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これからの日本をつくる"働き方"のストーリー

"自創する集団"に向けた挑戦ーー絆を深めたリーダー研修物語

株式会社メビウス製薬
日本で初めてBBクリームを販売し、人気のシミウス(Grace & Lucere SIMIUS)シリーズを展開。そう聞くと、販売元は大企業なのだろうと思うかもしれません。しかし、メビウス製薬は社員60名程度(2018年2月現在)の成長過程にある会社です。創業から10年ほど経ち、やっと事業が安定した頃、私たちが直面したのはマネージャー育成問題でした。

日本初のBBクリーム販売。借金と試行錯誤を重ね、何とか駆け抜けた創業期

2006年7月ーー。創業時のメビウス製薬(当時メビウスソリューションズ)は、現 代表取締役の小野浩之と常務の沖洲真弓のふたりだけ。

小野は、創業以前、スピード感ある大規模な組織のなかで働き、気づけばお客様よりもライバルや数字に目を向けている自分がいたと振り返ります。

自分にとって、本当の意味での"世の中への貢献"とは何だろうかーー。

理想を追求したいと思った小野は、45歳で退職。本当のサービスを提供する組織を自ら作り出し、お客様を幸せにするものづくりをするべく、かつて部下だった沖洲とともに起業したのです。

「女性の美と幸福」に貢献して喜んでもらうことこそ、ダイレクトに世の中に役立つことなのではないか? 沖洲が20代の頃にニキビ・シミなどの肌トラブルに悩まされ、そのつらさを身に沁みて感じていたこともあり、メビウス製薬は化粧品事業に乗り出すことを決めました。世界中から化粧品を集め、文献を読み漁り猛勉強する日々が始まったのです。

そのなかで目をつけたのが、治療後のデリケートな肌に使用するドイツの医療用ファンデーション。

調査の結果、そのファンデーションは韓国で「BB(Blemish Balm)クリーム」として販売されていることがわかりました。女性のニーズに合わせて進化し、メイク下地、日焼け止め、コンシーラー、ファンデーションになるうえ、美容成分も入っているというオールインワンアイテムです。

足しげく韓国に通い、品質調査、工場探し、オリジナル製品の開発……。成分上そのままでは日本で販売できないうえ、協力してくれる工場はなかなか見つからず、いくつもの試練を乗り越えていきました。

資金も足りなかったため、創業当時のふたりの給与は"なし"。しばらくは貯蓄で凌いでいましたが、当然長くは続きません。

こだわって開発すると借金はどんどん増えます。でも、妥協はできないし、もう後戻りはできません。やっとの思いで日本用に改良したBBクリームの販売に成功したのです。

当初は売れ行きが芳しくありませんでしたが、テレビ番組でカリスマ美容家のIKKOさんがBBクリームの紹介したことをきっかけに起死回生の大ヒット。箱詰め、発送が追い付かないほど急激に注文が入るようになりました。

BBクリームは売れたが、事業はまだ安定しない……。そんな状況下でも、新たな商品の開発を進めていった小野と沖洲。"借金しては返す"を繰り返し、2014年頃にやっと売上高が右肩上がりに伸び、企業として安定するようになりました。

指示を待つ集団は作りたくない。さらなる成長のためリーダーシップ開発へ

効率化を図りながら、安心・良質のオリジナル製品を作り続けてきたメビウス製薬。工場やコールセンターは持たず、店舗も2017年に神戸三宮にオープンした1か所のみ。2014年頃までは社員数も20名前後という少人数で対応していました。小野は必死に資金調達のために奔走しながら、強力なリーダーシップを発揮してきたのです。

そして、売上が安定してくると、やっと腰を据えて社内教育に目を向けられるようになりました。正直なところ、メビウス製薬は中途採用や社員教育に手が回らず、人材が育たないため、重要な決定事項はすべて小野・沖洲が決めていたのです。

スタートアップ企業として成長していくためにそうするしかなかった、という面もありますが、「いざというときには社長がなんとかするだろう」という"他人事"感がある状況ではまずい。これからのさらなる成長を考えたときには、自ら考え主体的に動くマネージャーたちの存在が必要不可欠だったのです。

人材開発に投資する余裕も生まれてきており、やると決めれば行動あるのみ。小野はすぐにリーダーシップ開発に詳しい人たちにできる限りヒアリングをして、情報を収集。比較検討した結果、メビウス製薬に合うと考えたリンクアンドモチベーション社を選び、リーダー研修を導入しました。

――2016年11月。研修開始。

一度の研修で参加可能なのは4~6名です。マネージャー職に既に就いている社員、これから就いてほしいと思っている社員の混成メンバー6名が選ばれました。しかし、言葉にこそ出しませんが、当初は「忙しいのになぜこんなことを……」という空気も感じ取れました。

そこで、小野は研修のキックオフの際、正直に胸の内を話したのです。

「僕は『右にならえ』『左にならえ』言われた指示のみに従う組織ではなく、社員みんなが自主的に考え、提案できる組織にしたいのだ」と。

研修メンバーたちは小野の真剣さを感じ取ったのか、前を向いて走り出しました。自分たちでこの研修を "kizuna100プロジェクト"と名づけ、信頼できるマネージャーになるべく努力するようになったのです。

