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WORKSTORYAWARD2018

これからの日本をつくる100の“働く”をみつけよう「Work Story Award 2018」の受賞ストーリー、
一次審査通過ストーリーを公開しています。

自治による託児制度で、すべてのママが輝ける職場環境を実現

株式会社CRAZY
子どもが生まれることは素晴らしいという声が聞こえる一方で、子どもができたらその後のキャリアはどう形成すればよいのかと、頭を抱える女性は少なくありません。株式会社CRAZYでは本当に理想の生き方、働き方から制度を考えよう、と社員全員が、子育てをしながらでも全力で仕事ができる環境をつくることにしました。

初めてのママメンバー、どう復帰してもらう?

▲CEOの遠藤理恵

皆さんにとって、会社で一緒に働いている仲間は、何かあったときに相談したり頼ったりできる存在ですか?

多くの人は、人生のなかでとても長い時間を働いて過ごします。人によって、その時間はなんと人生の半分ほど。となると、「働く」を共にする仲間こそ、何かあったときに相談できたり、頼れる相手であるべきだと私たちCRAZYは考えています。

仕事は仕事、プライベートはプライベートときっちり分けるのが必ずしも悪いことだとは思わないけれど、それだとなんだか人間関係が少し希薄になってしまう気がする……。だからこそ、私たちは「生きる」と「働く」を分けない働き方を大切にしているのです。

そう考えると、仲間が出産育児という人生の大きなターニングポイントを迎えたとき、全力でフォローするのは、当たり前のこと。子どもを産んだらキャリアを諦めなくてはいけない、というのは私たちにとって理想の姿ではありません。

社員は、会社を運営するための歯車ではなく生きた人間であり、「子どもを産み育てることも仕事も、その人の大事な人生の一部」です。

そういう認識があるからこそ、2015年に創業メンバーの遠藤理恵が第一子を出産したとき、私たちは子育てをしながら全力で仕事ができる環境をつくることを決めたのです。

遠藤は、私たちにとってのママメンバー第1号。それまで、産休育休後どのように復帰してもらうかという制度は存在していなかったので、まずは話し合って決めるところから始めました。

子育てと仕事の忙しさに追われ、心が折れそうになった

▲子どももママと一緒の時間を楽しんでいる

遠藤は、産休に入る前、当社のサービス「CRAZY WEDDING」でプロデューサーのマネジメントを担っていました。そして産休育休から復帰後はすぐにCOOに、2018年12月現在は、CRAZY WEDDING事業部CEOに着任しています。

遠藤 「そろそろ復帰したいなと代表の森山に相談したら、『早くおいでよ』って。
でも、当時は子どもがまだ生後半年。私自身、1歳までは母乳で育てたいという思いがあって、保育園にすぐ預けるということは考えていなかったんです。じゃあどういう風に復帰するかを1回会議しようというところから制度づくりが始まりました」

じっくりと話し合った結果、当時、遠藤は経営の部分も担っていたこともあり、その働きを全面サポートしてくれる「ナニー」をオフィスに雇い、子連れで出勤することにしました。

「ナニー」とは、「ベビーシッター」とは異なり、特にイギリスで母親に変わって子育てをしてくれる人のことをそう呼びます。

CRAZYでは、ベビシッターではなく、「ナニー」を雇うことで、子どもたちにとって第二の母、家族のような存在としてサポートしてもらっているのです。

ところが、「そんなナニーの存在は本当に助かった」と遠藤が語る一方、あまりに助かるからこその障害が……。出張も残業も際限なくできてしまうために、働きすぎてしまったのです。

ウェディング事業という仕事柄、ミーティングはお客様に合わせて夜遅い時間におこなわれることが度々あります。

そうなると、遠藤は当然帰るのが遅くなり、深夜に子どもをお風呂に入れる日も。また、授乳しながらパソコンのキーボードを打った日は数え切れないほどでした。

遠藤もナニーもなかなか休みが取れないほどの忙しさと子育てに追われる日々。

遠藤は、「こんな働き方、子育てでよいのだろうか」と泣いたこともあったと振り返ります。仕事にも愛しいわが子にもまっすぐでありたいのに、どちらにも誠実になれない自分に、COOとしても、母としても心が折れそうになっていったのです。

