一般的に、男性の育休取得率を上げるにあたり、最大の課題となるのが、経営層をはじめとした組織長の理解や本気度ではないでしょうか。その点、当社の場合はトップ自らが、善は急げと言わんばかりに「男性育休100%宣言」を社内にスピード発令しました。
反対に課題になったのは、対象となる社員や周囲の社員の価値観の転換でした。経営トップが宣言しただけで、職場の雰囲気が一変して誰もが自然に取得するほど、人間は変化に馴染んでくれません。
忌引きは突然発生する休暇のため、引き継ぎなどできることは限られてきます。しかし、これから生まれてくる新しい命に対しての育休であれば、計画的に準備や対応ができるはず。日常業務の価値を見直す好機と捉えることで、組織全体に戦略的浸透を図ろうと考えました。
男性育休取得100%宣言の社内発信時に、第1号として財務管理部情報システムマネージャーの海士部 豪が対象者となりました。取得時期は第1子誕生の2019年7月で、期間は1週間です。
情報システムの要であり、専門性が高いことに加えて、休暇を取りにくい時期でした。しかし、企業文化・風土体質の大きな転換点であることや超売手市場の採用で勝ち残る戦略的な制度となりうること、今後同じように家族の出産を迎える男性社員の前例となり、全社員の価値観を変える絶好の機会であることなどを彼に伝え取得を促しました。
計画的な育休を前に、まずは休暇を取得する対象者自身が自らの業務の棚卸しを行うところからスタート。ジョブリストを作成し、業務のABC分析を経て不要な業務や統合できる業務を洗い出しました。
業務の引き継ぎをしていく過程で、通常業務の中ではなかなか気付かない部分が見えてくるものです。主要業務の本来価値を問う姿勢が見られるようになり、合理化・生産性の向上にも繋がりました。仕事には、専門性を問う創造的な仕事もあれば、属人化すべきでない仕事もあります。無駄を省いてしっかりと準備すれば代替可能な業務を共有化し、リスクを軽減する動きができます。
また、時間内の成果・結果を残すタイムマネジメント、マルチタスク、リスクマネジメント、引き継ぎに伴う同僚・後輩などへの育成能力など、総合的な人材力が向上したのも大きな成果だと感じています。海士部は、「最初は不安でしたが、家族と過ごす時間が増えて嬉しかった」と語ってくれました。