at Will Work

WORKSTORYAWARD2021

これからの日本をつくる100の“働く”をみつけよう「Work Story Award 2021」の受賞ストーリー、
一次審査通過ストーリーを公開しています。
084/088

子育てを強みに自分らしく働く。子連れMBAで見つける自分らしいライフキャリア

子連れMBA by 一般社団法人ぷちでガチ
  • 審査員特別賞
子育て世代から社会の「あたりまえ」を変える!そんなビジョンをかかげ、子育て世代の集うラーニングコミュニティ「子連れMBA(Makers of Business Art)」を運営する一般社団法人ぷちでガチ。代表の赤坂 美保は自身の経験から育休中に子連れ参加できる「学びとつながりの場」を作り出しました。

赤ちゃんを抱っこしながらでも、頭は使える

 ▲赤ちゃんを抱っこしながら勉強会

「子育てがマイナスではなく、相乗効果となる働き方ができる社会になればいいのに」

長男出産後、子育てを続けるだけで精一杯。ワーキングマザーとして全く余裕のない日々を送る中で感じた想いでした。

そんな想いが大きくなっていたころ、次男を出産。この育児休暇をチャンスだと捉え、ワーキングマザーが復職後の武器とする何かができないかと考えたことが、2015年に赤ちゃん連れのビジネス講座「ぷちでガチ!子連れMBA」を立ち上げるきっかけとなりました。

長男が生後3週間の頃から、大学院の授業に復帰していたので、クラスメイトとのグループワークにはいつも、赤ちゃんを抱っこして家からオンラインで参加していました。赤ちゃんを抱っこしながらでも頭は使える。その経験が本ビジネス講座のベースになっています。

「ぷち」という言葉には「子ども、赤ちゃん」と「こまぎれの時間」という、子育てをしながらの制約された時間という意味を込めています。その中で「ガチ」で取り組む。ガチで仕事をするだけでなく、ガチで楽しむというメッセージも盛り込みました。

「子連れMBA」では、第一線で活躍する大学教授や実務家を招き、ハイレベルなビジネス講座を開催しています。ただ、立ち上げ当初は会場を探すのも一苦労。「赤ちゃんと一緒はお断り」と何十件も断られました。粘って粘って、やっと会場を借りれたときはホッとしましたね。当時は「子連れ」ということ自体がタブーとされていたので、ここを乗り越えられたときの嬉しさは忘れられません。

また、当初数名だった参加者が、毎月30〜40人と増えていき、今ではのべ3,000人以上が参加するようになりました。数年前にはYahoo!ニュースなどに掲載されたことがきっかけで、名古屋や仙台など地方都市をつないで開催。昨年はフルオンラインへと変化することでどんどん活動の輪が広がっていきました。

子育て世代からリーダーを輩出、子育てをデメリットではなく強みに

▲リモートでつながる様子

「子連れMBA」は学びはもちろん、つながりを大切にしています。いろいろな人とつながることで視野が広がり、育休から復職した時にもきっと役に立つ。そんな想いがあるからです。

そして、“学び”ながらキャリア意識の高いワーキングマザーと“つながれる”場所で、同じ想いを持つ仲間とともに、子育ても仕事を楽しめるようになる。それが「子連れMBA」でできることです。

ところが、2020年から本格化したコロナ禍においては、保育園の救援をはじめとするさまざまな影響で活動が止まりかけてしまう状態に陥りました。

でも、こういう時だからこそ、つながりを大切にしたい。つながりの場で勇気、元気を与えるような活動をしていこう。そう考えた私たちは、ビジョンを見直すことから始めました。

それまでは“学び”と“つながり”を大切に、自分たちの視野を広げ、自分たちが“変わる”活動をしてきました。それももちろん大切なのですが、これからはその学び、つながりをきっかけに、私たちが日本の社会を“変える”存在になろうと、運営メンバーのビジョンが明確になったのです。

ビジョンをそう定めたのには、理由があります。

これまで、出産後の復職では、その会社のカタチに私たちが合わせていました。しかし、これからは、出産・子育てという経験から、これまで見えなかったものが見えるようになった私たち自身が会社のカタチを変える役割を持っているのではないかと、考えたのです。