"耳が痛すぎる"フィードバックを乗り越える

▲研修風景

約4か月に渡って開催されたこの研修。研修に参加したメンバーたちは、経歴・経験も、マネジメントに対する考え・スタンスもバラバラでした。そこで、まずは6人が互いを理解することやマネジメントの定義を学ぶことところから始まったのです。

「我が社の人材育成は、所属チームのリーダーが責任を持っておこなう」
「人材育成のためには、まずは年間計画を立てる」

……といった具合に、一つひとつマネージャーの業務内容を明確化していきました。

少人数のディスカッションを繰り返していき、メビウス製薬のマネージャーとしての共通言語も創られていきました。彼らが研修を終える頃には、自分たちが経営と現場をつなぐ"結節点"になることをしっかり理解し、仲間同士の絆も深まっていました。

また、実際に現場での行動を変えるためには、一緒に働く人たちがどう感じているかを知ることが重要でしょう。研修では、「360°評価」といって、上司、同僚、部下など違う立場の複数の人たちに評価してもらう方法が取り入れられました。

人事本部長のPowen Shieh(シェイ)は、評価する側もされる側も"素直になること"が重要だと考えています。

シェイ「メビウス製薬では、『自己開示』と『フィードバック』をとても大切にしています。素直に自分の意見を言い、周囲も素直にフィードバックすることで成長します。
ただ、普通は素直に評価するのが恥ずかしいものです。悪い意見は自分のことを棚に上げないといけないので言いづらいし、褒めるのも照れてしまう。360°評価は本音を引き出しやすい有効は方法だったと思います」

しかし、この評価制度。実際にフィードバックを受ける側にとっては、とてもショッキングな研修でした。

シェイ「研修メンバーに自分自身のことを5点満点で評価してもらうと、平均4.2という高スコアでした。それに対して、チームの部下たちの評価は平均で"2"。大きなギャップがあったんですね。当然『こんな風にみられていたのか』と落ち込みます。
たとえば、あるリーダーは難易度の高いタスクに対して真っ先に手を挙げて行動してきた。『自分は積極性ではNo.1だ』という自己評価をしていたんです。でも、部下たちの評価は『いい加減』。お互いの認識のギャップが大きかったですね。
自覚していなかった短所を矯正していく作業なので、研修メンバーはとてもつらかったと思います。でも、今ではとても改善しました。凄まじい自己変革を成し遂げて、本当に自慢できるリーダーに成長しましたよ。
研修メンバーたちにとって、会社が求めるマネージャー像は非常に高い壁だったはず。必死にしがみついて、指先から血を出しながらよじ登っていくようなイメージです。でも、彼らはとても成長しましたし、チームのメンバーたちも彼らの努力を見てきているから、裏切りようがありません。
また、この研修を通じて、どんなフィードバックであろうと、まず『ありがとう』という感謝の気持ちで受け止めることを徹底するようにもなりました。間違っても評価してくれた相手を責めず、まずは自分自身を変えるという姿勢を大切にしています」

なかには、プライドや照れが邪魔をして、思うように研修を進められないメンバーもいました。

それでも小野と沖洲は、常にチャットワークで研修メンバーたちの進捗状況を確認し、必要に応じて1on1での声かけをしながら、 "いいことも悪いこともすべて開示していく"というスタンスであり続けたのです。

"自創する集団"となり、世の中も社員も幸せにできる組織へ

▲2018年1月、新社屋に移転

この研修を通じて、メビウス製薬のポリシーも確立されていきました。

シェイ「メビウス製薬の大事にしたいバリューは(2017年現在)33項目あり、冊子にまとめて朝礼で1ページずつ読んでいます。同じ価値観を社員たち皆で共有するのはとても大切なことだと思います。
『私たちの価値基準だと、これはOK/NG』という線引きが明確にできるようにもなりますね。社内の雰囲気、チームワーク、モチベーションなど全てにいい影響がでています」

2017年7月にメビウス製薬に入社したシェイにとって、今の会社はどう映っているのでしょうか?

シェイ「メビウス製薬では『お客様の美と幸福のために徹底追求できる』人が何より優秀な人材だと考えています。
当社には、そんな人材が集まっています。きっと伝説に残る通販サービスを創り出す会社になると思います。私は毎日ワクワクしていますし、『仕事ってこんなに楽しかったんだ』と感じています」

1期メンバーが見せたカッコいい背中に続き、2017年12月現在は2期のメンバーが研修を行っています。"kizuna100"というプロジェクト名には、「人と人との"絆"を強め、信頼関係で結ばれた100の事業を作る」という思いが込められています。

会社の未来を担う覚悟をもったマネージャーが次々と誕生し、メビウス製薬はさらにパワーアップ。お客様の期待値を1点でも上回るために、今後も新しくユニークなチャレンジを続けていきます。

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