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エイチームがAIプロジェクトを推進!「AI基礎研修」を全社員を対象に実施

株式会社エイチーム
株式会社エイチームは、IT企業で働く社員にとって、AIやITの教養がビジネススタンダードになると考え、職域に関係なくAIの基礎知識を身に着けるため、全社員に「AI基礎研修」を実施。プロジェクトの立役者である藤本が、実施にいたるまでのストーリーを語ります。

社内初のAI研究・開発プロジェクト「AI WORKING GROUP」

▲AI WORKING GROUPリーダーの藤本

エイチームはインターネットを軸に多様な事業領域にビジネスを展開する、総合IT企業です。持続的な企業・事業の成長に向けて、サービスの本質的な価値の向上を目指しています。

変化が激しいインターネット市場の中では、AIなどのデジタル技術を活用し、競合サービスとの差別化を図ることは必須です。ところがAIプロジェクトを推進する以前の当社には、社内でのAI施策の実践例は少なく、ビジネスにおけるAIの具体的な活用イメージがありませんでした。

また、社内にディープラーニングをはじめとするAIに関する知見がある社員も少なく、ノウハウや実績の積み上げが難しい状態であり、AI人材の育成が課題でした。学生時代にこの分野を専攻していた藤本は、入社当時をこう振り返ります。

藤本 「私が入社した2016年当時のエイチームは、AIの導入が進んでいるとはいえない状態でした。他社と比べるとAIに関する取り組みが少し遅れているのではないかと危機を感じていました」

そこで藤本は、配属されたエンターテインメント事業で、まずはゲームプランナーとしてゲーム内で活用するAI施策を企画します。そしてAIの知見を活かし、自身でモデルを作成することで、自らを手本として一緒に働くメンバーにAIの必要性を伝えていきました。

さらに、藤本は、社内AI勉強会などの活動も有志で行いました。そんな藤本のもとに、あるとき、エイチームの取締役でエンターテインメント事業部本部長の中内が「AIに関心を持っている」との情報が入ります。

社内へのAI導入のきっかけとなる大きなチャンスだと捉えた藤本は、中内と食事の約束を取り付けると、その食事の場でAIを活用した施策のプレゼンを行いました。それが功を奏し、AI企画の導入がトライアルで開始されることになります。

藤本 「エンタメ事業で初の機械学習を使った施策導入を行った結果、KPI(重要業績評価指標)が改善したという成果が出ました。その後、改良を積み重ねていくと、少しずつ社内のAI施策数が増えていきました」

こうした活動が認められ、2018年8月に全社横断のAI研究・開発プロジェクト「AI WORKING GROUP」が発足。藤本はリーダーとして社内のAIリテラシー向上へと奮闘します。

AI研修の実施決定。今後のビジネス展開にAIは欠かせない

▲講義の内容

AI企画は、成果が認められたことで、代表取締役社長の林の目にも留まりました。

エイチーム社内はもちろん、社外でのAIの盛り上がりを実感した林は、AIに興味を示し、他社サービスのAI講座を受講。「今後のビジネス展開において、AIは欠かせない要素である」と感じ、エイチーム社内のエンジニアとトップ層にも、このAI講座への受講をすすめます。

そうして、経営陣のAIへの関心度も高まり、エイチーム全社員へのAI基礎研修の実施が決まりました。この研修の学習範囲では、ディープラーニングの基本を学びました。

藤本 「多くの人は、AIという言葉自体は知っているけれど、具体的な仕組みは理解できておらず、なんでもできてしまう魔法の”ブラックボックス”というイメージを持っていると思います。でも実際はそうではありません。

ですから、そのイメージを持つ人しかいない今の状態では、社内でAIの適切な導入は進まず、エイチームは後れを取ってしまうことがわかっていました。そんな中で、AI研修の実施が決まったのです」

実施が決まったことは朗報でしたが、AIを学ぶ上では数学や統計の知識が必要なため、AI研修を実施する上では、手を出しにくい小難しさをどう乗り越えるかという課題がありました。

