社員の"幸せ"を追求した先にあった「フラット型組織」
「社員の発想」を生かすことが組織改革のはじまりに
gCストーリーの主軸の事業は、施工、介護、ヘルスサポート。「全従業員が幸福で調和し、取引パートナー・顧客に感謝される存在であり、人類、社会の調和に貢献すること」を理念に掲げています。この理念を社内が一丸となって目指すための地盤づくりには、会社の急成長とその後の課題分析がありました。
執行役員の安部孝之は、組織改革までの道のりを振り返ります。
安部「これまで、企業文化を顧みずに社員数を増やした時期や、クライアントのニーズを優先したビジネスモデルの展開を進めた時期を経験しています。どうすれば売り上げが伸びるか、どうしたら社員は幸せに生きられるか……。
けれどそれが継続的な収益に直結せず、社員が疲弊するばかりの悪循環に陥ることもありました」
戦略を担当するボードメンバーはこうした疑問を直視したうえで、もっと自由に社員が発想できる環境をつくることが必要なのではないかと考えはじめます。
gCストーリーの社員は「貢献のために成長する」という意識付けが浸透しています。高い共感力に裏打ちされた結束力がある一方で、社員自身が主体的に流れを改善しようとする文化は根付いていませんでした。
安部「そもそも経営に携わるメンバーは中途入社が多く年齢層も40代。これに対し、現場で活躍するメンバーの約8割が新卒入社で、半数は20代後半という割合を占めています。
会社の大半を占める若い世代の新しい想いやアイディアが、積極的に出てくる環境をつくらなければ、組織の停滞に対する正しい解決策は見つからないだろうと考えました」
意見を取り入れ、当事者意識を持てる課題確認型へ移行
gCストーリーはジェネレーションギャップから来る意見の通しづらさや、意識の違いを改善するべく、学生起業家が提案したあるインターンシップを実施します。
それは、高野山に参加希望者たちが宿泊し、「愛」や「正義」など概念的なテーマについて議論を深めるというインターンシップ。
安部「そんなことしたって誰も来ないだろうと思っていたら、あっという間に定員に達したんです。参加者である若い世代からは非常に高い評価を得ました。われわれの世代では考えられなかったアイディアでしたね。次に、ホラクラシー経営を実験的に導入しはじめます。
改めて世代の違いを感じたとともに、どうしたらこうした新しい世代のメンバーを生かせるのか、考える良いきっかけになりました」
ホラクラシー経営とは、管理職をあえてつくらず個々人に権限を分散することで、情報の可視化と、自由な発想が基盤となる経営方法。それまで少人数の部門ごとに目標設定をし、成果を重ねるアメーバ経営を選んできたgCストーリーにとっては、大きな挑戦ともなる決断でした。
安部「この改革は、マネジメントが主な業務だった人たちにとって、権利を失うことを意味します。また、全員が主体的に行動せよと言われても、すぐに行動できるわけでもありません。一部でのホラクラシー導入によって一人ひとりの強みが生きると考え、マネジメント不在の状態でどのように業務を回していくかを検討。そこで、課題解決型から課題確認型への移行を実施することにしたのです。
当然大きな反動はありましたし、一度出来上がっていた組織の骨を再度つくり変えるのは本当に難しかったです」
この課題確認型とは、会社が抱える課題を分担して解決していくのではなく、全員が当事者として向き合うことを表わしています。
安部「こういった大きな変革を加えている根底には、社員が幸せに働き、その結果、社会にもその幸せを広げていくという大きな目的があります。組織の運営方針を変えていく中で、メンバーは改めて自分自身が何をできるのかという問いと直面し、予想しえなかった課題や希望を目の当たりにしていきました。
しかし、幸せのかたちは人それぞれ。今回の改革が必ずしも正しい答えとは言い切れません。ただ、その幸せを突き詰めて、模索した結果、導き出したひとつの答えであったことは間違いありません」
はじめは戸惑いがちな反応が大きかった社内。しかしそんな時、代表である西坂勇人はあえて会社から距離を置くことで、社員を見守り、信頼し、一任する期間をつくったのです。その期間を経て、徐々に主体的な動きが生み出されていきました。
フラット型組織の誕生と、その“カオス”の中で見えたもの
