at Will Work

WORKSTORYAWARD2021

これからの日本をつくる100の“働く”をみつけよう「Work Story Award 2021」の受賞ストーリー、
一次審査通過ストーリーを公開しています。

変革を⾃分ごとに。経営危機を意識改革のきっかけに、眠れる変⾰者を掘り起こせ!

千代田化工建設株式会社 / 次世代 DIGGING LAB. 事務局
2018年度に過去最⼤である約2,000億円の⾚字を抱え、経営危機に⾒舞われた千代⽥化⼯建設。若⼿・中堅社員を中心に、社内には先行きの見えない将来への漠然とした不安感が広がっていました。 個⼈が⾏動を起こすことが難しい⼤企業の中でも、1人の思いを持った社員が、変革に向けて主体的に行動できる基礎を作った有志企画について、企画起案の安部 裕⼀(あべ ゆういち)が語ります。

過去最⼤の⾚字と経営危機、先行きの見えない不安感

▲「次世代DIGGING LAB.」事務局&プレーヤー(起案者 安部は左から2番目)

2018年度に千代⽥化⼯建設は約2,000億円という過去最⼤の⾚字を計上しました。

そこから遡ること6年。2012年には、経営企画部傘下に「未来創造室」が発⾜していました。これは、若⼿・中堅社員の有志で構成された、社内活性化や部署を横断したコミュニケーションの機会創出を⽬的とした有志組織です。

定期的にいろんな企画を開催し、その時々では盛り上がるものの、企画のマンネリ化などが理由で徐々に活動は下⽕になり、上記の経営危機も重なった結果、事実上の“開店休業状態“に陥っていました。

当時、私は「未来創造室」のメンバーではありませんでしたが、2013年にあった、若⼿・中堅が会社の未来について対話する、『未来エンジン』という企画に参加していました。そこでの経験はとても有意義で、上層部にそれなりの評価を頂けたものの、その後の“実⾏“が伴わず、今一歩の結果に終わった不完全燃焼な経験になっていました。

しかし、この経験が、企画の実現に⾄った私の原体験だと感じています。

それ以降も、“社内で何かできることはないか“という気持ちが常にありました。そこに 2018年の経営危機が訪れ、若⼿・中堅社員を中心に、社内には先行きの見えない将来への漠然とした不安感が広がっていました。そして2020年には新型コロナウイルス感染症の流⾏により、⽇本全体がその影響を受けることになりました。

「今こそ⾏動を起こす“時”だ」。私はそこから未来創造室のメンバーを軸にした社内有志メンバーと定期的に集まり、会社を変えるための議論を進めていました。

“時”を同じくして、社内有志メンバーの武⽥ 真樹(たけだ まさき)と⽥中 智史(たなか さとし)の⼆⼈と、ONE JAPAN(※)主催「⼤企業挑戦者⽀援プログラムCHANGE」への参加を決意しました。それは、武⽥と以前から親交のあったONE JAPAN共同発起人・共同代表の濱松 誠(はままつ まこと)⽒からの勧めでもありました。

「CHANGE」は、本気で⾃社・社会を変えていく⼈財(CHANGER)を⽣み出し、変⾰していく⼈を育てるプログラムです。ここに参加したことで、濱松⽒をはじめとする数多くの社外メンターや、魅⼒的な同志たちと出会い、変⾰には「対話」と「学習」が必要だという気づきを得られたことも、今回の企画に⼤きく影響しています。

※「ONE JAPAN」は、⼤企業の若⼿・中堅社員を中⼼に約50の企業内有志団体が集う実践コミュニティ。「CHANGE」などの企画を通して、⼤企業ゆえの難しい改⾰の壁や、新規事業⽴ち上げ、社内イノベーションに挑戦している⼈とつながり、⽀援をしている。

「⾏動を起こす“時”は今!」、社内有志たちとプロジェクトに乗り出す

▲「ONE JAPAN」濱松 誠⽒と社内講演会後に撮影(Tシャツの⼈物が濱松⽒)

「今こそ社内での取り組みを発信する“時”」と、私が起案者となり今回の『次世代DIGGING LAB.』(略称:DIGLAB{ディグラボ})プロジェクトを、専務及び経営企画部⻑に向けて説明し、会社の了承を得た上で、コロナ禍にも拘わらず手上げで集まった社内有志約40⼈と共に活動をスタートするに⾄りました。

このプロジェクトは、3~4ヶ月という期間で、社内の課題を認識し、社内外の有識者の知⾒を積極的に取り⼊れることで課題解決アイデアを提案する“場”を提供し、社内に眠っている熱い思いやアイデアを持った優秀な人財を掘り起こす(DIGる{ディグる})企画です。

【参加プレーヤーの⼼得10箇条/ GRAND RULE】

1. 必ず前向きに議論する姿勢を持って臨む

2. つねにGIVEの精神を⼤事にすること(GIVE&GIVE MINDSET)

3. ⾃らのアイデアに対して有⾔実⾏を⼼掛ける

4. 社会⼈の基本であるホウレンソウを徹底する(ザッソウもOK)

5. それぞれの意⾒を尊重する(BUTからではなくYES AND…の精神で)

