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WORKSTORYAWARD2018

これからの日本をつくる100の“働く”をみつけよう「Work Story Award 2018」の受賞ストーリー、
一次審査通過ストーリーを公開しています。

がんばることは楽しい!独自の人材育成術で「働く」よろこびを生み出す

株式会社ミスコンシャス
すべての女性に「着飾る」よろこびを。業界最大級のオンラインレンタルドレスサービスを提供する株式会社ミスコンシャスのビジョン。課題は育児中の女性が多い職場での"モチベーションの溝"でした。打破すべく実施した企画は意識だけでなく業務改善も成しとげ、社員の「働く」よろこびを創造することになったのです。

社員全員が同じモチベーションで楽しくがんばるには……

▲おしゃコンカップ「PC基礎スキル部門」。課題の速さと正確性を競う

モチベーションの溝は、どうすれば埋まるだろうか——。代表取締役社長である小山絵実の課題でした。

ミスコンシャスの特徴は、専業主婦を経て復帰して働く、子育て中の女性スタッフが多いことです。“ママスタッフ”に共通していたのは、育児との両立のなかで時間に追われ、自然と与えられた仕事を淡々とこなすだけというスタイルになってしまうこと。

かたやベンチャー精神、チャレンジ意欲も旺盛な上昇志向の強い役員・社員との間には、仕事に対するモチベーションの大きな溝が生まれていました。

小山 「チーム一丸となって“楽しいことをもっとがんばる”という意識をつくるためには、どうしたらいいかと常に考えていました」

解決策のひとつとして、2014年に全員参加の「タイピング選手権」を企画。決められた文章をどれだけ正確に速く文字入力できるかを競い、努力を評価する社内競技会です。タイピングスキルの向上意欲を高める目的もありました。

ところが、社内からはかなりの不評。普段、業務でパソコンを使わないので苦手なスタッフにとっては、大勢の前で自分ができないことをさらすことになるからです。

小山 「当初の目的に立ち返りました。そもそもミスコンシャスは、働くひとに対して“がんばれば誰もが輝ける場所をつくる”という約束をしているんです。そのためにはどうすればよいか……。それである体験を思い出しました」

小山は20代前半にスポーツジムでアルバイトをしていました。ジムでは毎月1回、アルバイトを含めた全従業員対象に社内表彰を行います。内容は、「誰も気づかないところで掃除をがんばったで賞」など、誰もができるような努力をたたえるものです。

小山 「全員の前で表彰されるのですが、学生より主婦のよろこんでいる姿の方が印象的でした。
表彰された本人だけでなく、お友だちもよかったねと一緒によろこんで泣き出しちゃうシーンもあって、なんだかすごくいいなと。認められるということは、こんなにうれしいんだと。
誰もが目指せることで、みんなの前で評価する。これは主婦層の多い私たちの会社にマッチするなとーー」

この原体験から生まれたのが、社内競技会「おしゃコンカップ」でした。

みんなの前で評価される成功体験を味わえる「おしゃコンカップ」

▲ドレス畳み部門。基礎スキル向上により業務の効率化が図れ、生産性UPにもつながる

「おしゃコンカップ」でこだわったのは、全社員の前で表彰し、全員が参加すること。さらに、日々の業務に即した作業で、平等に評価できて、なにより重視したのは誰もが手に届くところに1位があることです。

スタイリング部門、運営・オペレーション部門、配送業務部門、配送センターなど業務内容はさまざまなので、みんなが参加できる種目を決めるのは難しかったと小山はいいます。

最終的に決まったのは、「ドレス畳み部門」「PC基礎スキル部門」「ライティング部門」の3つ。業務に携わってさえいれば、必ず誰もが行なう基礎的なスキルに照準を合わせました。全員参加なので、もちろん小山も参加します。

小山「社長もパート社員も、古株も新人も関係なく、みんなで挑戦する。立場や職歴でわけずに一緒に取り組むことで、みんなが同じ方向を目指しているんだと、一体感を感じてほしいと思ったんです」

それぞれの種目は、基本的な作業なので、日常の業務に意識して取り組めば上達できる内容です。わざわざ勤務時間外に練習をしないと上位を望めないとしたら、育児中のママスタッフにとっては“誰もががんばれば1位になれる”という条件から外れています。

