採用に国籍なんて関係ない。社員が自慢したくなる会社へ
「友人や家族に自慢のできる会社」へと歩み出すきっかけとなった大変革
困っている外国人の方々を幸せにしたい──。そんな想いから在留外国人向けのWEBサービスを提供する「YOLO JAPAN」を立ち上げたのは2016年でした。
もとは2004年に英会話サービス事業で創業し、その頃には約2,000名にのぼる生徒数を有する事業へと成長。日々、外国人講師の派遣サービスのために外国人の採用面接をする中で、日本社会の抱えるひとつの課題を目の当たりにします。当時、採用担当として面接を行っていたのが2019年現在も人事部門で働く森山慎也でした。
森山 「当時の在留外国人の日本での仕事といえば、外国語講師ぐらいしかなく、どれだけ優秀で真面目であっても、肌の色や国籍のせいで講師以外の仕事が見つからないという厳しい現実がありました」
困っている外国人を幸せにできずに、経営理念の「幸せを誘う幸せ」はないのではないか。ならば私たちが外国人就労に一石を投じ、日本の労働力不足まで解決しよう──そんな決意を胸にYOLO JAPANが立ち上がったのでした。
しかし、事業の拡大にともない社員・アルバイトともに採用数は増える一方で、退職者数も増えていたことが課題になっていきました。それまで英会話サービスの教育事業1本だったのが、在留外国人向けのさまざまサービスを提供し始め事業分野を拡大しつつあったため、教育に携わりたいという想いで入社した社員のなかには教育に専念したいと転職していく者もいたのです。
森山 「残業時間の多さや新入社員の部署間を超えた連携の取りにくさ、有給取得率の低さなどにも課題感を持っていました。これらも解決し社員数を安定させるためにも、社員が “会社を楽しい ”と思えるように会社に変えたいという想いが強くなりました」
それを機に、YOLOJAPANは「友人や家族に自慢のできる会社」への変革の一歩を踏み出したのです。
延長線上ではおもしろくない。様性を尊重し、幸せの輪がつながるための施策
人にはそれぞれ個性があります。国籍、肌の色、髪型、服装、文化、そして考え方。それら個人の多様性を尊重する企業を目指すためにさまざまな施策を実行していくことを決めました。
また基準のひとつとして意識したのが、「社員をサプライズするような企画」。
森山 「人事スタッフと経営陣で、他社にはなかなかなく『そんな取り組みをしてるんだ』と、社員が羨ましがられるような施策をしようと話しました。いまの規定の延長線上ではなく、できれば “ぶっとんだ ”ものでありたいね、と」
そうして定着した大きな改革が、次の6つの施策です。
1 正社員・アルバイトを含む「外国人の雇用」
2 オフィス、コワーキングスペース、施設内カフェなど気分で選べる「自由な席で仕事」
3 個人の業務効率を向上させるために昼寝を推奨する「仮眠室の導入」
4 8時〜10時から出勤時間を好きに選べる「勤務時間選択性の導入」
5 1時間ごとに有給をる「時間単位での有給取得可能」
6 入社当日から会社全体がわかる「入社時のオリエンテーション」
中でも、特に「外国人の雇用」については取り組み前の不安が大きいものでした。
森山 「採用時に必要となる、就労上のさまざまな手続きはどんなものか、という事務的な不安もありましたし、採用後、仕事に対する文化的な違いから意見の対立はないか。遅刻や欠勤が多いのではないか。コミュニケーションを円滑にとれないのではないか。休憩時間に、日本人スタッフに馴染めず仲間はずれのようになってしまわないか、などいろんなことを考えました」
しかし、それはすべて無用の心配にすぎませんでした。むしろ想定外の良い影響をもたらしてくれたのです。
外国人の雇用が、会社そのものを好転するきっかけに
まず手続き上の不安は、社会保険労務士の手を借りることでクリア。コミュニケーションについても、最初は多少難航しても、時間をかけて説明すれば理解に食い違いはなく、2週間もすればあ・うんの呼吸がとれるようになることがわかりました。
森山 「円滑なコミュニケーションがとれるまで多少時間がかかるのは、日本人の新入社員だって同じです。遅刻などが増えるのでは?と心配していましたが、実際に採用してみると、これも日本人とほとんど変わりがないんですね。
