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これからの日本をつくる"働き方"のストーリー

アツい仲間と会社をより良くし、社会をつくる――有志コミュニティ「One Panasonic」の挑戦

パナソニック株式会社
世界27万人の社員を持ち、日本を代表する企業となったパナソニック。当社で今、若手主導の有機的なコミュニティが生まれています。大企業ならではの多様な人材との交流を生み出す「One Panasonic」は、若手社員の有志によって結成。豊富なリソースを生かし、経営層を巻き込みながら、新たな企業風土や事業創出につなげる若者のアツい想いをお届けします。

発足のきっかけは、ひとりのアツい気持ちから……

▲東京の幹事・本田慎二郎(左)、発起人の濱松誠(中央)、名古屋の幹事・濱本隆太(右)

One Panasonicは社員のモチベーションの向上、知識・視野拡大、人脈形成などを目的とした有志の会です。2012年に発足し、イベントや懇親会にはこれまでに約3,000人の社員が参加。志を高め合い、社内外にさまざまな影響を及ぼしてきました。

One Panasonicのきっかけをつくったのは、2006年入社の濱松誠。当時パナソニックに内定した濱松は、入社までにもっと社員と関わりたいという思いから、内定者と社員との交流会をはじめました。

濱松 「当時、ITベンチャーの社長が内定者を会食に連れていっている様子を見て、うちの会社でも社員や経営層とのこういう交流がもっとあればいいのにと感じたところからスタートしました」

翌年、翌々年と続けていくうちに、参加する社員の数も増加。徐々に活動を外に発信していくようになって、わかったこともありました。

濱松 「パナソニックは、当時グローバル連結で20~30数万人、国内でも約10万人の従業員がいて、多岐にわたる事業を行っています。数人、十数人に話を聞いても、それだけの情報ではとても足りません。どうしても会社がやっていることを内定者が十分には理解できない可能性があったんです」

このような動機で内定者懇親会、若手交流会を続けて6年。2012年2月に、濱松が当時の社長であった大坪に⼀通のメールを送りました。

「会社を良くしたいと思っている有志の若手社員が、組織の壁を越え集まっている。5分だけでもいいから一度話をしていただけないか」

その思いが通じ、会場に来た大坪は、参加していた若手に対して、彼自身のOne Panasonicに対する考えを話してくれて、5分-10分程度と予想していたが、質疑応答や懇親も入れると、なんと5時間。そもそもOne Panasonicとは、2011年にパナソニック、パナソニック電工、三洋電機がひとつとなったときにスローガンとして掲げられていた言葉だったのです。

ここから、「One Panasonic」という団体としての活動がはじまりました。

若手と経営層のつながりから、全社的な交流、そして社外へ

▲月に1度、濱松を中心に代表者たちが集まる

特に大企業では、縦割り組織のため、社内コミュニケーションの範囲は狭く、人によっては5~10人のチーム内で仕事が完結してしまうことも多いのが現状。One Panasonic東京の幹事、本田慎二郎も、そんな交流の狭さを感じていました。

本田 「特に以前は基本的に事業部内で解決してしまうから、外に出る必要性があまりないと感じる人も多かったのではないかと思います。それは効率的ではあるんですが、みんなオペレーションが単調になってしまって、新しいことを求める視点がなくなってしまいますよね」

濱松 「だからOne Panasonicとして提供しているのは、思いを持った人だったらいつでも、東京や大阪、福岡、名古屋に来てくれたら50人〜100人くらいに会えるという機会です。最近では、採用部を通して内定者にそういう機会があることを伝えてもらえるようになりました」

前年は内定者として参加した社員が、翌年にイベントの幹事となるというサイクルで多くの人材を巻き込み、参加者は年々増加。組織の壁を越えてイベントを行うことで、「タテ・ヨコ・ナナメの交流」を推進しています。

タテは経営層と現場の若手社員のつながり、ヨコはカンパニーや事業部、職種を超えた同世代とのつながり、ナナメは、ミドルマネジメント層と若手のつながりです。タテとヨコに関しては、発足当初から心がけてきたことでしたが、ナナメのつながりは、続けていく中で重視するようになってきました。