また、ビジネスへのAI活用をさらに推し進めるために、このAIリテラシーを上げるための勉強を、AIの専門家に限らず、多くの社員、とくに事業判断を行うトップ層に行ってもらうことも課題の1つでした。

こうした課題を解決するため、藤本を含むAI研修チームと人事部が協同で、エイチーム全社員を対象としたAI研修を設計することになります。

ビジネス領域の社員にフォーカスした「AI基礎研修」

▲AI研修の様子

AIについて全社員が理解していく必要がある一方で、「全員が専門的な内容のAI研修を受ける必要があるのか」という声もあがりました。

藤本 「エイチームには多様な人材がいます。たとえばデザイナーなどの職種によっては、『本当にそこまでAIについての知識が必要なのか。会社として工数をとるべきなのか』という意見もありました。

しかし、AIは特別なものではなく、当たり前のノウハウとなる時代になりつつあります。そのため、AI研修の運営メンバーと人事部メンバーで議論を重ねた末に、『職域によってAIは不要という考えは、前時代的ではないか』という結論にいたりました」

そうして、AI研修の運営メンバーと人事部メンバーは、AI研修のメインターゲットを「ビジネス領域の社員」とし、”数学の基礎知識を学ぶ”ことからブレないようカリキュラムの設定をしました。

そのため、全8回のカリキュラムでは、基礎的な部分に当たる、AIの活用内容、数学・統計の基本、ニューラルネットワークの10時間分のみが必須科目に設定。

また、「エンジニアだと、AI研修は基礎的な内容になってしまう」という声もあったため、エンジニアに向けては実践的な演習を含めた任意の講義を用意し、これまで理系科目を履修してきたメンバーにも満足してもらえる講義内容になっています。

6割弱がスキル向上を実感!他部署との会話も増加

▲AI研修によって他部署間のコミュニケーションも円滑に

「AI基礎研修」は、目標に“全社「AI」基礎力アップ!”を掲げ、2020年8月〜2021年2月の期間で実施。デザイナー、営業、経理や法務などのコーポレート部門も含め、エイチームグループ全社員を対象としました。

学習は、eラーニング形式での学習動画や、AI研修設計者が収録した動画で進めます。必須科目の学習時間は業務時間とみなし、自分の好きなタイミングで受講が可能。そして、2021年2月には全社一斉テストを実施しました。

受講後に実施したアンケートには、6割弱の人がスキル向上の実感を得ているという結果に。

藤本 「AI基礎研修を経て変わったのは、エンジニアとの会話の質です。これはアンケート結果にも出ていて、受講した社員からも同様の変化を感じているという声があがっています。

これまではAIの知識がない社員とエンジニアの間では、コミュニケーションが難しいと感じていました。しかし、研修でAIへの理解が進むことにより、エンジニアと生産性の高い会話ができたり、その中で新しいアイデアが生まれるなど、さまざまな効果が現れています」

また、AI基礎研修の学習期間後に実施した全社一斉テストでは、テストの平均正答率が90%を超える結果に。AI基礎研修によって、AIリテラシーを持つ会社へとエイチームは変化していったのです。

藤本 「社内からAI WORKING GROUPへのAI施策の相談数も増加しました。事業部横断でAIに詳しいエンジニアを派遣し合うようにもなりましたし、エンジニア以外の企画やマーケター、デザイナーなども、AI施策について積極的に議論している様子も見かけるようになりました。

このようにAI研修により社内にAIが浸透し、企画立案や施策の改善スピードが加速化したことも、とても嬉しい成果です」

成果を踏まえ、藤本はさらなる未来を描いています。

藤本 「ビジネスの中核にAIを据えることは、エイチームにとって今後の大きな展望です。ですから、今後も新入社員に向けてAI基礎研修を実施し、引き続き社内のAIスキル向上に努めていきます。

また、社内におけるAI活用例を全社員で共有し、さらなるAI活用事例を増やしていくことも忘れません」

ビジネスにおけるAI事例を貯めていくことでインプットを増やし、技術を最大限に活用していく。エイチームは、こうした取り組みを通じて、顧客からより選ばれるサービスの提供を目指していきます。