そうすると、リモートワークやフレックス勤務など、柔軟な働き方が広がり、私たちのような子育て世代だけではなく、介護中の方や病気などで出社できない方でも、仕事を続けられるようになります。

実際に、「子連れMBA」への参加をきっかけに視野が変わり、会社での働き方を変える行動を起こしたメンバーはたくさんいます。もちろん、それでも変えられない状況にギブアップし、転職や独立など新たなキャリアを歩むケースもありますが、どんな形であれ、卒業生は少しずつ、社会を変えていっています。

子育てで得た視点を活用して、私たち子育て世代が、会社組織の中から働き方を変えていければよいなと思います。

もちろんこれは、女性に限ったことではありません。「子連れMBA」は子育て世代を対象にしているので、男性や企業、行政なども巻き込んでいきます。そうすることで、子育て世代の女性、男性が子育てをデメリットではなく、強みとして活かせる働く環境をつくっていけると思っています。そして、そんな環境は、子育て世代だけでなく、あらゆる人にとって個性を活かせる場所になるはずです。

そのために「子連れMBA」は、私たち子育て世代が、仲間と共に自分らしいリーダーシップと、ビジネスの力を磨く場所として、社会にイノベーションを起していきたいと考えています。

仲間がいるから踏み出せる、新しい一歩

▲一人ひとりがやりたいことを実践しています

コロナ禍をきっかけに、ビジョンが明確化しました。それ以来、活動を完全にオンライン化し、リーダーシップのための知識と経験が養える「学びの場×実践コミュニティ」として、私たち「子連れMBA」はアップデート中です。

Knowing(学ぶ)Doing(やってみる)Being(自分を知る)という、ビジネス講座以外の学びをはじめ、リーダーシップとビジネスの力を身につける取り組みをしています。

関西を中心に発足した活動ですが、オンライン化することによって全国から参加しやすく、今では海外からの参加者もいます。

また、完全にオンライン化したことで、育休中の学びだけでなく、復職後の学びの場としても活用できるようになりました。ビジネス講座などの講義は録画しているので、時間を拘束されずに学べますし、チャットツールを使ったメッセージで仲間とのつながりも感じられます。

子育てと両立する中で仕事の悩みを抱えることがあれば、仲間に話すことで自分では気づけなかった部分を指摘してもらい、それが大きな力になることもあります。

また、異業種・異職種の仲間がきっかけで、パラレルキャリアを歩み出すメンバーもたくさんいます。お互いの存在が刺激になり、新しい一歩を踏み出すきっかけになっているのです。

このような歩みの背景には、「子連れMBA」のチームが掲げる「会社と真逆の働き方をしよう」というスローガンがあります。「子連れMBA」は参加者による運営を行っており、運営メンバーは育休中の者を中心に毎年入れ替わります。

また、全員複業(副業)をルールにしているティール組織などを参考に、普段と反対のことをする、一人ひとりが意思決定できる組織をつくりあげてきました。

そのような活動を続けた結果、ワーキングマザーのエンパワメントに加え、会社では得られないリーダー経験を積むことができ、現状を変えるリーダーシップを醸成することにつながったのです。

子育て中だからこそ、社会を変えていける

▲ママもパパも、子どもと一緒に

「子連れMBA」のMBAは経営学修士ではなく、Makers of Business Art。「ビジネスをツールとして自分を表現する」という意味です。

子育て中だからこそ、自分らしく働き、自分らしく生きる。自分らしさを追求し、行動をおこすことで自分も、そして周りの環境も変えることができます。そうすることで、より良い社会へと変えていけるんじゃないかと考えています。

今後は中小企業向けに、私たちの活動やサービスを活用していただけるような「変革人材をうみだすインフラ」を目指していこうと思っています。企業が独自で実施している女性向け研修などにかえて、「子連れMBA」の学びとつながりをもっていただけたら、より多くのワーキングマザーが活躍できる環境を生み出すことができます。

「子連れMBA」を通して、私たち子育て世代が学び、つながり、そして挑戦することで、新しい世界を創り出していきたいと思います。