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WORKSTORYAWARD2018

これからの日本をつくる100の“働く”をみつけよう「Work Story Award 2018」の受賞ストーリー、
一次審査通過ストーリーを公開しています。
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「時短×ハイキャリア」で、誰もが自分のキャリアをムダにしない世の中に

ビースタイル・スマートキャリア
  • テーマ別部門賞
"働きたいけれどフルタイムでは働けない"人たちに向けて人材サービスを展開してきた株式会社ビースタイル。数年前よりキャリアの重ね方が多様化し、ニーズも細分化してきたことを受け、2012年9月より「時短×ハイキャリア」のサービスを開始。2018年1月にこの働き方を「スマートキャリア」と定義し、リブランドいたしました。

かつて築いたキャリアを活かして働きたい人たちの悩み

▲営業統括マネージャーの伊橋俊一

2002年の創業以来、おもに主婦層に向けてオフィスワークのパートタイム派遣・紹介事業を展開してきたビースタイル。ある日届いた1通の手紙から、世の女性たちが発する切実な声に耳を傾けるようになりました。

その手紙の出し主は、ふたりの子を持つ主婦。「玩具の開発担当としてベンチャー企業でキャリアを重ねたが、主婦になってそのキャリアは途切れた。主婦になっても本当に輝ける仕事に就きたい」という思いが便箋11枚に渡りつづられていました。

「彼女のような人は一定数いる」と考えた私たち。彼女たちが活躍できる場を広げたいという想いを形にしたサービスが、時短×ハイキャリアをテーマにした「しゅふJOBエグゼクティブ」でした。

その後、同様の働き方をしたい層が主婦だけに留まらず男性にも広がってきたことを受け、2015年にブランド名を「時短エグゼ」に変更。さらに2018年1月、現在の「スマートキャリア〜時短には、時短以上の価値がある。〜」となりました。

同時に、パートタイムの派遣・紹介だけではなく、業界で初めて時短正社員に特化した転職サービスも正式に開始。

これは、時短でも正社員で働きたいという人材側のニーズと、企業側の時短で働いている人材にもっと責任のある仕事を任せたい、コミットして働いてほしいというニーズが合致した結果です。

その背景にあるのは、どこの企業も中途採用に苦しんでいるということ。スキルがあって人物的にも魅力的という人が欲しいと考えると、採用のハードルが上がり、うまくいかないと頭を抱えている企業が多いことにありました。

伊橋「世の中の風潮的に、仕事って労働時間の長さじゃないよね、アウトプットの質だよねという考えが強まってきているのも一因かなと思っています。
たとえば、1日8時間働いて残業もできるけどアウトプットが5しか出せない人と、5時間しか働けないけど10のアウトプットが出せる人がいれば、後者を取るという考え方です」

サービス開始以来、ベンチャー企業を中心に累計約1000社と取引しており、2018年現在の登録者は5万5000人以上。

前身のサービス「しゅふJOBエグゼクティブ」時代から毎年180%の売り上げ成長をとげており、企業・求職者双方から多くのお声がけをいただいています。

ハイキャリア人材は、事業内容とビジョンで勤務先を決める

▲企業と求職者の希望を丁寧にヒアリングし、ミスマッチをなくすことで、誰もが笑顔で働ける社会づくりを目指します

サービスをはじめた当初、育児や介護などの関係でフルタイムで働けず時短での仕事を探しているが、簡単な仕事だと給与と仕事内容に物足りなさを感じる“主婦” をサービス利用者として想定していました。

実際にそのような主婦層にも多く利用いただいていますが、フリーランスで働いている方や男性の方も2割近く登録いただいているのが現状です。

契約企業は、全体の50%がIT業界のベンチャー成長企業。成長著しい業界のため、採用意欲が高く、成長するために優秀な企画職や専門職人材を採用したい。しかし会社の知名度が低いため人材が集まらないことが課題。

そのような企業と求職者のニーズにフィットしたのがスマートキャリアです。

伊橋「ハイスキル・ハイキャリアの人材と、事業内容は面白く成長しているのに知名度が低く、採用に困っている会社をマッチさせているということです。
求職者の皆さんは、経験豊富な方が多いので、重要な仕事を任せられる方が多く、働き方だけを求めているわけではないので、仕事への意欲も高いです。
実際、雇用された人材も定着率が高く、活躍いただいているとのことでリピートいただいています」

「しゅふJOBエグゼクティブ」から「スマートキャリア」と変わり、2018年でサービス開始から6年。時代の変化とともに“時短であっても能力を活かして働ける”ことに対する理解が徐々に進んできています。

