働き方を変えた「月曜午前休」──互い助け合いの場を創造するオウケイウェイヴの挑戦
気になったら即実践へ。「月曜午前休」を決めた “人”をおもんぱかる社風
企業にはミッションがあります。オウケイウェイヴは「互い助け合いの場の創造を通して、物心両面の幸福を実現し、世界の発展に寄与する」というミッションを掲げ、約150名の全社員が協力して支え合う場をつくっています。
実際に、日本最大級のQ&Aサイト「OKWAVE」をはじめ、特許を持つFAQシステムや2019年時点で力を入れているFinTechによる顧客向けソリューションを提供してきました。ひとえに、社員の功績です。
「Positive(積極性)」「 Possible(可能性)」「Challenge(挑戦)」「for Love(愛)」という4つの価値観に集い、助け合う社員の一人ひとりがオウケイウェイヴの顔とも言えます。そんな社員が快適に働ける環境を整えることを会社は仕事のひとつにしてきました。
会長の兼元謙任自身、率先して、働く環境の改善に務めています。たとえば、座り仕事の多い社員が利用できるマッサージチェアを設置したり、一息つく時間を贈ることも意図のひとつとしてコーヒーメーカーやバナナを支給したり。働きやすい環境を目指し、社員の様子に気を配ることはオウケイウェイヴの常識です。
ある月曜の朝も、社員の様子が目に付きました。全社集会に眠たそうな顔がちらほらと……。ちょうどブルーマンデー症候群といった月曜午前出勤の社会課題に注目が集まる時期です。その社会課題に関心があった兼元は、社員の健康を考えて、ある決断に至ります。「いっそ、月曜午前休にしよう」と。
事前に相談を受けていた経営管理本部人事部長代理の山本卓也と経営企画本部長の廣川佳嗣は、あっけにとられた様子をこう振り返ります。
山本 「兼元は全社集会の場所で突然発表しました。みんなポカーンとしてましたよ。コーヒーメーカーのときに拍手が起きた様子とはまったく異なり、イメージがつかないといった雰囲気です」
廣川 「私たちは、仮に月曜午前を休みにしても、業務上出勤する社員はいるだろうと思って企画にまとめたんですが、『そうじゃない。絶対に休む制度にする』と兼元に怒られましたね」
顧客あってのビジネスで、社会一般が働く時間帯を休日に変えられるのか。そして、週3時間・月12時間の休日分、他の勤務日に残業が増えてしまわないか。山本、廣川を含む月曜午前休チームには、調べるべき課題がたくさん生まれました。
定例、顧客対応、雇用契約。勤務体系を変えるときの“人”を想う調査項目
事業成長を左右するひとつが社員の働きぶりです。残した功績が大きいほど習慣になった業務フローの価値は高まるでしょう。それを変えることはリスクをはらむことなのかもしれません。まして、社会一般が働く月曜午前を休みにしたら、どんなリスクが生まれてしまうのか。
廣川 「月曜午前休をネガティブに受け止めているようでは、何も進めていけません。1度、企画を出して、兼元の思いに私たちが腹落ちできたことは、調査・制度化を進める上で重要でした」
社員がより働きやすい環境を築くこと。それが、オウケイウェイヴの未来に必要なこと。深い理解を携えて、月曜午前休チームは制度化に向けた調査を始めます。
そもそもオウケイウェイヴにとって、午前という時間帯にはどんな意味があるのでしょう。全社集会や部長職以上が参加する事業進捗会議といった重要な定例会議があります。そして、OKWAVEのユーザー対応や取引先企業への営業など顧客対応も日常です。
また、月曜午前分の勤務時間を休みにすると、社員の給料に影響は出るのかも心配事。月給や時間給など雇用契約の違いによって月曜午前休で不利益を被る社員が生まれてはいけません。「月曜午前休」という課題に対し、「定例会議」「顧客対応」「雇用契約」といったさらに詳細な課題を設けて調査に入りました。
山本 「各部長へのヒアリングを進め、月曜午前の業務内容を泥臭く調べました。ユーザーや取引先企業に、不安を抱かせることはないか各担当者に教えてもらい、月曜午前を休暇扱いにする場合の法務や契約の変化も洗い出したんです」
