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これからの日本をつくる"働き方"のストーリー
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80歳を超えても、仕事が生きがいになる社会に。主婦たちから見いだした女性の可能性

ソフトブレーン・フィールド株式会社
主婦が持つ潜在能力を、もっと社会に生かせたら......女性に向けた働き方の新常識をつくるため、当社はフィールド・クラウドソーシング事業をスタートさせました。当社のビジネスモデルがどう受け入れられ、浸透したのか。そして事業で実現したい理想の社会とは。経営企画部の山室直経と石井麻美がご紹介します。

場所も時間も選べる! 主婦の能力を生かして新しい働き方を普及させたい

▲創業者の木名瀬博

「クラウドソーシング」という言葉がまだ一般的ではなかった2004年、当社はそれをフィールドマーケティング事業という型でスタートさせました。

これはパートタイマーではなく、登録者は個人事業主として契約し、自身の裁量で働くという「新しい働き方」を展開する事業です。

個人事業主として登録して働く皆さんを「キャスト」と呼び、店頭販促やフィールドリサーチ、営業支援などの依頼内容を企業から業務受託し、キャストに業務委託として依頼しています。

この事業は、当社代表の木名瀬がアサヒビールに勤めていたころの実体験をきっかけに生まれました。

木名瀬はパート社員の女性たちが、発想力や細かい配慮ができる繊細さ、コミュニケーション術など多くの能力を持っていることを感じていました。それは主婦である彼女たちが、これまで家事や子育てで培ってきたものでした。

これから人口減少が進む日本でも彼女たちの力を引き出し、仕事として生かしたい──。

実際に正規社員とパート社員の生産性を調査したところ、パート社員の方が4.4倍も高いという現実を知り、その気持ちはいっそう強くなります。

しかし、女性のための新しい働き方を実現するまでの過程は茨の道。いくつもの課題がありました。まず専業主婦を経た後の就職となるため、年齢的な問題で応募できる企業が限られていました。さらに育児や介護のために平日にまとまって時間を取れない、勤務地に行けないなど、時間や場所の制限も立ちはだかります。

そこで木名瀬は、女性たちが「場所」「時間」「種類」「量」を自由に選択し、働けるしくみをつくろうと思い立ちました。

フィールド・クラウドソーシング事業は普通の委託事業とは異なり、当社が依頼企業と雇用者の間に入ることで、サービスの品質管理をしっかり行います。また契約まわりなどを請け負うため、キャストたちは安心して働けるという利点があります。

木名瀬は2004年にソフトブレーン・フィールドを設立。このかつてないビジネスモデルを携え、営業をスタートしました。しかしこの事業と、雇用制度の常識の違いに苦しめられることになります。

足で営業していた地道な活動が実り、メディア露出で急拡大

▲経営企画部 山室直経と石井麻美

事業をスタートした当初は雇用契約による時間拘束型の働き方が一般的だったため、契約に関してなかなか進めづらい状況でした。新規キャストの募集時にハローワークへ相談したところ、まだ珍しいビジネスモデルだったために「募集の対象外です」と言われてしまったのです。

そこで営業メンバーたちは地域の商工会青年部などへ出向き、在籍する方の奥さまたちに向けて営業活動をスタートしました。2012年に当社へ入社した経営企画部部長の山室直経は、創業当初から事業のことを知っていたひとりでした。

山室 「当時はパソコンメーカーの営業企画にいたのですが、全国でラウンダーを雇い、営業をしてもらう必要がありました。数十人のラウンダーをマネジメントする必要があったので管理も含めてコストがかかり、大変だったんですよね。
そんなときにソフトブレーン・フィールドの事業モデルを知って、なんて先進的なしくみだろうと。しかも理解が難しいモデルのため、一社一社にコツコツと営業活動をしていることにも驚きましたね」

営業が依頼企業を地道に切り開き、口コミも広がりました。その効果で少しずつ全国にキャストが増えていったのです。そんなとき、2009年に転機が訪れます。

TBSの朝の番組に、ソフトブレーン・フィールドのフィールド・クラウドソーシング事業が紹介されたのです。全国の視聴者から応募が殺到し、キャストは一気に5000名も増加。さらにクライアントからの問い合わせも増え、知名度を上げていきます。

