at Will Work

WORKSTORYAWARD2021

これからの日本をつくる100の“働く”をみつけよう「Work Story Award 2021」の受賞ストーリー、
一次審査通過ストーリーを公開しています。

職場環境と風土を改革する。「働き方デザイン」がもたらしたメンバーたちの変化とは

株式会社オンワードホールディングス
お客様の生活に寄り添う「生活文化企業」として、アパレル事業を展開している株式会社オンワードホールディングス(以下、オンワード)。近年、オンワードは「働き方デザイン」と呼ばれる働き方改革に取り組んでいます。取り組むにいたった経緯から、見え始めた効果まで、プロジェクトリーダーの大竹 智恵美が語ります。

働き方改革の風土をつくりたい

数多くの店舗を構えているオンワードでは、お客様のために働く店舗スタッフはもちろん、社内で勤務するメンバーも重要な役割を担っています。しかし、そんな企業成長を支える裏で、当時メンバーたちには大きな負担がかかっていました。

大竹 「以前は、社内で勤務するメンバーは長時間労働が蔓延している状態でした。23時まで会議が続いていたり、仕事を家に持ち帰ったりするメンバーもいて、企業として誇れる状態ではなかったんです。

実際に、勤務するビルの閉館時間を早くするなど、いろいろと対策を講じましたが、抜本的な改革にはつながりませんでした。『長時間働くことで成果がもたらされる』というマネジメントがされていた状態でしたね」

オンワードが抱えていた問題は長時間労働だけではありませんでした。社員のプライベート時間への配慮も必要だったと大竹はいいます。

大竹 「会議の場面では、基本的に発言するのはリーダーがほとんどで、メンバーは発言しづらい雰囲気がある部署も見受けられました。属人的な仕事の進め方をしていたこともあり、メンバー間で業務量の偏りが発生することもありました。そして、いつしか『自分たちでは働き方を変えられない』という声がメンバーから聞こえてきたんです。

生活文化企業でありながら、メンバーは日々の業務に追われて充実した休日を過ごすことができない。休日でも電話に出なければならない。生活者としての等身大の感覚が持てていない状態に、代表取締役社長の保元も疑問を抱く状態でした」

「このままではいけない」という危機感から、オンワードでは2019年8月から「働き方デザイン」と呼ばれる働き方改革が始まりました。この働き方デザインという名前には、“ 働き方を変えるのはメンバー一人ひとり”というメッセージが込められています。

自分たちで課題を見つけ、自分たちで解決する

▲カエル会議中の写真

働き方改革の風土をつくるために始まった働き方デザイン。メンバーの意見も取り入れながら、大竹はさまざまな取り組みを実施しました。

大竹 「まず始めに取り組んだのは、管理職の意識改革です。外部コンサルによる管理職研修を実施して、多様な人がなるべく短時間で働く『人口オーナス期のマネジメント』を意識してもらうことから始めました。こちらは約2年かけて継続的に実施しました。

もう一つの大きな取り組みが『カエル会議』です。カエル会議とは、自分たちのありたい姿をチームで議論しながら決定し、ありたい姿に向かうためのアクションを実施するものです。カエルという言葉には、働き方を『変える』、早く『帰る』、人生を『変える』などの意味が込められています」

カエル会議では「どんな意見も出そう、出た意見を否定しない、リアクションする」をルールとして定めています。最初はこのルールをうまく取り入れられないチームもあったものの、徐々に「本音で話し合うことの大切さ」をメンバーが実感し始めたことを、大竹は感じました。

大竹 「カエル会議の中で、あるメンバーが『休みの日に電話に出ることが当たり前になっているけど、みんなはどう感じているのか気になります』と発言したんです。その発言がきっかけで、他のメンバーも同じ思いを抱えていることがわかりました。

自分たちで課題を見つけて、どうすれば課題を解決できるのかを考えた結果、休日は携帯をオフにするルールが導入されました。ただ携帯をオフにするのではなく、店舗で働くメンバーへの周知方法などもしっかりと考えた上で導入にいたりましたね」

さらなる取り組みとして、オンワードでは10日間の連休取得を推進する新制度「マイゴールデンウィーク制度」を2020年3月からスタートさせました。

大竹 「マイゴールデンウィーク制度に関しては、メンバーの意見も分かれていました。1年中お店を開けていることや、商品のサイクルが早いといった業界の特性上、『10連休は無理だろう』という声があがっていたからです。たしかに今まで通りの仕事をしていれば、10連休を取ることができないのは明確でした。

否定的な意見もあった一方、『10連休が実現できれば通常の仕事の仕方も変えられる』など、前向きな意見もありましたね。10連休を取るために何をしなければいけないのか、メンバーがそれぞれで考えて実施しました」

大切なのは“ 生活者の等身大の感覚”を持つこと

さまざまな取り組みを実施する中で、働き方デザインは徐々に効果を発揮し始めています。

大竹 「働き方デザインを実施していなかった2018年度と比べて、2020年度では1カ月あたりの平均残業時間が11.4時間減少の6.3時間になりました。また、休日取得数も5日増えており、マイゴールデンウィーク制度の取得率は39.4%に達しています。まだ満足できる状態ではありませんが、こういった数値を高めていけるようにプロジェクトを継続していきます」

働き方デザインによる効果は、数値面以外にもあると大竹は語ります。

大竹 「『誰がどこで何をいっても平気』という心理的安全性を、管理職が意識するようになりました。会議ではメンバー間の発言の機会・量を均等にしたことで、たくさんの意見が出るようになったんです。会議の質が高まったことで仕事の質も高くなることを実感でき、少しずつ働き方デザインの風土ができあがっているように思います。

また、当社では社内SNSとして『Yammer(ヤマー)』を導入しており、業務外の内容も含めてさまざまな発言がされています。社長も自ら返信をするなど、自由な意見交換の場として機能しており、心理的安全性が担保されていると感じています」

働き方デザインを進める上では、「なぜこのプロジェクトを進めているのか」という目的意識をメンバーに持ってもらうことを、大竹は重視しています。

大竹 「働き方デザインは、『ただ残業を減らせばいい』というものではありません。生活文化企業として、生活者の等身大の感覚を持つことが重要なんです。その感覚を持つことで、新しいビジネスを始められたり、イノベーションにつながったりすると思います。

ワークライフバランスが整っていなければ、新しいビジネスは生まれないと考えています。会社の成長につなげるために、自分たちで何ができるのかという『当事者意識』を持ってもらうために、働き方デザインがあることを伝えていますね」

メンバーがイキイキとして働ける企業へ

▲働き方デザインの成果を共有するオンラインでのワークショップ風景

働き方デザインは少しずつ成果があらわれているものの、まだ始まったばかり。このプロジェクトを通した理想像として、大竹は次のように話します。

大竹 「オンワードは、中長期ビジョンとして『5つの戦略』を掲げています。その中の一つに『多様で個性的な人財が活躍できる企業への進化』があります。ワークライフバランスの実現はもちろん、どんなメンバーも活躍できる企業を目指すために、働き方デザインを進めていきたいです。

また、現代はいわれたことだけをやればいい時代ではありません。自分の意思で動けるのかどうかが、重視されている時代だと考えます。いい意味で上司に意見をいうことができ、活発な意見交換ができる。いいたいことを伝えられる場に加えて、関係性もできている。メンバーがイキイキと働ける環境こそ、働き方デザインの理想像です」

生活者に寄り添った企業として、オンワードは働き方改革をさらに進めていきます。