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WORKSTORYAWARD2018

これからの日本をつくる100の“働く”をみつけよう「Work Story Award 2018」の受賞ストーリー、
一次審査通過ストーリーを公開しています。

年齢性別問わず、多様な働き方への挑戦。トレンダーズがめざす真のD&I

トレンダーズ株式会社
SNSを活用したキャンペーン施策をはじめ、社会から「女性が活躍する企業」として見られるケースも少なくありません。そんな当社のD&I施策を推進するのが人事部門で制度設計を担当する吉澤雅代です。彼女が取り組んだ働き方改革から、子育て社員が活躍する環境デザインのあり方を紹介します。

初めての社員の妊娠。バリキャリの会社に訪れた転機

▲トレンダーズのオフィスエントランス

トレンダーズは社員約110名のうち、女性が66%を占め、マネージャーも半数以上が女性、育休・産休取得者の復職率も100%を達成しています。

しかし、ほんの5年前までは、役員以外で勤続途中に出産を経験した社員がおらず、いわゆる “バリキャリ”な働き方が主流でした。

ジェンダーの垣根なく、仕事に集中するタイプのメンバーが集まっていたことや、若い社員が多かったことが背景にありましたが、2014年に初めて新卒入社で働いていた社員が産休に入ることとなりました。

当時の様子を吉澤はこう振り返ります。

吉澤 「これまでの当社は、若い年次から一人ひとりが活躍して、勢いのある社風のなかで仕事に向き合う環境で、子どもがいる生活をイメージする社員は多くなかったかもしれません。
ただ、いずれ結婚をして出産する人が出てくるのは、組織であれば当然です。

でも当時はロールモデルが社内にいなかったので、どうすればいいのかがまだ表面化していないなかで、ぼんやりとした不安が漂ってはいたかなと思います」

男女問わず、人生のステージが進むなかでパートナーが現れ、家族を持つのは自然なこと。一方で、「結婚するとパートナーの家族や仕事、子どもが、キャリアに少なからず影響がある」と吉澤は話します。

吉澤 「働き方改革や女性活躍が注目されていますが、女性自身の選択で、出産をして、子育てに集中したい、だから仕事には戻らないと決めたうえでのキャリアの断絶なら、いろいろな考え方があるので、いいと思うんです。
ただ、あるとき妊娠・出産を迎えて、本当は仕事に戻りたい、にもかかわらず戻れない。本当はキャリアを続けたいのに、断絶せざるを得ないという人がいるのであれば、それは解決するべきだと思います。
当社では、ジェンダーの壁もなくどんどん活躍してキャリアアップしていく女性をたくさん見てきたので、個人の想いとしても、そういうところがありますね」

復職後も「その人ならでは」を発揮し、組織の強さに還元させる環境づくり

▲働くママ向けに開催されたランチ会の様子

マーケティングは、企画力やクリエイティビティが属人化しやすいため、業務の切り分けが難しい仕事のひとつ。

会社として初めて育休からの復職社員を迎えるにあたり、ポイントは「万が一の時には周囲がサポートして代わりにできる仕事と、その人にしかできない仕事の両軸」だったと吉澤は話します。

吉澤 「その人しかできない仕事に価値があるからこそ、結婚や出産といったライフイベントなどによって、働き方に制約が出ても活躍できるんだと思います。
職種ごとのスキルやこれまでの人脈や信頼関係といったものが『その人らしい価値』になります。
トレンダーズの女性社員は、誰でもいい仕事をもともと好んでいないと感じますし、自分らしい活躍をしたいと考える人が多いと思います。
だからこそ、復職しても、それぞれが培ってきた価値であるスキルを活かして、時間や場所に制約のない働き方をデザインすることが大切なんです」

しかし、子育てをしながらの勤務には、自分だけでコントロールできないトラブルもつきもの。

「子どもは幼少期に病気にかかりやすい」「お母さんがここぞというときに子どもも一緒に緊張して風邪をひきやすい」ということにも配慮し、万が一の場合でもほかの社員がサポートできるチームづくりも同時に行ないました。