結果は問題なし。月曜午前休はできるとわかりましたが、一番の懸念点は残ります。月12時間分の休日が他の勤務日の残業を増やしてしまわないか、実施して初めてわかることです。やってみるしかありません。
山本 「でも、これで固定という始め方にはしないんです。まずつくってみて、より良くしていくことはオウケイウェイヴの全取り組みに共通することですから」
社員満足度を高めよう。ひとつの目標に部門を超えて臨んだ前向きな思考
課題を行動できる水準まで細分化する。クリエイティブワークに通じるアプローチで「月曜午前休」の完成を目指し、オウケイウェイヴは部門を超えた協力をはじめます。
定例会議の曜日をズラすことは関係部門や社員ごとに週単位の業務リズムを調整してもらうことで対応すると決めました。顧客対応にはユーザーや取引先企業の不安を拭うために必要最小限で出勤することにし、雇用契約では月曜午前休の実施後も勤務扱いにする給与計算に変えて、勤怠管理と分けることにします。
3つに共通した重要なことは思考の改善です。従来の働く習慣を変えることに係る負荷やリスクではなく、月曜午前休チームと同じように制度化した後のメリットに腹落ちすることを全社で目指しました。
山本 「定例会議については各部長やマネージャーと面接する場を数多く設けました。ユーザーサポートや法人営業などの担当者とも制度後の働き方がより良くなる具体例を共有しています」
廣川 「特に法人営業では月曜午前休をポジティブに受け止めていないと、取引先企業に不安を感じさせることになってしまう。結果、取引先に『月曜午前休いいな』と言ってもらえてよかったです」
合わせて、月12時間分の休日が残業時間を増やしてしまわないように、細かな業務改善にも取り組みました。業務負担になる連絡や資料探しの時間を短縮するため、社内にオウケイウェイヴのFAQシステムをより有効活用できる状態で導入。資料のペーパレス化も促進します。
あとは月曜午前休の開始を残すのみ。社員にどんなメリットが生まれたのか。そして、月12時間分の休日は残業時間にどんな影響を及ぼすのか。その答えを知るときです。
9時間の勤務時間短縮を実現。月曜午前休で芽生えた時間への意識と価値
月曜午前の勤務はわずか3時間。その3時間で一体何ができるでしょう? オウケイウェイヴの場合、まず行政の手続きに行く社員が増えました。平日勤務では休暇申請をしないといけなかった役所の手続きにいきやすくなったようです。
また、社内のアートサークルは美術館に行く時間として、月曜午前休を使うようになりました。なんでも、美術館は月曜午前が空いていて、鑑賞しやすいのだとか。会社としても、新鮮なクリエイティブに触れる機会がつくられていることに嬉しく思います。
山本 「月曜午前休ができたことで、時間の使い方を意識するようになりました。休日をどう過ごすのか、そのために勤務時間でどう働くのか。自分たちで自分たちの時間をより良く過ごしていくようになったんです」
時間への意識がより強くなったことも功を奏して、月12時間分の休日による残業時間の増加も、最小限に抑えることができています。月3時間のみ、業務上どうしても働かなければいけないとわかった時間は他の勤務日にならしました。
全社で月曜午前休をつくった結果、ポジティブシンキングで描いたイメージを現実のメリットに変えることができたのは、全社で協力して制度化に取り組んだ結果です。もう月曜午前休のないオウケイウェイヴをイメージできないほど、社員はこの働き方に満足しています。
廣川 「これは、オウケイウェイヴ自体が互い助け合いの場になっている価値ですよね」
2019年現在、社会で働き方が問われる場面が増えています。オウケイウェイヴの関わるテクノロジー業界も、IoTやブロックチェーンといった新潮流に合わせて、事業や社員に変化が必要になっています。企業や業界の成長過程で習慣や常識になったことも変えていける経験は、将来にも生きてくる糧になるでしょう。
オウケイウェイヴはこれからも社員満足度を高める働く環境を整えていきます。月曜午前休に加えて、両親の誕生日休暇も始めました。育ててくれた両親への感謝を伝える社員も増えています。社員の人生が豊かになることは、会社にとっても良い結果をもたらすと、実感する日々です。