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これからの日本をつくる"働き方"のストーリー

誰でも使える! 他人からの視点を取り入れ、自分の目標をかなえる「タニモク」の可能性

PERSOLグループ
2017年に社名を変え「パーソルキャリア」になった当社で、ワークショップ「タニモク」が始動しました。他人からのアドバイスでブレイクスルーをはかるこの活動は、2019年現在多くの企業・学校で導入されています。なぜこれほどの広がりを見せたのか、プロジェクトリーダーの三石原士がその軌跡をご紹介します。

人生100年時代。ワークショップで新しいはたらき方のヒントを得る

「はたらいて、笑おう。」これはパーソルグループが掲げるブランドビジョンです。このグループビジョン実現に向けて、パーソルキャリアは ー人々に「はたらく」を自分のものにする力を-をミッションとしてさまざまな取り組みを行っています。人生100年時代と言われる昨今、人材サービスを展開する当社は、年齢に関係なく「前向きに楽しくはたらける人」を増やす使命があると考えています。

しかし、米国ギャラップ社が実施した従業員のエンゲージメント調査によると、日本は「熱意あふれる社員」の割合はなんと6%。139カ国中132位と最下位レベルでした。

個人の働く年数が長くなっている今、すべての人にこれまでにないアプローチで「はたらく」を支援していきたい。オウンドメディアの運用に携わっていた編集長の三石は、そう考えていました。

そんなとき、三石はメディアコンテンツのひとつとして進めていた「振り返り会」に、大きなヒントがあることに気づきます。

三石 「振り返り会では 4人 1組になり、1年間の仕事の振り返りをします。ただあったことを発表するのではなく、成果や失敗に対し、互いが質問やアドバイスをして次の年に生かすという濃厚な反省会をするんです。
この内容を Web上で無料公開したところすごく拡散されて、 SNSで 15,000以上の『いいね!』がつきました。その反響を見て、『前段階の目標設定に関する取り組みもあったらいいんじゃないか』と思うようになったんです」

もともと執筆・編集に携わっていた三石は、コンテンツのアイデアをよく周囲に相談していました。この当たり前にしていたことを、目標設定のときにも活用できたらいいんじゃないかと考えます。

さらにWeb上の拡散を機に、「ワークショップのニーズの高さ」に気づいたのです。そして、特別なファシリテーションのスキルがなくても、誰もが簡単にワークショップを開催できるメソッドを公開してみたらどうかと三石は発想します。こうして、振り返り会を進化させた、目標をたてるためのワークショップが誕生しました。

他人からのアドバイスで、新たな思考パターンをゲットする

ワークショップには「他人に目標をたててもらう」を略し「タニモク」と名付けました。「タニモク」は、利害関係のない人(=他人)で3~4人1組のグループとなり、1人(当事者)が自分の現状を他の3人(または2人)に説明します。そして他の3人(または2人)は、自分がその人だったら何をするかを考えて、目標を提案する──この30分のセッションをグループの人数分行っていくという、3時間程度のワークショップです。

三石 「この『タニモク』の β版が生まれたのが 2017年。ちょうどパーソルキャリアに社名変更した時期でした。転職のマッチングのみならず、『はたらくことを応援する』というブランディングも進めていました。
会社を世の中に広めるため、かつ今後の目指す姿をかなえるために、『タニモク』は有効活用できるのではないかと考えます。そこで社内に提案したところ、2018年に無事にプロジェクトとして始動できることに。広報メンバーも加わり、『タニモク』チームが結成されました」

社外の方にもお声掛けをして、毎月一度の定期開催をスタートさせました。自分の状況を絵で伝える、目標を決めたら次のアクションまでワークショップの中で決めるなど、開催する中で改善も進んでいきます。

この「他人に目標をたててもらう」ことによる効果は、ふたつあります。まず自分ひとりで課題に対して悩んでいると、いつも同じ思考パターンに陥りがちです。しかし、他人の脳を借りることで思考パターンを変え、新たな視点を得ることができます。ふたつ目に、リスクを避け無難な範囲で解決策を見いだすという事態を防ぎます。他人から挑戦的な発想をもらい、新たなやり方を取り入れてみようと思えるのです。

