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WORKSTORYAWARD2021

これからの日本をつくる100の“働く”をみつけよう「Work Story Award 2021」の受賞ストーリー、
一次審査通過ストーリーを公開しています。

今までにないビジネスモデルを。スピーディーかつ柔軟な発想で組織改革に挑む

株式会社キュービック
株式会社キュービックは、デジタルメディア事業を中心に成長してきた会社です。2018年以降は、幾多の壁にぶつかりながらも、新規事業の立ち上げに注力してきました。ともに新規事業を立ち上げ、あらゆる障壁を乗り越えてきた、代表取締役社長の世一 英仁とメンバーの牧野 英樹、荒木 珠里亜が語ります。

中小企業からベンチャー企業へ。「ビズキチ」で事業拡大を図る

▲第三創業期に突入するキュービック、新たな事業創造に奮闘中

現在16期目を迎えているキュービックは、創業数年のスタートアップと比べると、「ベンチャー」というには少し大人なのかもしれません。

しかし、私たちは「三度目の創業期」に入ろうとしているれっきとしたベンチャー企業です。1度目の創業は、会社設立の2006年。2度目の創業は、中小企業からベンチャー企業に生まれ変わることを決意した2014年。そして3度目の創業は、既存事業のデジタルメディア事業を大きくトランスフォームすることに加え、新たな事業の創造に取り組み始めた2021年。

世一 「当社には『次に何をやろうか』『どんなことに挑戦しようか』というベンチャーマインドを持った意欲的な社員が多くいます。現在、3度目の創業期を迎え、社内全体としても新しいことへ挑戦していく姿勢です」

創業以来、デジタルメディア事業一筋で成長を続けてきたキュービック。しかし、さらなる成長のためには、「事業の多角化」「新規事業の立ち上げ」が必要不可欠でした。そこで、ビジネスキッチンマネジメントオフィス(以下、ビズキチ)が新設されることとなりました。

新規事業の立ち上げとグロースを目的としたビズキチは、事業の種づくりと検証を繰り返していましたが、当初は思うように進まなかったと振り返ります。

牧野 「当社の経営陣は、多種多様な業界で経験を積んでいます。そのため、ビズキチで創出した新規事業の種をプレゼンした際も、さまざまな視点のフィードバックをいただきました。

私たちはフィードバックをもとに改善し、次回のプレゼンの準備を進めるのですが、経営陣全員に認めてもらえる新規事業を生み出し、進めていくのは容易ではありませんでした」

世一 「経営陣としては、新規事業なので“正解・不正解”があるわけではないことはわかっています。ですが、資金をかけて取り組むからには、担保として一定の成功率はほしいという想いが強く、メンバーに対する要望もどんどん大きくなっていました。

新規事業を前に進めることよりも、経営陣が新規事業を理解し、確かな仮説のもと納得することを大事にしてしまっていたため、時間がかかっていました」

新規事業を進めるための大きな決断と新たなスタート

▲新規事業開発を担う部署を社長直下に異動

デジタルメディア事業一筋で成長してきたキュービックには、既存事業を円滑に進めるための環境が整っていました。一方で、新規事業を立ち上げるために必要な環境整備はこれからという状況でした。そうした中で世一は、まずは新規事業を円滑に進めるための仕組みが必要だと感じました。

世一 「会社として新しいものを生み出していこうとしているのだから、穴のないアイデアを出すことではなく、失敗を歓迎しながらとにかく前に進めることを優先させたいところです。そのためには、既存事業の進め方を踏襲するのではなく、別の進め方を採用すべきだと思いました」

当時、経営会議は2週間に1度の開催。その会議の中で、ビズキチは既存事業と同じように進捗を報告し、都度経営陣全員の承認を得ながらネクストアクションに移すというサイクルを繰り返していました。この進め方では意思決定のスピードは遅く、新規事業の推進速度が鈍化している状況でした。

経営陣も新規事業を推進していくことの難しさを痛感し、「このままでは、何も前に進まない」と感じた世一は2020年に大きな決断をします。

世一 「ビズキチを部署ごと社長直下に異動させ、私の責任のもと新規事業を進めることにしました。新規事業を生み出すためには、何が必要で何が正解なのか誰にもわかりません。そのため、経営陣にはアドバイスを求めはするが、意思決定は私に任せてもらうようにしました。