ある日、「このままではダメだ」と思った遠藤は、思いきって仲間に心に抱えた苦しさを吐露しました。仲間はその思いを受け止め、相談の末、シフト制という働き方を提案。

遠藤 「『朝型生活にして、仕事も育児もやりたいようにやればいい。みんなに時間を合わせてもらえばいいよ』と言ってくれたんです。葛藤している自分を支えてくれる仲間が、それをフォローしてくれるCRAZYの文化と制度がとてもありがたかった」

こうして、シフト制により「あえてセーブできる働き方」が始まったのです。

会社全体で子どもの成長を見守る託児制度

▲お昼も子どもと一緒に

遠藤の新しい働き方は、基本朝型。チームを組んでいる仲間も朝型にしてくれて、ミーティングがあったら朝の時間帯に調整。ナニーは遠藤に合わせて出勤することになりました。

遠藤 「子育てにも、仕事にも集中しやすくなりました。すごくありがたかったんです。
それに仲間が『理恵さんが楽しそうに、幸せそうにしていることが私たちの一番の望みです』なんて言ってくれるんですよ。これはもう、頑張らない理由がないなって。私が折れたくても折れることができないレベルのサポートだったのが、何よりの励みでした」

それからは、ママメンバー第1号の遠藤の経験をもとに、ママたち自治というかたちをとって、やりやすい託児制度を徐々に整えていきました。

2018年現在、当社では6名のママメンバーが託児制度を利用しています。ナニーも2人に増え、ときにはアルバイトメンバーがスポットで入ることも。

また、子育てに関わっているのは、ナニーだけではありません。当社のメンバー全員が親戚のお兄さんやお姉さんのように子どもたちと接してくれていて、オフィスにはいつもたくさんの笑い声が響き渡っています。

そのため、世間でよく耳にする「産休育休明けのママ社員は肩身が狭い」「子どもを理由に休んだり早退したりするのが心苦しい」などの葛藤を感じず、ママたちが活躍しています。

子育ては偉大な仕事であり、子どもの命はみんなで育もうという文化が、遠藤の出産をきっかけに徐々に根付いていったのです。

そのおかげで、当社の育休産休後の復帰率は100%。出産を経たすべてのママメンバーが、キャリアを諦めずに「生きる」と「働く」を分けない働き方を実践しています。

出産という大きな経験を積んだ女性はキャリアアップできる

さて、この託児制度ですが、実はママメンバーが自治会をつくって運営しています。

最初は自治会なんてなかったのですが、保育園に預けるよりはリーズナブルで、なおかつママの思想に合わせてコミュニケーションをとって愛情を注いでくれるナニーだからこそ、ママ自身がきちんとナニーと話し合って運営する必要があると判断し、自治会を設置したのです。

ママメンバーとナニーが話し合って、お互いに「いいね」と思える制度をつくるのがきっとベスト。その思いから、月に1度はコミュニケーションをとり、「今月はどうだった?」と意見を聞いたり、ママとしての葛藤を相談する場も用意しています。

そうしてママメンバーとナニーが信頼関係を築くことで、当社の託児制度はどんどんブラッシュアップされていっています。

遠藤 「託児制度ができてから、社員からは安心して子どもを産んで働いていく未来が見えたという声をよく聞きます。また、近くに子どもがいるという環境が、メンバーにとってもすごく癒しになっているみたい。うちは、社員も子どももみんなでランチを一緒に食べますしね」

世間では、出産は「キャリアストップ」と考えられがち。でも私たちはむしろ「キャリアアップ」だととらえています。

遠藤 「人生って、どれだけの経験をしているかでアウトプットの質が変わると思うんです。それは仕事も同じこと。
そういう意味では、ママは出産というかけがえのない経験をしているわけで。私の場合、もう産んだ瞬間、すべてのお母さんをリスペクトする感覚と、愛しいって気持ちの実感を味わったんですよ。その経験はすごく価値があるものだと思います。
そして「世界で最も人生を祝う企業」、これはCRAZYのビジョンです。ここで意味する「祝う」はたたえること、承認すること、愛すること。この制度はそんなCRAZYのビジョンを体現しているんです」

出産という大きな経験をし、育児しながら家事をこなし、人によってはさらに仕事もこなすというマルチタスクを手に入れた女性が、社会でその能力を発揮できないわけがありません。大事なのは、その能力を活かせる場をきちんと用意することです。

CRAZYの育産休復帰率は100%。

私たちは、そんなママたちが能力を際限なく発揮できるよう、居心地のいい託児制度で産休育休から戻ってきたママメンバーを迎えつづけていきます。

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