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感謝されている人が報われる社会へ。オウケイウェイヴが生み出す「感謝経済」

株式会社オウケイウェイヴ
  • PERMA高いで賞
仕事にたびたび訪れる感謝のタイミング。たとえば顧客訪問前。必要な資料を忘れてきても、同僚の助けがあれば送ってもらえます。そのとき返す1通の「ありがとう!」に、どれだけの価値があるでしょう?見過ごされてきた感謝に光を当てた結果、思わぬメリットを見つけました。

「ありがとう」でつながるユーザーから始まった感謝の可視化

▲紙で運用されていた時期の「ありがとうカード」(2002年〜2011年ごろ)

助け合える世界は幸せだ。1999年の創業以来、オウケイウェイヴは「互い助け合いの場の創造を通して、物心両面の幸福を実現し、世界の発展に寄与する」ことをミッションに掲げています。たとえばQ&Aサイト「OKWAVE」で、日々、ユーザーの質疑応答が数々の問題解決に役立っているように。

OKWAVEリリースの3〜4年後、ユーザーからある問い合わせが届きました。

「回答を寄せてくれた方に、お礼のコメントを返せるようにしてほしい」その声に応えた結果、OKWAVEのユーザーは助けることと感謝することでつながっていきました。

オウケイウェイヴ会長の兼元 謙任(かねもと かねとう)は感謝の気持ちを大切にしています。ユーザーの様子を嬉しく思いながら、社内にも感謝を伝える機能は不足しているのかもしれないと考えました。そうして生まれたのが、前週の業務で良かったことを発表する集会「Good&New」や感謝を手書きで伝える「ありがとうカード」です。

たとえば、ありがとうカードの場合はメールと切り離したことに意味があります。通常業務のやりとりをする中、多くの連絡が行き交う社内。ちょっとした手助けに感謝を伝えることはあっても、その感謝と次のタスク内容が一緒に送られることも少なくありません。

当たり前のようになりすぎて、日常業務に埋れてしまっている感謝を際立たせて、社内で感謝が通い合う様子を周知する狙いです。では、なぜ周知することを必要としたのでしょう?

企業成長のジレンマ。社員の習慣を企業文化にするために

▲「ありがとうカード」の推進に携わるメンバーたち(写真左より山本、小林、知久)

「ありがとう」と伝える瞬間は多岐にわたります。売上を立てる社員がいる一方で、その社員がセールスに使う資料を仕上げ、サポートをする者もいます。サポート役は売上を立てた社員からは感謝されますが、全社的にはどうしても売上を立てた社員に目を向けがち。

そこでサポート役の社員も日の目を見るように、ありがとうカードを社内掲示することに決めました。取ったのは紙でできた専用のカードを配り、集計ボックスで集めたカードを集計係が掲示する方式。ありがとうカードを始めた2002年、約20名の社員から集まるカードは徐々に増えていきました。

導入8年目には毎週100〜200通のカードが集まるように。中には文章だけでなく、イラストを添える社員もおり、楽しむ様子が見られています。この時期に入社したソリューション事業部サービス企画部マネージャーの小林義忠は、物珍しさに素直な感想を抱きました。

小林 「純粋にこう思ったんです。人を大切にする会社に入社したんだなと」

しかし、光が強まるほど濃く染まるのは影。提供サービスの好調や良好な職場環境などが整うオウケイウェイヴは成長企業のひとつでした。社員数は5倍の100名を超す規模になり、紙のカードを集計する負担が重くなっていきます。

2011年のありがとうカードを見ていると、送っているのは決まった社員だということにも気づきました。感謝を伝えることが個人の習慣にとどまっていたのです。

紙からWebへ。感謝されている人が報われる社会を目指すために

▲ウェブ上で感謝の気持ちを伝え合う「OKWAVE GRATICA」のサービス画面

見えない価値に気づくのはいつも現場の当事者です。ありがとうカードを使うことが習慣だったエンジニアが、カードのWebアプリケーション化を申し出てくれました。企業規模が大きくなったオウケイウェイヴでも利用できる取り組みにしたいという希望です。

このエンジニアの活躍で、Webアプリになったありがとうカードは、さまざまな効果を示してくれました。まず、これまで紙に書くことを面倒に思っていた社員も感謝を伝えるようになりました。そして、感謝を伝えたことが全社的に周知されやすくも。

感謝を伝えた瞬間に通知が届く環境を築き、送る側だけの習慣だったものがこれから受け取る側になるかもしれない社員の習慣にもなったのです。

また、経理管理本部人事部部長代理の山本卓也をはじめとした人事担当者たちが主導し、部長やマネージャーといった上長に率先してカードを使うようにしてもらうことで、社員にもありがとうカードを送る習慣づけを図りました。

こうして、「私も送ろう」と思う社員はひとり、またひとりと増えていき、意図したように、ありがとうカードを進んで送る社員が育ちました。

そんな感謝の行き交いがWebアプリに保存されていきます。週単位だった感謝の周知が月単位、年単位でいつでもすぐに見れるようになり、思わぬ効果が現れたのです。

山本 「業務単位で誰が何をしてどんなことに感謝する傾向があるのか知ることができる。それは、部長やマネージャーに部下の業務内容をより詳細に把握する機会を生みました。どこで苦労しがちなのかを把握することもできて、人材育成やリーダシップなどの質も高まっていったんです」

部下や後輩のがんばり、役立ち、得意・不得意を丁寧に理解してくれる上長のもとで働くことがモチベーションを高めます。従来の人事評価では日陰になりがちな業務をする社員にも意欲的な姿が見られてきました。

顧客との話題にこの取り組みを口にする社員も増えていきます。口々に、「非常に良い取り組みですね」「私たちも取り入れてみたいなぁ」と言ってもらえました。Webアプリ化から7年が経つ2018年のことです。

9月20日、オウケイウェイヴは、“感謝されている人が報われる社会を目指す”新たな取り組みをスタートします。他社や他団体がその組織内でメッセージングカードによる感謝の気持ちを伝え合えるサービス「OKWAVE GRATICA」(以下、GRATICA)がリリースされたのです。

感謝の輪を広げよう。イイコトをした人がイイコトを受けられる社会の実現へ

▲今では紙のカードの時代より、10倍以上の「ありがとう」が飛び交っている

16年かけて、オウケイウェイヴが体験した感謝を伝える企業文化の魅力を外へ。GRATICAは、OKWEVEのユーザーが感じたお礼の気持ちをきっかけに続けてきた、感謝を伝えることを企業文化にする試みの結晶です。

感謝の行き交いを楽しんできた16年間を踏まえて、楽しく感謝を伝えられるサービスを目指しました。常時500種類以上のデザインをそろえて、スマートフォンからも感謝のメッセージングカードを届けることができます。そして、「OK-チップ」というポイントを付与できるようにもしました。

セキュアなシステムを築き、出先にいても感謝を伝える機会が生まれたことで、よりお礼を伝えやすくなっています。2019年11月時点、導入企業・団体は70組織を超えました。中には、オウケイウェイヴよりも多くのメッセージングカードを送り合う組織の姿も。

導入組織の半数は、共に感謝を伝え合うという共通点が結んだ新たな縁です。OK-チップと交換できる特典の提供をしてくれる賛同企業も現れています。でも、OK-チップの用途に一番選ばれているのは、寄付です。感謝の交わし合いは、別のどこかで助けを求める人の支援も生んでいます。

これからもオウケイウェイヴは感謝の行き交う社会づくりに貢献していきます。感謝する人、感謝される人、お互いの幸せな気持ちを生み出し、また次の誰かを幸せにする「感謝経済」が成長していく社会を目指して。

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