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WORKSTORYAWARD2018

これからの日本をつくる100の“働く”をみつけよう「Work Story Award 2018」の受賞ストーリー、
一次審査通過ストーリーを公開しています。

働く時間も、場所も自由――国境をも超える「バックオフィスチーム」とは

株式会社アールナイン
アールナインは少数精鋭の営業社員で成長を遂げてきました。自分の担当範囲が広がれば裁量も大きくなる。それゆえに社員自身がしていたバックオフィス業務が、仕事を圧迫するようになります。この状況を解決したのが、在宅パートナー数名で営業担当者をサポートする「遠隔バックオフィスサポートチーム」の存在でした。

仕事の依頼を“事務処理まで手が回らない”ことが原因で断っていた

採用代行やコンサル事業を主な事業の柱としている株式会社アールナイン。社員数は35人と企業としては少人数ですが、数百社のお客さまとお取引をしています。

この人数で多くのクライアントとやりとりができるのは、全国に約300名いるパートナー、業務委託で仕事をお願いできるプロフェッショナルな方たちのおかげです。各企業で実際に面接官をするなどの各業務は、このパートナーさんが対応をしています。

これまでは弊社の営業社員がプロジェクトリーダーとして、パートナーさんのアサイン業務やスケジュール管理、請求書作成までをおこなってきました。

しかし、営業担当者はこのような事務作業以外にも本来の仕事を抱えているため、どうしても勤務時間外で対応せざるをえず残業が発生してしまうような状況がありました。

残業時間は月に20時間までしか認めない決まりがあるため、それ以上は働くことができません。その結果、請求書などの締め日が決まっている書類でも漏れが出てしまったりして、事務処理まで手が回らないことが理由で仕事の依頼そのものを断らざるをえない状態でした。

バックオフィスチーム代表の佐久間優美は、当時をこう語ります。

佐久間 「業務をしてくれているパートナーさんの中には『子どもが小さいため、自宅で事務作業がしたい』というニーズがありました。さらに、会社としてパートナーの雇用創出をミッションに掲げていたんですよね。
営業の業務負担、パートナーさんのニーズ、会社のミッション、どれも解決できる体制が必要だったんです」

そこで、状況改善を目指し、パートナー数名で営業サポート業務を担当する「バックオフィスチーム」を結成することになります。

仕事の合間に手を止めて、家事や育児ができる働き方がある

▲業務レクチャーの様子。笑顔が絶えません

バックオフィスチームが結成することが決まった後、育休中の植本菜月にチーム第1号としての打診をおこないました。

植本 「当時は仕事をしたい気持ちはあったものの、まだ幼い子どもを抱えているために、会社がある虎ノ門まで通うのは難しい状況でした。
そんな時に『在宅でできるお仕事には興味ないですか?』と、思いがけず会社から声をかけてもらえたことが職場復帰のきっかけになりましたね。
実は事務サポートの仕事は今回がはじめて。育休前はまったく違う業務についていたので、Excelシートを使った細かい計算や記録などは苦手意識さえありました。でも、実際にやりはじめてみると、こうしたサポート業務が在宅の仕事としてとても向いていることがわかったんです。
家事や育児の隙間時間にできますし、途中で手を止めても、しばらくして続きを対応しさえすれば問題ありません。自分の時間で仕事ができることがとてもありがたかったですね」

仕事をはじめる前には不安を抱えていた部分もありましたが、プロジェクトが動き出してからは「育児と仕事が両立できる、最高の働き方だ」と思えるようになったと話します。

「働かなくてはいけない時間」を決めないことで、部署の売り上げが2倍に

▲バックオフィスサポートチームではオンラインでランチミーティングもおこないます

植本が担当した業務がうまくいったことで、「これは同じように、子育てやほかの事情で働くことができない女性に手伝ってもらえばいいのではないか」とチームを受け入れる体制を整えはじめました。

この2年間は面接を繰り返しながら、ひとりずつ働いてくれる仲間たちを迎え入れています。チーム結成にあたって、働く環境を整えるためにクラウド型ビジネスチャットツールを導入。営業のメンバーは依頼をしたい業務が発生したタイミングで、案件の詳細や期日を指定して依頼を書き込みます。