6. つねにDORE(⾏動者)としてどう動くべきかを考えて活動する

7. 必ず誰に対しても「FREE」「FLAT」「FUN」のマインドを持ち続ける

8. 会社はパートナーであり、会社ごとを⾃分ごととして考えることを意識する

9. 必ず経営貢献の視点を持って活動する

10. 個⼈が有益と考えるアイデアは積極的に発信していく

何か思うところがありながら、⾃分の内に留めて、“誰か別の人がやるだろう“と受け⾝の姿勢であることが問題だと感じていたので、⼀⼈ひとりが「会社ごと」を「⾃分ごと」として受け入れる事を理念としました。

多くの社外メンターの存在が、会社に⾵を吹き込んだ

▲元ユニクロ上席執⾏役員、神保拓也⽒の講演会。約650名が参加した

実はコロナ禍になってから、様々な知見者による、たくさんの有益なウェビナーが無料で配信されていることに気づき、私の感度で選んだものを積極的に社内に紹介しました。また、社外の有識者を招き、全社向けのオンライン社内講演会を多数企画しました。いくつか具体例をご紹介します。

濱松氏の講演会以降に、最初に企画したのが「出向起業」をテーマにした講演会です。

経済産業省の奥⼭ 恵太(おくやま けいた)⽒に、社内講演会および海外出向中の当社社員とのパネルディスカッションにご厚意で登壇して頂いたのですが、奥山氏と繋がったのは「CHANGE」がきっかけでした。「CHANGE」を通じて得た知識や⼈脈が⼤きな人的資本、社会関係資本になったと強く感じています。

また、元ユニクロ上席執⾏役員(現 株式会社トーチリレー隊長)の神保 拓也(じんぼ たくや)⽒の社内講演会には、社員約1700⼈のうち600⼈を超える⾃発的参加があるなど、活動の認知度が上がったと感じました。

濱松⽒にはDIGLABの伴⾛メンターとして、計3回、DIGLABプレーヤーのお悩み相談役としての対話が実現し、「社外から当社はどう見えているのか」、「社外ではどんな活動が行われているのか」社外目線でのアドバイスを頂く事ができました。プレーヤーからは、満⾜度の⾼いメンタリングであり、活動を絶やさない覚悟を持てたと好評でした。

更に、第2期のProject Managerへ名乗りを上げてくれた林 千瑛(はやし ちあき)は、私の「CHANGE」への参加に触発され、個⼈的に社外の経営学オンラインスクール「hintゼミ」に参加し、そのつながりから同ゼミ創業者で起業家の⻫藤 徹(さいとう とおる)⽒を社内講演会へ招致してくれました。

学習院大学やビジネス・ブレーク・スルー⼤学で教授も務める⻫藤⽒の「⼼理的安全性」に関する社内講演会には、約550⼈参加と反響も⼤きく、グループ会社の社⻑からも、「全社員が見るように」という通達が出たほどです。

また、プレーヤーの活動に書籍要約アプリをトライアル導⼊したところ、書籍から知⾒やマインドセットを学ぶプレーヤーが増え、企画に本格導⼊する事も検討中です。

「DIGLABの活動を通じてワクワクを取り戻せた」とのプレーヤーの声も聞こえ、シニア社員のメンター参画では、その豊富な知識や経験を社内に⽣かせると同時に、技術伝承を行うシニア自身がイキイキとされるシナジー効果も感じられました。

変革への確かな手ごたえ、そしてこれから

▲DIGLAB第1期 最終発表後の1枚。ホッとして笑顔が溢れています

3~4ヶ月間の活動の締めくくりとして、10名を超える経営陣と本部⻑陣に向け、第1期の活動発表を行いました。会⻑からは「成果も⼤事だが対話を重ねるプロセスが⼤事だ」、社⻑からは「第2期も継続してくれるんだよね」、とのお⾔葉をいただきました。

現在は第2期のプレーヤー約50名が、林を中⼼に活動しています。第1期の活動期間終了後もプレーヤーの活動は様々な形で継続しており、「若⼿勉強会」や「ダイバーシティ推進チーム」の発⾜、社外活動から得られた情報の社内共有や対話機会の提供などから、社内に多様な仲間・価値観があることが再認識され、コミュニケーションも増えました。

そしてDIGLABの社内での認知度も上がってきたと感じています。

「SELFCHANGE」&「SELFCOMMIT」の理念のもと、社員個々人が⾃ら変わり、⾃分⾃⾝の⽬標にコミットして⾏動することが、会社全体の⼒の底上げに繋がるという想いがあったので、それが継続されていることを事務局として嬉しく思っています。

私は第1期の活動後に、偶然にピーター・センゲ⽒の『学習する組織(※)』に出会いました。図らずも、今回⾃分たちのやってきたことが『学習する組織』の中に表現されている事だと気づき、私を含め第2期事務局メンバーたちにも深い腹落ち感がありました。

第2期には、この知⾒を企画設計に織り込んでいます。DIGLABの活動は5年計画での継続を考えています。現在も経営再建中である当社の恒常組織を巻き込み、進化(深化)や新しい取り組みに派⽣しながら、⼀⼈ひとりがシナジーを発揮することを⽬指していきます。

※『学習する組織』ピーター・M・センゲ⽒の著書。