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WORKSTORYAWARD2018

これからの日本をつくる100の“働く”をみつけよう「Work Story Award 2018」の受賞ストーリー、
一次審査通過ストーリーを公開しています。

外部に開放し、人材育成の場となる全員参加型経営会議「御堂筋流コックピット会議」

御堂筋税理士法人
業界平均2倍の生産性を誇る御堂筋税理法人。その原動力は、私たち自慢の「御堂筋流コックピット会議」。その会議は、社外の方の見学を受け入れ、クライアント企業にもそのテクニックを余すところなく伝授するというもの。若手の育成にも重要な役割を果たす、長年かけて培ってきた会議の真髄をお伝えします。

クライアントから相談された「会議や人材育成の課題感」がきっかけに

▲会議を改革した2代目代表の才木正之

私たちは税理士法人のため、クライアント企業とは主に税務や会計、コンサルティングを通じて、パートナーとしてご支援しています。ところがいつからか「会議での人材育成の仕方を教えてほしい」とのご相談を受けるようになったのです。

「会議の場がただの報告会になってしまっている」「経営改善に関わる議論がなされておらず、幹部社員が育たない」「幹部の独演会になっていて若手が発言せず、アウトプットの手応えがない」という会議のお悩みの声が多く、何かお役に立てるのではないかと感じたのが、社外へ見学会を開くきっかけでした。

当社では会議を「最高の人材育成の場である」と捉えて、何度もブラッシュアップを重ねてきた歴史があります。

「御堂筋流コックピット会議」として始めたのが27年前の1991年。今でこそ見学会を開催できるほどに好評を得ていますが、かつては私たちの会議もトップの独演会でした。

会議のやり方を大きく変えたのが、2008年ごろ。当社の規模も拡大してきて、トップのカリスマだけでは組織運営が成り立たなくなっていました。そこで、創業代表からバトンタッチした、2代目で現代表の才木正之が改革をおこなったのです。

その方針は、これまでのトップダウン方式から、チームで課題解決に取り組めるようにすること。その際に重視したのが、人材育成の場としての会議でした。そのために、対話を通じた課題解決を目指すコーチングと、会議を活性化するファシリテーションの考え方を学び、吸収して採り入れていきました。

才木 「そのころから、目的を持った会議を志向し、トップダウンではないマンツーマンのコミュニケーションの重要性を学び、組織の方向性を大きく変えるために少しずつ改善していったんです」

マネージャークラス以上は13日間のトレーニングメニューを受講。その後は徐々に会議も変化していきました。とはいえ、一朝一夕に改善はできません。のちにその重要性に気がつくことになる「安心感のある組織」とはまだ程遠かったのです。

メンバーの潜在意識を引き出すーーチャレンジできる環境と安心できる組織

▲御堂筋流コックピット会議の風景
西口 「2008年頃に今の会議のやり方をはじめたのですが、当時はフィードバックが厳しく、相当に絞られました。会議のある朝にはお腹が痛くなって、ビクビクしていたほどです(笑)」

西口知世は、入社10年目のマネージャー。今では「プロ会議ファシリテーター」としても活躍の場を広げています。そんな彼女も新人のころは「裁判にかけられるような気持ちで」会議に臨んでいました。

才木 「私も当時は『何をそんな当たり前のことを今さら言っているんだ』などと問い詰めるような発言をしていましたね」

そこからスタートした御堂筋流コックピット会議も、優秀なメンバーが離職するなどの経験を経て考え方を変える必要性を感じ、改善を重ねていきました。

才木 「私も先代も、相当に我慢をするようになりました。どうしても、伝えたいことで言葉があふれ出てしまう。それを、主体性を発揮して発言してもらえるような組織に変えようと思えたのは『1人の力は本当に、たかが知れている』と気がついたからかも知れません」

幹部だけの力では、組織の目標として掲げていることは成し得ない。幹部の得意分野だけでは、お客様のサポートをカバーしきれない。そこに気がついてから、メンバーの潜在能力を発揮してチャレンジしてもらえる環境づくり、安心して発言ができる組織づくりへとシフトチェンジしていったのでした。

一方で、会議での「3回発言ルール」というのを設けました。

若手は特に傍観者になりがち……。そこで、必ず3回発言してもらうことにして、事前に目標や課題に向き合ってもらう動機づけをし、会議の重要性を認識してもらうようにしました。

