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これからの日本をつくる"働き方"のストーリー

主役はママ。働く場所、憩いの場所をつくり上げた"子ども好きオーナー"の覚悟と想い

低糖質cafe&bar 華美
私たち「低糖質cafe&bar華美」は、大阪中崎町にある小さなカフェです。 低糖質のメニューを展開していること、そして"子連れでママが働き、子連れのお客様でにぎわう場所"となっていることが大きな特徴です。オープンから2年半が経った今、オーナー店長・丸本華余のこれまでの歩みと想いに迫ります。

2歳児を持つママに相談。“思いがけぬコンセプト”でカフェの本格開業を決意

低糖質cafe&bar華美は、店名の通り、低糖質の食事・スイーツを提供するカフェです。オーナー店長の丸本 華余が、自身の低糖質オフダイエットの経験からヒントを得て作成した独自メニューを展開しています。

丸本 「『ダイエットや美容に特化した飲食店をつくる』というのが私の夢でした。一方で踏み切れない理由は山ほどあり、一度は美容関係の仕事に就いたこともあったんですが、カフェはオーナーどころか、バイト経験もなし。調理師免許もないし、パティシエでもない。そんな私が務まるのかと、ためらっていました」

でも、どうしても開業したい──そんな中、ある日、あふれる気持ちを抱えながら親友の山口 優美に相談した丸本。すると「オープンしたら私もそのカフェで働きたい」という意外な反応が返ってきました。

丸本 「当時、彼女は『 2歳の娘を連れてでも働きたい。活躍したい』という気持ちが強くありつつも、条件の合った仕事に巡り合えていない状況でした。それもあってか、私のカフェ開業話から『子連れ出勤できる職場がない』『このエリアには子連れで外食できる場が少ない』というようなママならではの悩みに発展して。話をしながら『だったらママならではの課題が解決できるカフェをつくろう』と腹が決まったんです」

「低糖質メニュー」とママとの相性がとても良いことも丸本の背中を押しました。妊娠中は、医師から糖質について細かく指導される上、出産後は「産後ダイエット」を気にする人も多いと友人たちから聞いていたのです。

それから5カ月後。大阪きっての繁華街・梅田に近いエリアで、駅から徒歩1分という好立地の物件と出会い、本格的な開店準備を開始。資金が不足していたため、壁のペンキ塗り、壁紙・天井・床張りをはじめ、丸本のアイデアによる「キッズスペース」や「小上がりの座敷席」など、すべての内装をDIYで施しました。

丸本「オープニングスタッフは気ごころ知れた友人で集めたかったので、募集広告やビラなどは使用せず、声を掛けるのみで。当然友人を雇用することへの不安はありましたが、やってみないとわからないし、逆にうまくいけば最高だなと思って」

2017年4月。丸本はいよいよオープンへとこぎ着けました。店名は自身の名前を一文字取った「低糖質cafe&bar華美」。7人のスタッフの中に親友・山口も迎え、心強い船出となりました。

お互いに「心からフォローしてあげたい」と思える関係づくりが大切

オープニングスタッフには「結婚前までカフェに勤務していた」「第2子出産後、保育園に入り次第、仕事をしたいと思っていた」など、さまざまな状況下にある“実は働きたかったママ”が集結。子連れ出勤を可能にしたことで、埋もれていた貴重な労働力を引き出すことができました。一方で、雇用するオーナー側としては相当の覚悟が必要でした。

丸本 「子どもが熱を出してしまい、突然シフトに穴が開いたり、幼稚園・保育園の行事で同じ時期にみんなが休暇を取ったり……。人手不足になるケースを想定していたものの、シフトを組みながら、運営していくのにはたくさんのハードルを越えなければなりませんでした。

まず着手したのは、しくみづくりです。行事の年間スケジュールを出してもらって、あらかじめスタッフの休暇時期を把握しておくようにし、土日のどちらかには必ず休みを取ってもらうようにしたのです」

しかし、どんなにしくみを整えても、突発的に発生する欠勤は多々あります。スタッフがお互いをフォローしつつ、それでも埋めきれないときは、オーナーであり独身でもある丸本の出番。

これまで丸本がひとりでお店を開けたことは1度や2度ではありません。こうした経験を重ねながら、ひとりでも対応できるよう店内の配置を変える、料理の仕込み時間をあらかじめ捻出しておくなどの工夫を凝らしていきました。

丸本 「うちの職場は、とにかく協力し合えることが大前提。私も含めたスタッフ全員が『心からフォローしたい』と思える関係でないとスムーズな運営は難しいんです。ですから、チャットや会食など、できるだけコミュニケーションできる場を設けて交流を深めてもらっています」