働くきっかけになれば……全国のキャストをつなぐプロジェクトも始動

▲介護と仕事を両立しSBFキャストとして活躍する横田さん(キャストインタビューより)

キャストや取引先が増えるにつれて、オペレーションマニュアルを細かく整備し、誰もが理解できるようにしました。当社のクライアントは主に、全国のドラッグストアやスーパーマーケットに商品を展開する消費財メーカーです。

山室 「たとえば店舗に入店し、活動してから、退店するまでの導線にいろいろなプロセスがあるんです。それを何十、何百という項目に分けて、一つひとつキャストさんに作業とチェックをしてもらいます。マニュアルの通りに進めれば、誰でもできるしくみをつくりました。オペレーション通りに進めてくれれば報酬をお支払いする形態のため、経験の差に左右されなくなります」

ベテランのキャストが、1日に複数の店舗を回って働くという事例も増えてきました。キャストの皆さんからは、「働いて社会に必要とされているのだと実感することで、気持ちや生活そのものに張りができ、毎日が充実している(30代/埼玉県)」「社会とのつながり、人とのつながりで視野を広げ、自分の成長へつなげられている。人生はすべて勉強(50代/福岡県)」といった感想をもらっています。

2018年からは、「サステナブル∞ワークスタイルプロジェクト」をスタート。全国のキャストたちにアンケートを募って公開し、インタビューも行っています。経営企画部の石井麻美は、本プロジェクトをメインで進めてきました。

石井 「本プロジェクトは仕事から離れている主婦の方に、少しでも働くきっかけになればと思いスタートしました。キャストさんの中には、介護をしながら働く方、小さいお子さんを育てながら働く方、また当社のお仕事を受けながら、何らかの資格を勉強している方などさまざまな方がいらっしゃいます。
こういう生き方をしている人がいるんだなーと、知ってもらえたらと思います。直接の交流はありませんが、プロジェクトを通して全国のキャストを身近に思っていただけると嬉しいです」

アンケートを通して、女性たちが持つ潜在能力に今も驚かされる日々です。最近では男性のキャストも増え、主にはラウンダーとして当社で活躍してくれるようになりました。キャスト皆さんのおかげで、新しい展開はまだまだ生み出せると期待を膨らませています。

定年のない働き方を実現し、人生にやりがいを提供し続ける

▲九州オペレーションセンターでは社員とアシスタントが一丸となり業務に取り組む

社内でも持続可能な働き方を推進し、会社の成長に合わせてさまざまな試みをしてきました。まずは2017年、もともと支店を構えていた九州にオペレーションセンターを設置します。

本社はクライアントへの営業活動、九州はキャストと企業のマッチングやレポート管理などの運営業務に分け、九州エリアに多くの雇用を生み出しました。さらに2018年からはテレワークを本格的に導入し、本社オフィスもリニューアル。社員の8〜9割が、月に何度か在宅で働いています。

この15年でキャストは9万人に増加し、担当した取引数は350社以上に上ります。事業を始めた当初から登録し、活躍してくれている方も少なくありません。

石井 「先日インタビューした方は、70代で創業当時から活躍していただいているキャストさんでした。当社のお仕事が生きがいにつながるだけではなく、マニュアルを覚えて仕事に挑むことが頭の体操になってありがたいと言ってくださって。皆さんにとって、いくつになっても働けるしくみをつくっていきたいです」
山室 「その方の経験や年齢に合ったお仕事を提供し、いつまでもイキイキと働けるようなプラットフォームを提供していきたいですね。なかには数十万人の登録者がいる企業もあります。でも当社はただキャストの数を増やすのではなく、一人ひとりとちゃんとコミュニケーションを取ることを大切にして、事業を大きくしていきたいと思っています」

「80歳を超えても働きたい」と言ってくれるキャストもいるほど、当社で働く中で、お金以外の意義を見いだしてくださっているようです。これからもソフトブレーン・フィールドでは、キャストの能力を生かし、事業の新しい可能性を追求して社会に貢献していきます。

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