三石 「『タニモク』の効果を誰よりも信じているのが、私自身です。以前は人前で話すことに苦手意識がありました。しかし『タニモク』で、『私が三石さんだったら『タニモク』を毎月行い、知見を増やし、ファシリテーターとして世の中に出ていくことを目標にする』という意見をいただいたんです。
当初は半信半疑でしたが、思い切って行動に移しました。その結果、開催するたびに学びを得て、ファシリテーターとして自信をつけることができたんです。その後はレゴ ®シリアス ®プレイの資格を取得するなど、イベントコミュニティを運営・企画できるマーケターとしてキャリアの幅が大きく広がりました」

広報メンバーによるPR活動も進み、短期間で「タニモク」はどんどん認知されていくようになりました。

「タニモク」の後押しで、キャリアアドバイザーがスナックのママに

「タニモク」がとくに注目を集めるようになったのは、2019年1月に行われた「『タニモク』100人会」がきっかけでした。参加者の100名に加え、多くのメディアの方にもお集まりいただきました。取材に来た方も実際に参加し、リアルな「タニモク」の様子を取り上げていただけることに。

それ以降も、「タニモク」は幾度となく開催されました。ワーキングママ、内定者、起業家、新入社員など、同じカテゴリーの人たちが集まるだけでなく、バックグラウンドがまったく異なる人たちの「タニモク」が開催されることも。

そんな「タニモク」に参加し、人生が動き出した人も少なくありません。参加者からは、「人のことも、自分のことのように考えられてアイデアがどんどん出てきた」「ちゅうちょしていたことに対してズバッとやれと言われたので、覚悟が決まりました!」といった感想をいただいています。

三石 「あるキャリアアドバイザーの女性は、 40代~ 50代の方々からキャリアについての悩みを聞いていました。もっと心を開ける場を提供したいと考え、『タニモク』の後押しを受けてスナックを開店。SNSや口コミにより人気が出て、昼にも関わらず連日満員になったんです。各メディアに取り上げられ、その女性は今ではコメンテーターなども務めています。
また 50代のエンジニアは、職場で若手エンジニアから個別に相談をたくさん受けていました。『タニモク』に参加し、若手の教育を目的としたコミュニティを社内につくってはどうかという案が挙がり、実行。エンジニアの意見交換も活発になり、今では社内で組織化することを検討しているようです」

さらに「タニモク」を加速させるため、アンバサダー制度を導入しました。これは「タニモク」に共感してくれた人をアンバサダーとして認定し、各地で活躍していただく制度です。現在は金融、商社、ITなどさまざまな分野の方たちがアンバザダーとして活動し、各地でコミュニティが生まれています。

目標設定で終わらない。達成まで導く「タニモク」の進化版も開発予定

「タニモク」を通して「働き方が変わった」という参加者の声が寄せられただけでなく、企業や個人からの問い合わせが急増しました。多数の大手企業や官公庁などで導入され、研修として採用している企業もあり、かなりの高評価を得ています。

三石 「『タニモク』に参加した高校の先生から『学校教育にも取り入れたい』という話をいただいたことで、いろいろな人・場面で必要とされていると実感しています。すでに都内の高校では授業として導入され、2019年内には大学のキャリア教育への講座導入に向けて動いているんです」

現在は「タニモク」をした後の振り返りに注目したワークショップも開発中です。目標設定のみならず、達成まで後押しできるような進化版を生み出したいと考えています。

三石 「自己肯定感を高めるためには、自分で意思決定をしたという体感がとても大切です。その体感は権力やお金を得ることよりも、自己肯定感の向上に与するという大学の研究結果も出ています。『タニモク』で選択肢を広げ、選び、行動を決定する。その行動を、仲間が後押しする。これによる効果を可視化させ、取り組みのアプローチ方法を考えたいですね」

自分のことは、自分だけで考えていてもわからない。思い切って人の力を借りてみると、思いもよらない可能性と選択肢に気づけます。自分の可能性を信じて行動し、1年で劇的に変わっている方のお話を当社はたくさん聞くようになりました。

「タニモク」が誰かの可能性を広げるきっかけになるよう、今後もその機会づくりをしていきたいと思っています。

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