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社員の幸せを考え、より良い環境を「ともに創る」──トモエシステムの“大改革”

株式会社トモエシステム
これからの時代、労働人口が減っていく中で優秀な人材の確保は難しくなります。株式会社トモエシステムでは社員の幸せを追求することこそが優秀な人材確保の鍵だと考え、社内の働きやすさと働きがいの実現に取り組みました。創業73年の歴史を持つ会社が変化に挑んだストーリーを執行役員人事総務部長 大竹 祥司が語ります。

「働きたい!」と思える会社にするために、歴史にメスを入れる

▲社内では社員がイキイキと仕事をしています

株式会社トモエシステムは1947年創業、73年の歴史を持つ産業機械部品の専門商社です。とくに油圧ショベルカー市場では国内すべての建設機械メーカーの生産ラインに製品を納入しています。産業機械市場は、都市土木インフラの構築や災害防止など社会への貢献が大きく、これからのマーケットの成長は右肩上がりだと予想されています。

マーケットが拡大する一方で、少子高齢化は進み、労働人口は減っていく時代に。時代変化の中で優秀な人材を確保し、生産性を高めることが企業に求められていく中で、トモエシステムも社会の変化に対応しなければ、と危機感を感じていました。

大竹 「売り手市場の時代が続く中で優秀な人材を採用をするには、前提として企業価値が高くなければいけません。『働きたい!』と思ってもらえるような企業であるためには社員の働きやすさと働きがいを追求し、社員満足度を高めることが最優先だと考えました。社員の豊かな生活を実現することがわかりやすく企業価値向上に直結し、同時に採用の難しいニッチな業界にあっても優位性を担保できると思ったんです。

そのためには『社員の能力を磨いて個性を発揮し成長を感じられる仕事のやりがい』『価値に見合った賃金体系』『快適な職場と福利厚生』、この3点が不可欠と考えました。これらを実現し社員満足度を高めるため、2016年より本格的な改革をスタートさせます」

この改革はスピード感を重視し、経営陣中心のトップダウン型で進めることに。そこには経営陣のこんな想いが込められていました。

大竹 「この改革はこれから会社を経営していく上での経営陣の覚悟表明でもありました。改革には手間もコストもかかります。それでも行うのは、『社員と会社がともに幸せであることを追求する』という会社としての姿勢を社員に示すためです。この改革を通して社員にはイキイキ、ノビノビと安心して働ける会社であるということを感じてほしいと思っていました」

スピード感ある課題解決を。新人事・賃金制度から男性育休制度まで、生まれたさまざまな施策

▲薄暗い建物だった本社は、改修されデザイン性のある明るいオフィスへと変わりました

まず着手したのは働きやすさの追求でした。

2016年、代表取締役 柳瀬 秀人自らが旗を振り進めてきた改革をさらに推進するため駆けつけたのが人事・営業ほか多様な知見を持つ大竹でした。大竹の他にも豊富な経験を持つ人材が次々と集まり始め、改革の歯車は徐々に動き出しました。

その結果、5年間に全18件もの施策に取り組みます。内容は有給取得率アップから、社員の健康管理強化、本社の改修など多岐にわたりました。スピード感のある舵取りが数多くの取り組みを生み出したのです。

大竹 「たとえば男性の育休取得制度は、社長の柳瀬と私がホワイト財団の表彰式典で男性育休の講演を聞き、さっそく自社でも取り入れようと翌週の朝礼時には社長が『男子育休100%宣言』をしました。パパ休暇・ママ休暇規程を制定し社内で周知すると、当年度から取得率100%を達成できました。短期で完全に浸透した制度のひとつです。良いと思ったものはすぐに取り入れ、結果が想定とずれたら修正する──これをひたすら繰り返しました」

中でも力を入れていたのが賃金制度の改正です。上場企業からの転職者受け入れも見据えた賃金テーブルをつくり、経営の鍵となる人材投資体制を整えていきました。

大竹 「賃金が上がった先のゴールから逆算し、評価と賃金の連動性をルールとして定めていきました。2016年に取り組みを始めた段階で『3年後に全社員の賃金20%アップすること』を目標に導入を進めたんです。その結果、1年半後には好調な業績も手伝い、社員平均年収14%増 、3年後には20%増と想定していたとおりの上昇となりました」