大手かベンチャーかといった企業規模というよりは、どんな事業なのか、社会に対しどのような貢献をしているかといった企業理念やビジョンを重視する傾向が出てきました。

だからこそ私たちは、企業にはどんな会社なのか、どういう人たちが働いているのか、どう事業を展開するのか、今後何を目指すのか、をくわしくヒアリングし、求職者に伝えます。

そうすることで、企業と求職者の間に起こるミスマッチをなくし、誰もが笑顔で働ける社会づくりを行なっています。

時短でも正社員で働いて、しかもキャリアをムダにしない

▲「時短であっても納得できる仕事」、「労働時間じゃなくて成果が求められる仕事」など多くの主婦が求める仕事に復職

ひと昔前よりは、産休・育休制度が充実している企業は増えましたが、女性の復職というのは大きな課題です。

伊橋「仕事が決まると涙を流して喜んでくれる人がたくさんいらっしゃるんです。
いままでの世の中って、大雑把に言うとフルタイム・残業ありで働くか、家庭にいるかのふたつしかなかった。だから『わたしのいままでの頑張りってなんだったんだろう』って考えちゃう女性がたくさんいたんです」

そんな女性たちに「あきらめないで」「時短であっても納得できる報酬の仕事があるよ」「これからの仕事は労働時間じゃなくて成果なんだよ」とお伝えして一緒にお仕事を探しています。

ある40代の女性の例をご紹介します。

彼女は、外資系投資銀行へ新卒で入社後、30歳のときに海外へ渡りMBAを取得。帰国後は管理職に就き、企業財務に従事してきました。36歳のときに結婚しましたが、それまでと変わらず深夜まで働く日々。心身ともにきつい時期もあったそう。

けれど、このままの生活だと子どもを産めない――。そう思い、38歳で退職を決意。翌年には妊娠が発覚し、出産しました。

子どもが生まれると、それまでの生活とは一変し子ども中心の生活に。そして、子育てをはじめて5年が経ったころ、「また働きたい」と思い復職を決意。

まずは5年のブランクを埋めようと、近所にあるテニスクラブの受付&経理業務のパートを開始。そこで1年働いたことが自信になり、次は週4日派遣スタッフとして働きはじめました。久しぶりのオフィスワークは楽しかったけれど、だんだんと物足りない気持ちに……。

時短正社員で、それまでのキャリアを活かせる仕事がしたいと思って求人を探しているうちにたどり着いたのが「スマートキャリア」でした。

2018年現在勤務している企業の求人は、「募集要項・条件がまさにわたしが求めていたもの」だったそうで、目を輝かせて仕事復帰し、いまも元気に活躍しています。

彼女はあくまで一例です。男性でも、介護の関係でフルタイムで働くことがむずかしい方や、自分の強みだけを活かして働くためにあえて正社員以外の働き方を選ぶ方が増えてきています。逆に、そういうスポット的な人材を求めている企業も増えてきているのです。

そういう人と企業をつなぐのが、私たちの役目です。

一人ひとりの「こう働きたい」をかなえるために

▲新しいサービスとして、より経験やスキルの高い求職者と企業のマッチングをしていきたいと語る伊橋

現状はベンチャー企業の利用が多いスマートキャリア。しかし業界や企業規模は関係なく、より成長するために優秀な人材を求めている企業からの問い合わせが増えています。

伊橋「卵が先か、ニワトリが先かという話になりますけど。優秀な人材は成長している企業に入りますし、成長している企業は優秀な人材を求めています。大事なのは、彼らが活躍できる環境をつくることだと思うんです」

まだまだ長い労働時間を求める企業は少なくないけれど、いま以上にアウトプットの質が重視される働き方が浸透し、「スマートキャリア(賢い働き方)」が当たり前の時代にしていくことが、私たちの使命です。

政府が働き方改革を推進している昨今、人々の働き方への意識も少しずつ変わってきています。政府は、残業を減らす、休日を取りやすくする、納得感のあるお給料を支払うといった同一労働同一賃金への議論を進めています。

私たちは、スマートキャリアこそこれらを満たす働き方だと考えています。スマートキャリアを選ぶ求職者は、柔軟に働きたいと思っている人たち。彼ら一人ひとりがイメージする働き方を用意するのが、私たちの仕事です。

伊橋「今後はスマートキャリアから派生した新しいサービスとしてより経験、スキルの高い層と企業のマッチングをしていきたいと考えています。
彼らは事業会社で社内横断プロジェクトの責任者をしていたり、元コンサルティングファームであったり、より経営層に近いところで仕事をしてきて非常にレベルの高い方々です。
企業側には、経営課題の相談にのってほしい、短期的にコンサルティングをしてほしいというニーズもあります」

時短には、時短以上の価値がある――。労働時間ではなく、アウトプットの質が求められる働き方が当たり前の世の中をつくるための挑戦は続きます。

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