そして承認フローも“経営会議での合意が必要”という形から、私の口頭承認のみで新規事業を進められるようにしました。これにより、新規事業の方向性と経営陣の考えのずれが少なくなり、意思決定のスピードも大幅に改善しました」

こうした世一の決断によって、ビズキチは大きく生まれ変わることになりました。

新規事業の立ち上げを支えるコミュニケーションの取り組み

▲1on1ミーティングを「週1回30分間」から「週2回15分間」のスタイルに変更

新たにスタートしたものの、コロナ禍による環境の変化もあり、社員同士がコミュニケーションを取る機会が激減。

とくに、新規事業を進めるメンバーは、一人ひとりが各々の事業の立ち上げを行うため、孤独を感じやすい状況だったといいます。そんな環境であっても、メンバー同士で切磋琢磨できるように、世一は情報共有の時間を毎日設けることにしました。

世一 「それぞれが独立して新規事業を進めますが、事業推進の中での悩みは共通していることも多かったんです。リソースの調達の仕方や他部署への依頼、事業案の進め方など。そのため、個別の事業に関する相談ではなく、新規事業の開発におけるhowの共有や相互支援の場を作ることを意識していました」

さらに、カジュアルなコミュニケーションの機会を作りたいというメンバー荒木の発案によって、月に2〜4回程度、雑談の場を作りました。

荒木 「世一とこまめに情報共有することで、社会や世の中がどうなっているのか、最近どんな事業が流行っているのかなどを、経営者視点で理解する良い機会になったと思います。情報共有の場では雑談も織り交ぜることで、新しいアイデアが生まれたり、そこから事業を前進させるヒントを得たりすることもできたんです」

そして、以前の課題でもあった、承認まで時間がかかるフローは組織変更により改善。さらにスピード感を持って新規事業を進めるために、世一は行っていた1on1ミーティングのあり方も見直しました。

世一 「1on1ミーティングでは、週に1回30分よりも、週に2回15分の方が事業を前進させられると思い、ミーティングの機会を短時間・高頻度で設けるよう変更しました。事業を前に進めるために必要なアジェンダをメンバーに考えて持ち込んでもらう形を取り、スケジュールの関係でミーティングを変更する際も、必ず次のスケジュールを押さえて進めていました」

荒木 「週に2回面談の機会があるので、『次の面談までにこの業務は進めておこう』というように、業務のスケジュールが立てやすくなりました」

牧野 「事業の進捗が悪いとアジェンダを作る際に苦労します。その中で、自分のコンディションが把握できるのが、とてもいいなと感じています。たとえ事業推進がうまくいっていなくても、アジェンダを作る中で課題が明確になるとともに視座を高められ、アドバイスをもらえるので、前向きに捉えることができています」

今までにない新たな試みと、これから描く未来

▲新たに立ち上がったサービス「ドットインターン」と「キュービックペンシル」

事業拡大に向けて前進を続ける中、一つの新規事業「キュービックペンシル」が立ち上がりました。この事業は、新型コロナウイルスの影響で学費の支払いが困難になり、大学を退学せざるを得ない学生がいるというニュースを受けて立ち上げた、学生経済支援を目的とした新規事業です。

初の試みということで当初は苦労したこともあったといいますが、2020年4月25日の起案から登録学生への最初の支払いはわずか1カ月で実現。これもこの組織改革によって、意思決定のスピードが格段に速くなったことが影響しています。

この事業では地方の学生にも業務を依頼することで、地方学生の経済的な支援につなげられました。また今後の取り組みとして、スキルアップの仕組みを整備して、学びを活かして仕事を提供する試みも開始。

他にも、「ドットインターン」という、長期インターン紹介事業を立ち上げることができました。

世一 「現在は、突破力の高いメンバーがそれぞれを支えながら進めている状態で、個人商店が複数並ぶ小さな商店街のような組織です。今後はテストフェーズから、収益化を求められるフェーズに変わってくるため、さらにスピード感を持って取り組んでいきたいです」

今後も、今までにないビジネスモデルをスピーディーに起案・実行するキュービックの挑戦は続きます。