スタッフ全員が「子ども好き」であることも、好影響を与えています。丸本自身もベビーシッター資格を取得しているほどの子ども好き。スタッフの子どもが熱を出したときには、心配してお見舞いに行くことも度々あり、来店した子どもにはオープン当初から“飴ちゃん”や小さなお菓子を配り、親交を深めています。

接客や内装に込められた「子どもへの愛」がお客様にも通じたのか、低糖質cafe&bar華美の名は、近隣エリアを中心に口コミでじわじわと広がっていきました。

オーナーが居続けることで、お店は活性化する

開店から1年経ったころ、低糖質cafe&bar華美は「ママが働き、子連れ客がゆったり過ごせる場所」として定着。スタッフだけで支障なく運営ができるようになり、丸本は少しずつ現場を離れていきました。「ようやく経営に注力できる」と思ったのもつかの間、お店の存続を揺るがす事態が起きます。

丸本 「半年ほどで売上が激減してしまったんです。原因を追究してみたところ、一部のスタッフの接客に問題があることが発覚しました。現場を不在にしていたために、その事実を見逃してしまっていて」

以降、丸本はできるだけお店に立つことに。すると、ほどなくして客足が少しずつ戻ってきたのです。売上増の兆しが見えてきたとき、丸本はさらに新たな決断を下します。

丸本「有料広告をすべて解約したんです。うちのお店は雑居ビルの2階にあり『入店するのになかなか勇気がいる』という声も多く、入口のドアを開けるまでに1年かかったというお客様もいらっしゃいます。そのハードルを広告でカバーしようと考えていたのですが、実はお客様の背中を押せるのは、オーナーである私がお店に立ち、しっかりとお出迎えすることなのではないかと思ったんです」

この仮説は見事に的中。広告を解約してからも売上は増え続け、丸本は自身が「お店の顔」となることの意義を強く実感しました。

今では、50%以上のリピート率を誇り、オープン当初に比べて約1.5倍の売上となった当店。お客様だけでなくスタッフからも「自分の働いている姿をわが子に見せられるのが嬉しい」「子連れのお客様に安心してご利用いただけているのがやりがい」という声が挙がり、ママが働く喜びを体感できる場所へと成長。そんなお店の雰囲気に引かれ、お客様がスタッフとなった例もありました。

「子育て中でも夢はかなえられる」そんな手応えを感じ、独立するスタッフも出てきました。

親友の山口はキッチンカーを使った移動クレープ店を開業。もうひとりのスタッフはレンタルスペースでのカフェ出店を限定的にスタートさせたのです。

自分もいつか、赤ちゃんを抱えながらこの場所で働きたい

相次ぐスタッフの独立。今もスポットで勤務してくれているものの、大きな戦力だったスタッフが抜けた穴は大きく、人手不足は今も続いています。

丸本 「うちのお店で子連れ出勤してみて得た『子どもが職場にいても働ける』という自信、そして『子どもがいるとお客様に良い印象を与えられる』という気づきが独立へとつながったみたいで。たしかに店の運営的には厳しくなりましたが、徐々に夢をかなえていく彼女たちの姿が励みにもなり、嬉しくもあります」

人が足りなくてもお店は開店させなければなりません。丸本は営業時間の一部短縮を決めました。

丸本 「今の営業時間は去年の 3分の 2程度。それでも売上は上がっているんです。スタッフの人数を最小限に抑えたいという考えがもともとあり、力を入れていた販売やデリバリーが軌道に乗ってきたのが大きな要因ですね。少人数で運営していきたい理由は、スタッフ間の絆が深まりやすいからです。

以前増員したときに、みんなが自分本位な思考になってしまった経験から、大勢のスタッフをマネジメントする難しさを知ったんです。それもあって、現時点では 2店舗目の出店は考えていません」

オープンから2年半が経った今、当初思い描いていたお店の形に50%ぐらいは近づけたかな、と話す丸本。低糖質関連のイベント会場として利用されるなど、もともと発信したかった「低糖質メニュー」というコンセプトは伝わりつつあります。

丸本 「カフェを始めてみて一番想定外だったのは、たくさんのママとのご縁ですね。やはり、ママが持つネットワークや口コミ力は強力。親友の山口に相談しなければこうはならなかったと思うので、非常に感謝しています」

今後も、ママスタッフを採用していきたいという丸本。自分が結婚して、ママとなったときのために彼女たちからもっと勉強させてもらいたいし、出産で現場を抜けざるを得ない期間もフォローしてほしい。そして、育児に突入しても赤ちゃんを背中に抱えながら、お店に立ちたい──プレイイングオーナーであり続けたいと願う彼女の将来像はとても具体的です。

低糖質cafe&bar華美を舞台に繰り広げられる、ママが主役のストーリー。人と人の輪をつなぎながら、これからもたくさんの作品が生み出されることでしょう。

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