経営理念について説明をして『自分もそういう理念の会社で働きたかった。これからよろしくお願いします』と言われたときは、当たり前のことですが、ああ、同じ人間なんだなと感じました。採用から現在に至るまで、難しいなと頭を悩ませたことは一度も記憶にないくらいです」
現在YOLO JAPANには、オーストラリア、台湾、中国、ベトナムなど、さまざまな国籍の社員がいます。外国人スタッフからの「外国人に説明するなら、こんな風に話した方が理解しやすい」「こういう表現はやめた方がいい」などネイティブだからこそわかるアドバイスは、事業にも役立っています。
そしてなにより変化があったのは、社内の雰囲気でした。
森山 「以前は、みんな淡々と仕事をしていて、電話が鳴るとその応対の声がオフィスに響いてしまうほど静か。真面目に仕事をしている人のそばでは、大きな声をだしにくい。そんな空気をお互いに感じていたのかもしれません。
ところが、外国人はあまり気にせずどんどん大きな声で話します。みんなもそれにつられて、はつらつと話すようになり、オフィスのあちこちで立ち話的に簡単なミーティングを始めたり、逆に会社全体が明るい雰囲気になったんです」
社員一人ひとりはあまり気づいていなくても、こうしたオフィス環境の変化は、働きやすさにもつながっていると森山は考えています。というのも、実は「週1回のノー残業デー」はなかなか定着せず失敗した施策でしたが、いろいろ改善を試みながら、最終的には当初の目標を上回る「毎日をノー残業デー」として定着しました。
成功の、ポイントは“時間管理”です。それまで2〜3時間もかかっていた会議をなくし、会議は30分もしくは1時間と決め、カレンダーで徹底的に管理したのです。
森山 「ダラダラと時間を使わないように時間管理に視点を切り替えて成功しました。でも短時間の会議が成立したのは、オフィスの雰囲気の変化もひとつの要因。会議の場に集まってゼロから始まるのではなく、普段からコミュニケーションを密にとれているので、事前に必要な情報を共有でき、根回しも十分できていたりするんです」
施策を成功させる土壌づくりに、外国人の雇用が大きく貢献していたのです。
大胆に変革しよう!意識を変えて一歩踏み出す勇気が転換点になる
もちろん成功ばかりではありませんでした。「プロジェクトの初期段階では次々と失敗した」と森山は言います。
森山 「スタートした頃も “社員のため ”と考えていたつもりですが、どこか会社都合の視点が抜けきれませんでした。あまり大胆に会社が変わると『不真面目になった』と勘違いして捉えられるかもしれないと危惧して、大きく変化をさせる勇気がなかったんです。
だから少しずつ小さな施策をやっていた。でもまったく変わらない。これではダメだと経営陣と話し、ドーンと大きく変えようと “勇気 ”をもって意識転換をしたんです。そこから成果が出始めました」
外国人採用も、その大きく変わるきっかけのひとつにもなりました。海外は契約社会、かたや日本人は契約より建前に重きを置いたり、行間を読むという傾向もあります。
森山 「でも、そんな文化的な前提はいったん忘れ、さまざまな視点で制度や環境を整えなければならないなと思いました。それに外国人を採用するんだし、どうせ変えるなら中途半端はやめようと僕らの意識も変えられたんです」
改革がスタートしてから、森山が社員の変化を実感したのは、ようやく1年半ほど経った頃。YOLO JAPANでは毎日朝礼があり、持ち回りで誰かひとりが話をします。
森山 「以前は『ためになることを話さなければ』という気負いがあって、そんな話題ばかりでしたが、プライベートな話が増え始めたんです。自己開示してくれるようになった。『自分の会社のことを話したら羨ましがれられた』というのもあって……。外で会社のことをそんな風に話してくれているんだと、聞いたときはすごく嬉しくなりました。やってきてよかったなと実感した瞬間でした」
日々の会話の中でも、自分の会社を誇りに思っているとわかる言葉を耳にはさむようになってきました。お客様が満足するのと同じように、スタッフも満足できる会社にしたい。日曜日の夕方になると憂鬱になるのではなく、月曜日からの仕事にワクワクする。そんな会社にするためにまだまだ改革は進行中です。
会社側からの発信で、さまざまな改善をおこなってきたYOLO JAPAN。 これからは、日本人・外国人など国籍に関係なく社内からの自発的な発案で、新しい文化やルールをつくっていく社風を目指していきます。