これまでは、自身の属する部門のことのみ見ていた社員同士。しかし、徐々に全社を見渡した課題意識を持つようになっていき、新しい挑戦をする姿も増えていきました。
その中で挙がった提案が、経営会議のオープン化。
全社員が、リアルまたはオンラインを通じて経営会議にアクセス可能になり、経営の意思決定がどのように行われているのかが共有されるようになったのです。
安部「やってみると、意外といけるんだなと思いました。どうしたら社員が幸せに働けるのかという問いに向き合い、時間をかけて組織そのものの在り方を問い続けた結果、2018年2月、gCストーリーは「フラット型組織」という一つのゴールにたどり着きます。
どんな反響があるか、やや不安な側面もありましたが、今までクローズドだった情報に社員がアクセスできるようになったことで、より当事者意識が持てる環境ができたのかもしれません」
社員一人ひとりが自由な発想を生かして働ける環境として、全員が課題を共有し、当事者意識を持つ土台をつくったのです。
すべての課題が見えているからこそ、自分の強みを最大限に生かせるかたちで解決に取り組むことができる。大きな目標に向かって自然に動いていけるような働き方を目指し、社員の挑戦ははじまりました。
安部 「自由でいい、管理体制を厳密にすべき、俺たちがルールを作る……。本当にいろいろな意見が飛び交っています。まさに“カオス”といったところですね(笑)。課題を感じる一方で、今まで優先度の関係で手をつけられていなかったタスクやプロジェクトへの取り組みの頻度が上がり、顧客との関係構築や業務の効率化など、成果は表れつつあります。
当初フラット型組織に切り替えれば、マネジメントしていた人たちが自由になり、何かがはじまるのかと思っていたのですが、決してそうとも限りません。やってみなければわからなかった点は、たくさんあります」
また、組織体制に興味を持ってくださる採用候補者が増えたことや、退職者が減少したこともフラット型組織がもたらした変化。さらに、売り上げに直結する業務時間は、組織改革前と比べて10%増加し、今後の働き方や売上の好転も期待されます。
安部「会社としての限界点が突破できた感覚はあります。組織体制をどう変えていくかという議論はもちろんですが、それ以外にもたくさんの課題意識を個人が持つようになっており、ここからまた改善を加えて良くしていけるという希望がありますね」
組織改革がもたらした変化と、一貫した“幸せ”の追求
社員の“幸せ”と“自立”を追求した一連の組織改革は、社員全員の意識改革にも直結していました。
現在、gCストーリーでは、宮城県女川町との連携プロジェクトや、ママ社員の働きやすさを追求した制度改革など、社内外問わず“幸せ”をもたらす動きを、社員が主導するかたちで進められています。
こうした意識の根幹となっている取り組みは、Great Place to Work® Institute Japanが発表した、2018年版日本における「働きがいのある会社」女性ランキング(25~99名規模部門)で1位をいただくなど、少しずつ日の目を浴びる機会が増えています。
安部「組織や働き方を良くしていこうという想いは、みんな一致していると思います。ただその方向というか、目指すものはそれぞれ違うんです。それをあえて統一しないのが、フラット型組織という組織体系につながるのだと思っています。
この組織を維持するためには、一人ひとりが模索するときの指針は必要ですね」
フラット型組織はあくまで社員の幸せを追求していく過程にすぎませんし、今後また改善すべき点を分析したうえで方針は変わるかもしれません。
でも、どんなかたちを描こうと、それぞれの指針となるキーワードは“幸せ”です。
安部「代表の西坂は以前から『誰かを幸せにすることが自分の幸せになったのなら、それが最高の幸せ』という考えを貫いています。それはgCストーリーの礎となっている考え方。組織体制が何であろうと、お互いが幸せになれて、その幸せの輪を広げていければ幸せだと思うんですよね。
見ているその方向さえ一致していれば、これからもgCストーリーらしい良いことを世に広めていけると信じています」
貢献のために成長することを大切にしているgCストーリーでは、その成長を支える幸せを絶やすことなく、広げていくことを意識しています。
今後も挑戦を続け、その結果、幸せを周囲に伝えていく企業として、これからも物語を紡いでいくでしょう。