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入社後すぐのロケットスタートを支援したい、「LiBzAcademy」にかけた想い

株式会社LiB
創業間もないベンチャー企業では、社員の多くが中途入社者です。バックグラウンドが異なる中でも、のびのびと安心して活躍してもらうには会社の支援として何が必要なのか。株式会社LiBで人事部長を務める品川皓亮が、新しく会社に加わるメンバーのためにつくった「LiBzAcademy」プログラムに込めた想いを語ります。

組織の文化を知らないことが行動や活躍の妨げになっていた

▲全社総会での集合写真の様子

「生きるをもっとポジティブに」をミッションに、「女性のライフキャリアを豊かにするしくみをつくる」をビジョンに掲げ、女性を対象にしたキャリア支援事業を展開しているLiBが誕生したのは、2014年4月のこと。創業から6年目のベンチャー企業です。

ベンチャー企業の場合、社員に即戦力が求められることから中途入社者が占める割合が多くなりますが、LiBでもさまざまなバックグラウンドを持つ中途社員がメンバーの大半を占めています。

品川 「わたしは創業から 3年目のタイミングで LiBに入りましたが、当時から多くのメンバーが毎月入社していました。ただそのころは、せっかく高い熱量を持って入社しても、始めは企業カルチャーの違いに戸惑い、安定してポテンシャルを発揮できていない社員が多いという状況でした。事業拡大のフェーズだったので、新入社員の早期の活躍・長期の活躍は事業成長に直結すると考え、この課題をなんとかしなければ、と考えました」

のびのびと安心して自分の持ち味を発揮してもらうにはどうすればいいだろうか──この課題に対して品川は、新入社員が前職でのやり方からうまく切り替えができなかったり、会社側も、会社の歴史や価値観を効果的に共有していなかったりすることが最大の原因ではないかと考えました。

それまで、新入社員への教育は現場のOJTが中心。組織の文化や会社の事業全体を理解する機会がなかったのです。

品川 「せっかく熱い想いを持って入社してきているのに、会社の文化や価値観、コミュニケーションの方法などがわからないから萎縮してしまう。どういう行動やスタンスが LiBでは良しとされるのかを明確にし、現場での OJTとは違った角度から“伝える”場を設ける必要があったのです」

そこで、新規採用した人材の定着から活躍までの一連の流れを設計するための教育機関として、『LiBzAcademy』を2018年7月に創設。品川自らが校長となり、新入社員を対象にしたプログラムが始まったのです。

「ラポール」と「会社への深い理解」という2本の軸

▲ラポールセッションの考え方

LiBzAcademyがビジョンとして掲げたのは「新しい仲間のロケットスタートを支援する」というものでした。入社したばかりのメンバーが早い段階で活躍の機会を得て、なおかつ長期に安定して活躍できるようにしてもらおう、というオンボーディングの考え方です。

プログラムの期間は1カ月半程度で、「ラポール」と「会社への深い理解」という2軸からなっています。

品川 「会社の全体像、創業の経緯や歴史、会社が大切にしている価値観、諸々のルールなどを知ってもらう。また、各事業部が今取り組んでいることを俯瞰的に把握する、というのが会社への理解を深めるセクションです」

では、「ラポール」のセクションでは何を行うのでしょうか。

品川 「それまでの価値観を解かし( Unfreeze(解凍))、 Change(変化)させ、 Refreeze(再凍結)するという過程をとったプログラムです。これまで積み上げてきた価値観を、いったん溶かして、その後に LiBの価値観を伝えていく、ということですね」

具体的には、同じ月に入社するメンバー数名でグループをつくり、これまでの人生のモチベーションの変遷、LiBへの入社を決めた理由、つらいときに支えとなったもの、前職で評価されていたことなど、テーマに沿って数分考え、それを付箋に書き出し、他のメンバーに共有していきます。最初のうちは初対面に近い状態のため、ぎこちない空気が流れていても、何度か繰り返すうちに場の空気が温まります。

また、「360度『仲間発見』」と名付けたセクションの締めの部分では、お互いに「あなたの良いところはここ」というイメージを発表し合います。

これにより、同期入社の人の過去や価値観を知り、自分について伝えることで会社や社員との信頼関係を築き、「ここで自分の力を発揮できそうだ」という自信を持つことができるようになります。

