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WORKSTORYAWARD2018

これからの日本をつくる100の“働く”をみつけよう「Work Story Award 2018」の受賞ストーリー、
一次審査通過ストーリーを公開しています。

主人公100億人プロジェクト 社内編

オルウィン株式会社
「主人公100億人プロジェクト」という一見突拍子もないビジョンを掲げたのは、東日本大震災と、ある社員の離職がきっかけでした。私たちオルウィンはもともとデザイン会社でしたが、年数をかけて、主体的でイキイキと働ける会社へとカタチを変えていきました。全員が主人公になるまでの道のりをお伝えします。

震災と、依存していた社員の離職をきっかけに組織のあり方を考え直した

▲主人公100億人プロジェクトというビジョンを掲げるきっかけのひとつが東日本大震災でした

2015年に「主人公100億人プロジェクト」という名のビジョンを掲げるようになるまでに、私たちにはふたつのきっかけがありました。ひとつは東日本大震災。もうひとつは、デザイン業務のすべてを依存していたある社員の突然の離職でした。

私たちはいわゆるデザインの受託制作会社。

場所は関西にあるため、震災の被害こそなかったものの、防災のデザインに関わる事業を行なっていたことから震災でも特に被害の大きかった宮城県石巻市へ代表取締役の豊田が経営者仲間と復興事業を目的に通うなどして、石巻の経営者とつながりができました。そこで豊田は、誤解を恐れずに言えば、大変な感銘を受けたのでした。

豊田「人には本来持っているすごい力があると感じました。私が出会った石巻の経営者はとても復興に対して意欲的でした。
そのなかで一番印象に残ったのが、笑顔。笑顔と笑顔でつながると、希望が芽生え、希望のあるもの同士が集まると、さらに絆になっていくのを目の当たりにしたんです」

それから、何のために働いているのか、何のために生きているのかと何度も社内で話し合いをしました。震災が、働き方を見直すきっかけとなったのです。

もうひとつのきっかけが、震災4年後に起きました。ある社員の退職をきっかけに、仕事の多くが属人的になっていたことに気がついたのでした。

社員のスキルやセンスに、デザイン業務のすべてを依存していた。それが、組織のあり方を見直す契機となったのです。

豊田「震災は心の変化でしたが、その社員の退職は、現実に逃げられない、自分がつくり出した事実に直面し、痛感した出来事でした。このままではいけない、動かないと、とお尻に火がつきましたね」

これまでのやり方を根本から変えるーーそのために、まずはビジョンと経営理念を根本から考え直していきました。その際に豊田が導き出したのが「ワクワクゾクゾクするものである必要がある」ということでした。

何度も個人面談で話し合って働き方を考え直した「主人公誕生プロジェクト」

▲はじめは社内向けの個人面談だったものが、そのエッセンスを研修にして「主人公誕生プロジェクト」に
豊田「震災では、希望を持つと絆が育まれるのを目の当たりにしました。
私たちの希望は何かと考えたときに、それは、デザインに携わる企業としてワクワクゾクゾクするものをつくることだろうと。気持ちが高揚して、働きがいや、やりがいにつながる源であったらいいな、と思いました」

しかし、社内の変革にあたり、課題は山積みでした。たとえばデザイン業務は、デザイナーの納得感に際限がなく、非常に属人的な仕事です。天井なしだった業務時間など、働き方を根本から見直す必要があったのです。

そこでデザイナーは内制だけではなく、社外のフリーランスの方とも連携を強化し、特定の人物だけに依存しない体制を整えました。

そうすれば、案件によって割り振り先を変えることもできますし、社員は、より自分の個性を活かせる仕事に集中できると考えたのです。

また、“やらされ感のある仕事”をどうワクワクゾクゾクするものにできるか、試行錯誤をくり返していきました。まずはじめたのは、オルウィン自社の名刺づくりから。

新しくつくった経営理念は、震災のときに感じたことを具現化し「笑顔になり、希望を持ち、絆を育み合う事業を通じて、幸福な社会を共に創り続ける」としました。

その理念を分かりやすく表現体現できるものはないかと考えたときに出てきたアイデアが、名刺に社員それぞれの似顔絵を入れることだったのです。

名刺は出会いの場面で使われ、自分のことを伝える手段でもあります。名刺交換をして相手に自己紹介をするときに、自分らしさをより出せるようにするためにはどうしたらいいのか。

それを見出すために、社員一人ひとりと個人面談を行いました。「あなたの強みは?」「この仕事をやっている目的は?」「どこにやりがいがあるのか?」などです。

これを「主人公誕生プロジェクト」と名付けました。次第に、人は人にいやされ、磨かれ、勇気づけられるということを理解体感していって、チームで取り組む研修も発展し、バリエーションも増やしていきました。

