外部との接点を失いかけていた日々……。わずかなスキマ時間でも仕事を通じて人と話をしたり、感謝をされる。そして成果に応じた対価がもらえるというのは、時間の有効活用だけではなく「生きがい」にも繋がる。そのような声がいくつも私たちのもとへ届いたのです。
消費の中心にいる主婦の力が、地域や企業を支えていく
少子高齢化が進む日本においては、女性のほか高齢者などの力も集まらなければ社会を支えていくことはできません。そこで大切なのは「お金のためにやむなく働く」のではなく、個々の能力に合った仕事をして、それに応じた適正な対価が支払われる仕組みです。
私たちは年齢や時間、場所の制約を乗り越え、スキマ時間でも゙働ける環境を「フィールド・クラウドソーシング」という形で作ってきました。
当初は訪問単価制であることや雇用契約によらない働き方であることが原因で、企業やハローワークから理解されないことがあったのも事実です。それでも少しずつ実績を作り、2017年9月時点でキャストは約7万人、取引実績社数も350社を超えました。
この事業を通じて改めて感じたのが「主婦を中心とした女性の方々はびっくりするぐらいのパワーを持っている」ということです。短い時間の中でも培ってきたスキルとセンスで高いパフォーマンスをあげる彼女たちこそ、今後の働き方改革の主役となっていくことになるでしょう。
だからこそ、そのパワーをもっともっと社会で発揮するためのサポートが不可欠です。
地域の消費活動の中心にいる人たちがその地域で働けないのは、社会にとってももったいないこと。女性が無理のない範囲で企業に参画し、消費者の声を現場に届けることで本当にニーズのある商品や店舗を作ることができます。無駄の多い消費社会から脱却できれば、いろいろな課題の解決にもつながっていくはずです。
働き方が多様化しはじめても「まとまった時間がとれない」ために働けない女性が、まだまだたくさん存在します。彼女たちの眠れる力を無理なく引き出すことで、企業や地域の労働力不足も同時に解消していきたいーー 。
ひとりでも多くの人に、そして1社でも多くの企業にこの仕組みを活用してもらえるように、私たちは今後も挑戦し続けます。