濱松 「35歳から45歳くらいの面白い先輩はたくさんいるのに、部署が多すぎるために出会えないことが多かったんです。そこで『ようこそ先輩』という取り組みを通して、キャリアや失敗談を語ってもらう機会をつくりました」

このような施策によって、若手と経営層だけでなく、全社員を対象とした有志のイベントができ、人脈の形成や視野の拡大を感じている社員もいます。One Panasonic名古屋の幹事、濱本隆太もそのひとり。

濱本 「普段話さない人と繋がろうとすると抵抗があったり、時間がかかったりしますけど、それを取りはらえるのがOne Panasonicの活動だと思います。ここをきっかけに仕事がぐっと広がることも実際にあるので、そういうところがメリットですね」

また、パナソニック卒業生との交流の機会を創出したり、他社の若手社員とのコミュニティ「One JAPAN」を立ち上げたりと、外部の巻き込みも活発に行っています。

One Panasonicの活動がもたらした成果

▲「CEATEC」での活動

One Panasonicが活動するうえで、パナソニックという企業が持っている人材、技術、ブランド、歴史、信頼、お金という6つの豊富な資産は大きなメリットになっています。

一方で、デメリットは、組織として巨大であるために意思決定はどうしても重層構造になる点や、人が多い分人件費もかかってくる点。さらに、多様な考えを持つ人の集まりでもあるため、One Panasonicに対してもさまざまな意見があるのは事実です。

濱松 「『本業をしっかりするように』とか、『ガス抜きになってはいけない』など、色々な指摘をいただくこともあります。僕もこの活動のすべてが正解だとは思っていませんが、少なくとも幹事は、これが『ガス抜きの集団ではない』というところにプライドを持っていますし、今後の会社の経営や活動につながるものだと考えています」

このような強い内発的動機をベースにして、幹事メンバーは精力的に活動を続けてきました。その結果として、2つの大きな変化をもたらしたと、濱松は分析しています。

濱松 「ひとつは、やっぱり数百人レベルで社員のモチベーションが向上したこと。そして、他社や他部門といった“外”への広がりがあるということです」

こうした活動は、社会や会社を良くしたいというアツい気持ちを共有することでもあるため、ロボットを作りたいという有志が交流会を通じて出会い、知識を持ち寄ってプロトタイピングを行う「ロボット部」ができたり、自主的にビジネススクールに通いはじめる者がいたりと、自主的な活動を促進することにもつながっています。

ガード下での愚痴ではなく、会社の未来を真剣に議論できる仲間

最近では、社内外でOne Panasonicの認知が広がり、内定者の中でも「One Panasonicがあるから入社した」という人も出てくるほど、影響力が増しています。

濱松 「パナソニックは歴史やブランド力を持っている分、今の学生には『考え方や組織風土が少し古い会社』と思われてしまう部分があるように感じます。そういう意味ではすべてとは言いませんが、One Panasonicが思いを持った若者への新たなブランディングとして貢献していると思いますね」

代表の濱松をはじめ、幹事メンバーたちは、この活動を通じて同じようにアツい想いを持てる仲間ができたことに、とても意義を感じています。

本田 「会社に対してガード下で愚痴を言うんじゃなく、アツい想いを持って同じ目線で真剣に議論できるメンバーはなかなか得られるものではありません。このメンバーと会えたことにすごく感謝していますし、この関係性は一生続くと思っています」

濱本 「仕事に対する悩みを抱えていたとき、One Panasonic東京のイベントに参加したんです。そこで自分が今後やりたい仕事を見つけることができ、自分自身のモチベーションを取り戻すことができました。One Panasonicの幹事としての活動をはじめたら、そんな私の姿を見て、一度退社した同期が戻ってきてくれるという出来事もありました。そういうことも、さらにモチベーションを高めるきっかけになっています。」

今後は、これまでやってきたことを膨らませながら、新しいことにもチャレンジしていきたいと思っています。「One Panasonicをきっかけとした共創事例を増やすこと」や「One Panasonicへの参加者が社員の20%に達するまで拡大すること」、「幹事からマネジメント層へと人材を輩出すること」などを当面の目標にしていますが、それらは遠くない未来に実現されると信じています。

最終的に見据えるのは、人と組織が活性化してより良い社会をつくること。その先陣を切るという強い意思を一人ひとりが持ちながら、One Panasonicは挑戦を続けていきます。

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