品川 「前職で何をしていたのか、この会社に入って何をしたいと思っているのかということを会話しているうちに、心がほぐれていく。一度それまでの価値観を Unfreeze(解凍)してから、 LiBの持つ価値観や文化などを伝える『会社のことを深く知る』プログラムに入るわけです。自分の価値観がどのようなものなのかを見つめ直した後の方が、新しい価値観をスムーズに受け入れやすくなります」

変化を促す前に「解かす」ことの重要性を認識

▲LiBzAcademyのセッションの様子

LiBzAcademyは設立当初、どのようなことを伝えるべきか要素決めに苦戦していました。

品川 「組織内にはさまざまな事業部や職種があり、業務内容もさまざま。そうすると、どのような人が活躍するのか、どういう要素があれば活躍できるのかということも異なってくる。その要素を決定するのに時間がかかりました」

また、LiBzAcademyの期間中、回数は多くないものの、配属先から新入社員を呼び出している間は業務ができないことから、LiBzAcademyのために時間を取ることで、部署内にどういうメリットがあるのかを感じてもらえるよう説得もしました。

開講後には別の課題が見つかったんです。今でこそ、約1カ月半で少しずつ文化を伝えているLiBzAcademyですが、その課題は開講当初のプログラムに起因するものでした。

品川 「 LiBzAcademyを始めた当初は、経営理念の浸透が大切だと考え、入社直後の初週に、『社長の創業の話』『大切にしている経営理念や価値観』などを集中的にインストールするプログラムを組んでいました」

それは「カチカチに固まった土に水をやっているようなもので、伝えたことがすべて流れていってしまうようだった」と品川は振り返ります。

品川 「多くの新入社員は前職でのキャリアを積んだ中途採用メンバーですし、新しい会社への入社直後は誰でも緊張しているもの。まずは土を耕して、水が染み込みやすくする土壌づくりの期間が必要だと感じました。 LiBのことをインストールする前に、それまでの価値観をアンインストールしないといけなかったのです」

すでにできあがった形を変えるには、Unfreezeが必要。プログラムにも変更を加えたことで、大きな効果が見られるようになってきました。

品川 「社内の文化が暗黙知ではなく、明確になったおかげで、新入社員ものびのび活躍できるようになりました。社内で 3つの行動指針を体現し、成果を出しているメンバーを月間で 3名だけ表彰する『月間表彰』があります。入社 1カ月の新入社員がそれを受賞するケースも増えてきたんです。これは、掲げていた『新しい仲間のロケットスタートを支援する』というビジョンを達成できている表れではないかな、と思います」

新入社員目線でのしくみづくり

▲部署を超えてコミュニケーションを取るメンバー

LiBzAcademyを立ち上げてから、品川が痛感していることがあります。

品川 「ベンチャー企業にとって、中途社員の定着や長期活躍は会社の成長を左右する大きなポイントのはず。なのに、それを全て部署に任せてしまう、ということが多く見られます。そのため、もう少し環境が整っていれば活躍できたであろう人が、その力を存分に発揮できないという場面を目にし、彼らの悔しさがわたしの悔しさにもなっていました。
自分も中途社員として、前職との違いから戸惑いを経験していたのに、なぜその教訓を生かせなかったのだろうか、と。
どうすれば新しく迎えたメンバーがのびのびと自分の力を発揮できるか、しくみづくりをしていかないといけない。そしてそのしくみも、入社者の視点に立ってつくっていかないといけない。教育を他人任せ、運任せにしないだけでなく、入社者視点でプログラムをつくるということも大切な要素になってくるんです」

受講した社員からは、「始めに会社の全体像を知ることができたことが安心につながった」「価値観や行動規範を深く学べたおかげで、入ったばかりの職場でもどう振る舞うべきかがわかりやすかった」「社内の暗黙知を知ることができたおかげで、臆せずに行動でき、月間表彰につなげることができた」「配属部署はバラバラでも同期とのつながりが深まるなど、横のつながりも太くなるプログラムだった」という感想も寄せられています。

ただ、品川はこれだけで満足してはいません。

品川 「中途社員が早い段階で活躍し、長期に安定して活躍できるオンボーディング。それこそが会社の成長の鍵だよね、と自信を持って言えるようなしくみづくりをしていきたいですね。
今はまだ LiBのベース部分を理解してもらうということに注力していますが、ひとつの職種で数十人を一気に採用するようになる将来のことも見据え、その業務を覚えることを、現場任せにするのではなく、それもしっかりしくみづくりをしていきたいとも考えています」

「せっかく選んでくれたのだから、そこで自分の能力を解放してほしい」──品川の挑戦はまだまだ続きます。

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