小山はスタッフに「私も仕事中の努力だけで上達できたよ。そこを目指そう」と声をかけます。「おしゃコンカップ」を「タイピング選手権」のように重荷に感じる必要はないからです。

「タイピング選手権」にはなかった新たな制度も追加しました。1〜3位入賞者は、次回競技会開催までの半年間、時給がアップするというもの。半年間と区切ったのは、今回はだめでも「次回がんばれば自分にもチャンスがある」と実感してほしいから。

そしてもちろん、入賞者は全社員の前で表彰し、会社から“評価されるよろこび”を体感できる、成功体験の機会を創出したのです。

褒められたらうれしい。笑顔も対話も、社内がどんどん活性化

▲社員同士を知るきっかけとなり、社内コミュニケーションも活性化

反響は、想像以上でした。

「みんなで働くって楽しいですね」といったのは、以前フリーランスで働いていた経験のあるスタッフ。「日常生活でがんばりが評価される機会はそう多くないから、評価されてみんなの前で表彰されるのは本当にうれしい」という小さな子どものいるスタッフ。

パート勤務から時短社員となった子育て中のスタッフは「おしゃコンカップはいつも緊張で手が震える。仕事で鍛錬していることが評価されて時給も増えるなら、もっと仕事をがんばろうという気になる」といいます。子どもに表彰状を見せたというスタッフもいました。

小山 「おしゃコンカップがよかったのは、純粋に褒められたらうれしいという点。もうひとつ、がんばったら自分もできる、という日常的な成功体験を得られることは大きいです。半年に1回と期間を決めたことも目標が定まり、やる気アップにつながりました」

みんなの前で表彰される効果は、ほかにもあります。たとえば、1位になると社内全体に◯◯が得意な人として認知されるため、普段話したことのないスタッフからも「どうやったら、あなたみたいに上手くなれますか」と頼りにされるという声も。

小山 「これまで頼られた経験のない人が頼られるのは、仕事にやりがいを生みますね。そんなふうに本人のやる気だけでなく、社内のコミュニケーションも活性化して、日に日によいスパイラルが生まれていく。こうした場面を目にするのは、本当に多くなりました」

「おしゃコンカップ」には競技会当日以降も、社内の空気を変える力がありました。

がんばることは楽しいし、楽しいことはがんばれる!

▲おしゃコンカップによって会社全体にチームとしての一体感が広がる

想定外の効果もありました。個人のモチベーションだけでなく、会社としても着実な業績アップにつながったのです。

配送センターの業務は、たった1年で15%の工数削減を達成。最低賃金も2年間で110円アップしました。けっして狙ったわけではありません。

たとえば、PC基礎スキル部門の入賞を目指して、普段からショートカットキーを覚えて使うようになると、物理的に作業の効率はあがります。みんなが競い合って努力するので、全体の技能の底上げに、“自然に”つながるのです。

小山 「ある種目ひとつだけをがんばって、それだけしか上達しないということはありません。その周辺のほかの作業や技術も上手くなるし、自然にモチベーションもアップするんですね」

がんばることがよろこびにつながる。「おしゃコンカップ」は、それを実感する機会になっています。半年ごとの目標ができ、リーダーを目指したり、正社員を志すスタッフだけでなく、ルーティンワークの多いスタッフにもやる気が生まれたり、会社全体にチームとしての一体感が増しました。

採用にも影響がではじめます。ミスコンシャスの働き方は、地元でも評判になりメディアにも取り上げられました。「やりがいを持って働きたい」という思いの入社希望者が増え、ミスコンシャスの文化とのマッチングが得られるようになってきたのです。

2018年7月、第6回目の「おしゃコンカップ」を開催。表彰式では、感極まって涙を流してよろこぶスタッフの姿も見られました。20代の小山の原体験、まさに評価は人にこんなにもよろこびを与えるんだというシーン。それは昔も今も変わらない、働くことの核心なのかもしれません。

小山はいいます。

小山 「がんばることは楽しい、楽しいことはがんばれる。そういうハッピーサイクルで、みんながやりがいを持ってくれるというのが、私はいちばんうれしい」

もちろん今日もミスコンシャスでは、ハッピーサイクルが稼働中です。

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