単に時短勤務やリモート勤務を可能にするだけではなく、営業系のセクションではプランニング部分などフロント業務ではない部分をメーンにして復職することや、デザイナーの場合は社内案件や、時間的に融通が効く案件に参画してもらうことなど、職種を変えずに復帰できる仕組みを整えました。

吉澤 「戻ってきたらこの部署・この仕事ですよとルール化して一律で運用したほうが、会社としては楽です。

でもそれでは会社の強みを出したり、一人ひとりのライフスタイルに合わせたりすることはできません。子育て社員が増えていくからこそ、こうした柔軟な対応をすべきだと思っています」

こうした制度を整えるためには、復職する立場だけではなく、ほかの社員からの理解も重要です。

「復職した社員以外にしわ寄せがくる」といった不安の声や、これまでになかった多様な勤務形態を認めるために、トレンダーズが心がけたのは「子どもがいるから、こんなに大変なんだよ。だから分かってよ、というコミュニケーションをしない」ことでした。

そのための草の根的な取り組みのひとつが、育休中の社員も交えた、「ママランチ」と呼ばれる、社内でのランチ会。

ママ同士で子育ての情報交換をして、復職前の不安を払拭することのほかにも、いい面をもたらしました。

吉澤「お子さんを会社に連れて来てくれることによって、子育てをしていない社員にも子どもがいるとどういう感じなのか、少しでもいいから目に入れてもらって、その感覚を少しずつ知ってもらえたらと思っています。
また、当社ではママや子ども向け事業を展開する企業さまからの仕事も増えています。
子育て中、育休中の社員に企画の相談をするなど、お互いが仕事をするうえで必要な存在になれるような状況が生まれています」

「地道ですが」と前置きをしつつ、ママランチのほかにも社員旅行を兼ねたレクレーションイベントに子どもを連れて来てもらったりします。

年に2回行なわれる社外でのキックオフには、育休中社員にも子連れで参加してもらい、会場にベビーシッターに来ていただくなど、接触回数を増やす試みを積極的に仕掛ける吉澤。

その想いをこう語ります。

吉澤 「ママがイベントに参加しているときは、ほかの社員が子どもの面倒を見るとか、社員旅行ではママとお子様が参加しやすいような宿泊場所を検討するなど、お互いが歩み寄れることを意識しています。

一人ひとり異なる価値観があり、それぞれのライフスタイルも違うので一朝一夕で理解し合うのは難しいですね。

だからこそ長い目で何度も、こうした接点を設けることによって、自然と相互理解できるようになると思っています」

会社初の育休明け社員を支えた吉澤が語る、人事・採用担当のあり方とは

▲「出戻り」と「リモートワーク」の両方を実現させた社員(左から3人目)

復職する社員に対するケアは、こうした組織的な制度だけではなく、一人ひとりの状況を丁寧に把握し、適切な関係を築くことに特徴があります。

吉澤 「復職する社員本人だけでなく、子どもや家族、暮らし方といったことまで把握するようにしています。

たとえば、子どもが病気をしたとき、近くに見てくれる親戚がいるかなど、子育て状況に関わるさまざまな情報をヒアリングしておくことで何かあった場合に、会社もフォローがしやすくなります。

また、本人たちにも、何かあれば相談していいんだなと思ってもらえるよう意識しています。

1番身近な人事のメンバー、同じ立場の働くママや上司など、話しやすい相手をつくることで、孤独な状態にならずに子育てと仕事を自分らしく続けていってもらえればと考えています」

トレンダーズで育休から復帰した中途入社社員の保谷 絢子は復帰後1年間を産休前から所属していたインフルエンサーマーケティングディビジョンでメンバーのサポート的な立場として勤務したあと、広報として新しい仕事にチャレンジしています。

吉澤はその背景について話します。

吉澤 「当時、ちょうど広報で産休に入る社員がいたので、保谷の希望や適正をふまえて、広報の新しいミッションにチャレンジしてもらうことになりました。

本人が子育てをしながら復職して、リモート勤務も織り交ぜて仕事をしているので、裏方としての広報ではなくて、これからのトレンダーズを象徴する社員のひとりとして表に出る期待もありました」