また、普段から“さん”付けで呼び合うなどしてフラットな社風にし、会議の場でも職位に関係なく遠慮のない意見を飛ばせるようにしています。というのも、私たちは経営者を相手に経営者目線で仕事をする機会が多くあります。

そのため、上司を経営者であるお客様とみなすことが、対話するトレーニングのひとつになると考えているのです。

才木 「会議は若手にとっての“晴れ舞台”という位置づけです。上司やトップにアピールをし、プレゼンし、考え方を承認してもらえる場です。逆に私たちから見れば、評価の場でもあります」

全員持ち回りでファシリテーターを担当し、全員参加で意思決定をする


▲「御堂筋流コックピット会議」

コックピット会議の肝は、月に1度、経営幹部が集まり、売り上げ目標や課題、計画などをすべて見える化することでチェックしつつ、意思決定をする場である点にあります。

その目的は大きく分けて2つ。

ひとつは、短期目標の達成度を数字で見ること。目標との乖離や、その背景にある行動について議論します。

2つ目は、中長期の課題や新サービスや商品の開発、あるいは組織の人事制度やエンゲージメントを深める方法などについて議論すること。これらの議論によって、成果へのコミットと行動を促しています。

具体的には、会議の前半で数字をみて、後半でプロジェクトごとの情報共有をおこないます。ここでも3回発言ルールと経営者目線で発言するという文化が活きてきて、たとえば人事チームの発表の際にもコンサルタントチームや新人が質問やツッコミを入れます。

こうした「一体感」は、社外の方が見学された際に評価をいただくポイントのひとつであり、私たちの強みとして非常に重視しています。

また、全員が持ち回りでファシリテーターをおこなうことも特徴です。会議の資料は毎回120ページほどのボリュームになるのですが、それを新卒入社2年目くらいのメンバーが幹事役として作成します。これも、「全員参加」を促すためにおこなっていることです。

資料作成では、当社の数字や目標管理シート、クライアントの管理情報や参考資料など、すべての情報を把握する必要があるため、おのずと自分たちの組織の課題解決に参画しているという意識付けができる機会になっています。

入社5年目の若手である村尾治道は、初めて事務局を経験したときのことをこう振り返ります。

村尾 「トップのメンバーとも密にコミュニケーションをとる必要があり、その過程で自分の強みや弱みを見つけられます。また、上司がどう課題を改善しているのかを直接見て取り入れられるので、自分の成長につなげることができました」
才木 「僕らはこの資料作成を、思考の時間だと言っています。また、考える時間に加えて振り返りの時間にもなっているんですね」

一人ひとりが数字を通じて業績に関心を持てる意識づくりが、会議の真髄

2018年現在の当社の売上高は13年連続増収、1人当たりの売上高は業界平均値の約2倍。離職率も年々下がっています。会議は常に新しいテーマに取り組んでいるために、マンネリ化しません。

御堂筋流コックピット会議は、社外の方に見学していただけるようにしており、2018年現在、見学者は累計474名にまで達しました。

会議を開放している理由には2つの意味があります。ひとつは、見学者からのフィードバックを得られる点。社内の人間だけでは得られない視点からの意見を、取り入れることができます。そのために、見学会が終わったあとには懇談会を開いているのです。

もうひとつは、自社サービスのプロモーションとしての意味合いです。百聞は一見にしかず。当社の会議を見ていただければ、クライアントに導入していただく先に行き着くイメージが湧きます。いわば“試着をしていただく”ように、見学にきていただければと考えております。

おかげさまで、たとえばコックピット会議を取り入れてくださったあるお客様は、30億円規模から今では200億円規模に成長。「御堂筋税理士法人さんの方法を取り入れて、意思決定にチャレンジしてきた成果だよ」とおっしゃっていただきました。

他にも、コクピット会議の短期業績達成のロジックを一緒に勉強していただいたクライアントは、1年間で大赤字から単月黒字を達成。また、トップだけが発言していた企業からは、この会議を採り入れてからメンバーが発言するようになったなど、喜びの声をいただいております。

才木 「大事なのは、結果をすべて数字で測定すること。そうでないと、雰囲気だけが活性化されたと言っても利益が上がらなければ、メンバーへの分配もおこなえません。また、財務から逆算して、組織の思考力と行動力がアップすれば大抵の場合、改善すると思います」

こうして、一人ひとりが数字を通じて自社の業績に関心を持ち、業績を伸ばしていこうと思えるようになるまでの意識づくりや働き方に寄与している部分が、御堂筋流コックピット会議の真髄なのです。

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