変化によって生まれた会社と社員の新たな信頼関係

▲改革により社内研修の機会も増え、社員の学び幅が広がっています

すべて、社員を想って行った施策であったものの、古い歴史があるからこそ会社の変化に戸惑い、不満を漏らす社員もいました。

大竹 「たとえば、賃金制度改革では『自分はもっと昇給率が高くあるべきでは』とクレームが出たり、福利厚生制度については『どうせ誰も使わない、無駄じゃないか』と不満の声があがったり、何をしても批判的の声は大なり小なりありました。正直、いろいろと言いたくなる気持ちはありましたが、変化にはこうした葛藤が世の常。結果が全てで、これは会社の成長痛だと捉えていました」

本格的な改革を開始してから5年。次第に社内の雰囲気にも変化が表れ、2015年は自社離職率が12.0%だったのに対し、2019年には2.3%へと圧倒的に下がりました。社員たちも徐々に会社が社員の将来や幸せを考えているという姿勢に気づき始め、会社と社員の間に新たな信頼関係が生まれ始めたのです。

大竹 「改革の結果が社員に返ってくるに従い、少しずつ社員が会社を信頼し始めてくれたように思います。さまざまな施策を打つごとに『会社が自分たちのことを考えてくれている』と社員が経営の意思を感じたことが、大幅な離職率低下のひとつの要素ではないかと思います」

トモエシステムの社員に対する姿勢は対外的にも評価され、近年ではホワイト企業アワードにも選出されました。

また、社員の幸せを想う会社の姿勢は昨今の出来事にも表れています。新型コロナウイルス流行によって緊急事態宣言が発令された2020年5月、厳しい業績となり先行きの不透明感が漂う中、トモエシステムでは社員への決算賞与支給を決めました。

大竹 「正直この厳しい状況下で昨年度の実績結果への還元といえども、通常賞与とは別に決算賞与を支給する会社は、まずないでしょう。ここで、『やれば 認めて 遇する』の人事・賃金の信念を揺らすことなく、ぶれることなく、社員の頑張りを正しく評価し、賞与支給となったのは、経営トップ陣の決断でした」

会社の成長と社員の豊かな生活を「ともに創る」経営が、働きがいを生む

▲4カ国で働く社員が集い、船上パーティーを開催。世界中で社員がやりがいを持ち、働いています

2016年から5年間働き方を追求してきた結果、さまざまな福利厚生を始めとする制度の追加や見直しが行われ、社内の環境は大きく変わりました。働きやすさを実現した今、働きがいを追求していくことが今後の会社としての課題です。

大竹 「働きがいは制度を整えて解決するものではなく、社員自身が仕事に対してどう向き合い、何を感じるか、仕事への姿勢こそが重要です。会社ができることには、限界がありますが、環境を整え、社員の強みや個性を引き出し、これまでにないスピード感で抜け出た人への鮮明なメッセージを送ることが必要ではないかと思っています。

2020年8月、withコロナ時代を見据え改定した人事制度では、昇級昇格へのスピード軸の廃止、エリア総合職の新設、資格手当の拡充など『やれば 認めて 遇する』経営の加速化・鮮明化を図りました」

しかし、それは一概に社員の待遇を良くすることを表しているわけではありません。

大竹 「全社一丸となり成長し、昇級・昇格者が多数でることは喜ばしいことですが、一方で残念ながら自分を発揮しきれず真反対の状況となる社員が出ることもありえ、その結果、下がり続け異常値となった離職率が上がることがあるかもしれません。これもまた、会社が進化をする上でのひとつの過程だと思います。こういった過程を通して会社が成長し、社員が幸せを感じ、働きがいが生まれるさらなる環境を創っていきたいと思います」

女性のマネージャー率が0%から17%まで上がるなど、すでにスピード感のある人事評価制度によって効果も見え始めています。社員が個性を発揮し、強みを生かし、成長できる環境が徐々にでき上がりつつあるのです。

これからの時代変化に向け、とことん社員の幸せを突き詰めた5年間。これからも社員の幸せを追求し、会社の成長と社員の豊かな生活を「ともに創る」経営は、トモエシステムの根となり、次の世代へと続いていきます。