こうしてはじめは社内向けの個人面談だったものが、そのエッセンスを研修にして、のちに社外のクライアントにも評価され、研修として取り入れていただけるようなものとしてカタチになっていきます。

社員と向き合うことで自社にとっての“ワクワクゾクゾクするもの”が徐々に見えてくることになります。

組織をデザインしていく苦しみから生まれた「究極の組織プロジェクト」

▲事業指針を言葉だけではなく、イラストで可視化。オルウィン号という、航海にたとえた事業指針イラストを制作

成長発展や目的達成を実感していただけるクライアント向けの研修として、2014年から開始したのが「究極の組織プロジェクト」でした。

これを機に、これまでのデザイン制作会社から、社外のクライアントに対して研修を通じて、企業の理念やビジョン策定からお手伝いする“組織をデザインする会社”へと変わっていったのです。

たとえば、クライアント企業の名刺を受託制作する場合。研修を通じて、その企業が本当に伝えたいことを磨き上げたうえで、最終的に名刺のデザインを起こす、というプロセスをとっているのです。

研修プログラムを主体とする企業へと生まれ変わるにあたり、当然、社員の反発や離反もありました。

しかし、デザイン会社だけでは、属人的な働き方は免れられないとの考えが豊田にはありました。“多様性を担保し、それぞれが主人公になれる会社にしたい”

理解を得るのに何度もコミュニケーションを重ね、ようやく今あるカタチに落ち着いてきました。その生みの苦しみは、究極の組織プロジェクトの研修内容そのものにも反映されています。

こうしてデザイン事業の定義そのものを見直し、研修プログラム事業へと舵をきってチャレンジしていくにあたり、私たちは全スタッフとふたつのことを行ないました。

ひとつ目は、経営理念の理解と腹落ち度を深めること。ふたつ目は、事業指針を言葉だけではなく、イラストで可視化すること。「オルウィン号」という、航海にたとえた事業指針イラストを制作したことで、属人的な組織からチーム組織に変化していく第1歩となったのです。

文字のみの指針のときはまったく浸透しませんでしたが、可視化をすることで、不思議とチームワークの意識が芽生え、組織風土が変化していき、生産性が上がっていきました。

研修事業を開始してから1年後の2015年には「主人公100億人プロジェクト」を発足し、それをビジョンとして採用しました。

ビジョンをベースに話ができ、みんなが主体性を発揮できるように

▲「主人公100億人プロジェクト」に取り組むメンバー達
豊田「特定の誰かだけが主人公ではなくて、全員が主人公で輝けるように、との想いからはじめたのが“主人公100億人プロジェクト”です。
このプロジェクトのはじまりは、勉強会のチームを社外の経営者と一緒に組んだことです。それぞれの会社での取り組みを応援したりサポートしたりということを通じて、お互いに気づきを得る勉強会です。
そこに私たちの会社の、主要メンバーを入れてプロジェクトを行なっていました。
これからAI化していき、人口も100億人規模になる世の中で、より人間らしいコミュニケーション力やコミュニティが重要になるとの考えが「主人公100億人プロジェクト」には反映されています。
人に焦点を当て、ワクワクゾクゾクした人が、主人公として働けるように、との願いを込めたビジョンです」

2018年現在、主人公100億人プロジェクトを進めてから約3年。フリーランスとの連携をさらに強化し、業務効率化を測ることで全体の残業時間は約3分の1になりました。

また、もっとも大きく変わったのが、社員同士の会話が変わった点にあります。何かの案件を進める際も、ビジョンから話がはじまる。

また、責任逃れではなく、自分のやりたいことは責任をもって自ら引き受けていくようになり、建設的な打ち合わせが多くなりました。

自分の役割を明確にし、やらされ仕事が減り、生産性が上がり、経営理念やビジョンを全員が言える状態になったのです。

「これまでは、チラシの制作でクライアントに喜んでいただければ満足だったものが、今ではさらに、クライアントの活性や成長、達成に貢献できていることにやりがいを感じる」こういった声も、社員からあがるようになりました。

こうした取り組みにより、関わるすべてのフリーランスやクライアントなど、関係者の人生が豊かになり、スタッフが存在意義を感じ、役割を全うすることに貢献している実感を持てるようになりました。

これからも、「主人公100億人プロジェクト」というビジョンを通じて、すべての人が全力を発揮できる社会づくりに貢献してまいります。

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