メンバーはそれを見て、「子どもが寝てから対応します!」「残りは明日の朝から引き継ぎます!」など、自分で対応可能な部分をワークシェアする仕組みをつくりました。

それぞれが順番に仕事を回していくことで、営業担当者から「スピード感と確実さ」に感謝する声が上がるまでに。部署としての売り上げも2倍になりました。

メンバーに安心して働いてもらうために、万が一子どもが熱を出してしまったなど、予測がつかない出来事があった時のフォロー体制も十分に整えてあります。

同じ業務を数名でサポートすることによって、急に対応ができない人が出たとしても、他の担当者が代わりに仕事を進めることができるのです。

さらに、赤ちゃんや子どもがいると一日のスケジュールが読みづらいことから、基本的に案件ごとの締め切りは立てますが、”働かなくてはいけない時間”はあらかじめ決めません。

佐久間 「好きな時間にできることが心の余裕につながるので、奥さんが楽しそうにいきいきと働く姿を見て、応援してくれるようになったご主人も多いようです。
働きはじめは不安そうにしていたのに、『楽しそうだから、どんどんやりなよ!』『土曜日は子どもを見ているから、好きなだけ働いていていいよ』と、協力体制を取ってくれるようになったという声もありましたね」

続けて植本はこう語ります。

植本 「私の場合でも、自宅にいながら仕事と家事の時間をそれぞれ持つことで生活にメリハリがつき、子どもと過ごせる時間をより大切にするようになりました。
子どもも母親が安定しているのが分かるのか、『お母さんはいつも楽しそうにしていて、すごく仕事が好きなんだね』と言ってくれています。働く=楽しいことというイメージを伝えられているのは、会社のおかげです」

今後も世界規模で社会とつながれる喜びを提供していく

▲アールナインの社員

2019年現在チームメンバーは、国内のみならず、オーストラリア、ベルギー、台湾、マレーシアと世界中から参加してくれています。

実際に住んでいる場所は離れていますが、仕事をするにあたってつながりをつくるため、月に一度はランチミーティングを開き、お互いの顔を見ながら昼食をとる時間をとっています。

佐久間 「この時間はみなさん住んでいる場所のご当地ランチなどを紹介しながら、お互いを理解し合う大切な役割を持っています。業務で使っているチャットワークでも仕事に関する話だけではなく、『今日はこんなことがあって』というような雑談を含めた業務外のコミュニケーションも意識して取っています。
普段は顔を合わせて仕事をすることができないからこそ、いい関係性ができていると、もしも困った時に相談がしやすくなると思うんですよね」

小さな子どもを育てながら働く植本はこう語ります。

植本 「働いているうちに、出産して少しお休みをして、赤ちゃんとの生活が落ち着いたら復帰してくる人も増えてきました。先日はなんと陣痛がくるまで仕事をして、過去最短の1週間のお休みで『赤ちゃんは寝てるので、できる範囲で仕事に戻ります』と復帰してきたメンバーがいました。
みんなでそのはやさに驚きながらも、お祝いモードで迎えました。メンバーには新婚さんも多いので、こうして先輩たちが色々な働き方を見せてくれているのが、今後を見据えた働きやすさにつながっているのではないかと思います」

現在はこれからスタッフが増えていくのに備え、マニュアルの整備を進めています。このマニュアルづくりもパートナーに依頼しています。その理由は自分がレクチャーを受けてきたものを、次の人に渡せるように自分の経験をいかして仕上げてもらいたいため。

これをきっかけに、メンバーが教える立場として次のステップに上がれる仕組みを用意していきます。目標は在宅の仕事であっても、キャリアアップを諦めなくていい環境。

クライアントが増えるからこそお任せできる仕事があるので、営業サイドとバックオフィスへの展開の仕方を整えているところです。

佐久間 「現在もベルギー在住のパートナーが、夜間に業務を進めてくれています。まだ少し先の話にはなりますが、世界中の時差を利用して 24時間体制で仕事を進められるシステムを目指しているんです」

アールナインは、県を越え、さらに世界各国とつながるワークシェアリング、「バックオフィスチーム」で、女性活躍の場を創出していき、無理せず楽しく働ける、そんな組織づくりをこれからも進めていきます。

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