保谷 「以前所属していたインフルエンサーマーケティングディビジョンでは、 6年ほどディレクターの仕事をしていたので、あまり異動のことは考えてなく、最初広報の話を頂いた時は正直ビックリしました。
もちろん広報の仕事は初めてだし、子どももまだ小さかったのでよく風邪をひいて保育園を休みがちで、ひとりで広報なんてできるかな?と不安いっぱいで……。
でも、せっかく頂いたチャンスだから挑戦したいし期待に応えたいと思いました。

仕事ができる環境は整えてもらってるし『ママでもやっぱり普通に仕事がしたい』と復職してもこう思っていた私の背中を押してくれました」

復職前後のコミュニケーションなど、社員のことを1番に考えた取り組みの背景には、吉澤の「人事として自分が新卒採用した社員だから」という想いがありました。

吉澤 「私は当社に入社してから約 10年経つのですが、転職当初、私が新卒採用にかかわって 20代前半で入社した女性社員たちが、仕事を頑張ってきて、やがて結婚、出産を迎える社員も増えてきました。
もしかしたら本人たちですら予期していなかったことかもしれないですが、人生で素晴らしいことじゃないですか。
もちろん彼女たちは仕事を続ける考えでいてくれましたし、学生時代から知っている彼女たちが、そういったライフイベントを迎えるからこそ、私が1番のサポーターでありたいんです。
優秀な人材を採用するだけでなく、そのあとの人生までちゃんとかかわり、しっかりと向き合うことが、人事のあり方のひとつだと思っています」

年齢・性別を越えて、トレンダーズは多様な働き方を受け入れ挑戦し続ける

トレンダーズにおける働き方改革は、子育て社員に対する環境づくりだけではありません。性別や年齢などをこえて、真のダイバーシティ経営を目指す同社には、すでにいくつか事例ができはじめてきています。

保谷に続いて産休から復帰した別の女性社員はその後、ボードメンバーに昇格を果たし、出産後でもキャリアアップができることを示しました。

また別の社員は新卒入社後に結婚し、東京を離れるために一旦は退職。しかし、遠隔でも仕事ができることから、業務委託ではなく“フルリモート勤務社員”として再入社をしました。

その後、ご夫婦で東京に再び戻ることとなり、オフィスに通いながら勤務を続けています。

こうした例をはじめ、個々のライフスタイルに合わせた働き方の多様性をさらに加速させるために、「常に止まることなく、いいと思ったことはすぐに実行してみる」ことが定着しているといいます。

吉澤 「女性だけに限らず、キャリア形成を支援できるような環境をめざしています。育児社員だけではなくて、もっと広い意味での、ダイバーシティや、働き方への挑戦です。
その根本にあるキャリア形成についても、当社では希望する社員全員が半年に 1回副社長と面談ができるキャリアディベロップメント制度があります。

ほかの職種のほうが自分に合っているんじゃないかとか、新規事業をやってみたいとか、年次・男女を問わず一人ひとりの考え・悩みに対して、副社長が真摯に向き合っている会社は稀有じゃないかなと思っています。

人事から画一的なキャリアに関する質問フォームが送られてきて、惰性で回答するようなことではなく、本当に社員にとって役立つ仕組みをこれからもつくっていきたいですね」

働き方改革やダイバーシティといった言葉が鍵になっていることは確かな一方、トレンダーズが社員の働き方に対して、柔軟な取り組みを行なう理由。

その真意を吉澤は今後の展望を交えて語ります。

吉澤 「今後さらに、会社の垣根がますますなくなっていく時代になると思います。

スキルあるメンバーと働き続けるためにも、自分たちの会社のなかで縛りつけるのではなく、それぞれのライフスタイルやキャリア選択を尊重していくことが必要です。

具体的なところでは、副業として個人が複数の企業の仕事を受け持つことは、すでに広がりはじめています。

当社でも副業は許可していますし、これからも個人のキャリアを自由に受け入れていける風土をつくっていきたいと思っています」

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