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WORKSTORYAWARD2018

これからの日本をつくる100の“働く”をみつけよう「Work Story Award 2018」の受賞ストーリー、
一次審査通過ストーリーを公開しています。

3人寄れば文殊の知恵、リーダーの知恵と行動。

株式会社イマクリエ
テレワークを軸に事業を展開するイマクリエ。働く場所や時間にとらわれない柔軟な働き方に魅せられて、全国から優秀な人材が集まってくるようになりました。そんなイマクリエの挑戦は、「テレワーカーによるテレワーカーのマネジメント」。3人リーダー体制で取り組む、新しいマネジメントのスタイルをご紹介します。

テレワーカーのマネジメントはテレワーカーがやるーー3人リーダー制の誕生

働き方の切り札といわれるテレワーク。日本では導入が広がりつつありますが、あくまでオフィス勤務が基本で、テレワークは制限的に導入している企業が一般的です。

そのなかでイマクリエは、テレワークをビジネスモデルにして活路を見いだしてきました。東日本大震災を契機に、オフィス出勤の不要な業務システムを確立。2014年には総務省と共同で実証実験をおこない、セキュリティや労務面でも強固なビジネスモデルを構築しました。

2018年7月の官民共同の啓発イベント「テレワーク・デイズ」には、特別協力団体、また、唯一のベンチャー企業として参加。東京都のテレワーク活用促進モデル実証事業の参加企業にも選ばれています。

2018年現在ではアウトソーシング事業、テレワーク環境構築・導入支援、テレワーク導入トレーニングの3つの事業を展開しています。

登録者が増え、1日に働くスタッフの数が100名を超えるようになってくると、リーダーの採用・育成が急務となってきました。そのなかで、新しい課題が見えてきたのです。

最初の課題は業務の多様化でした。クライアントに業界のリーディングカンパニーが増え、要求水準も上がってきました。従来はコールセンターの労働力提供が主な業務でしたが、マーケティング施策の提案やテレワーク導入コンサルティングなども求められるようになり、より提案力、推進力をもつ人材の活用とマネジメントが必要になってきたのです。

そこで見えてきたのが、マネジメントの難しさでした。テレワークのマネジメントにおいて厄介なのは、顔を合わせられないという点です。これまでリーダーは、オフィス勤務のスタッフを中心に選抜していました。

しかし、直接対面せずにマネジメントをするという経験したことがある人材など、そうはいません。また、オフィス勤務者と、主に自宅などで業務に携わるテレワーカーでは、業務に対する感覚が異なり、理解が深まらないという葛藤もありました。

その打開策となったのが、テレワーカーによるリーダーのシェア制度です。先駆者となったのは3人のうちふたりは、音瀬奈々(おとせなな)、秋窪幸子(あきくぼさちこ)というテレワーカー。彼女たちが試行錯誤しながら、テレワーカーのテレワーカーによるマネジメント体制をつくりあげていったのです。

思いは同じだがアプローチが違う。異なる知恵を集めて最適解を導く

ふたりの住まいは、音瀬が滋賀、秋窪は熊本。実際に顔を合わせたことはありません。完全オンラインで、どのように力を合わせてリーダー職をつとめていったのでしょうか。

そもそもの発端は、2018年3月の新規コールセンター業務立ち上げにさかのぼります。当初、リーダーは別の担当ひとりでした。自分なりに考えて業務を進めたものの、主にシフトの面で行きづまってしまいます。そこで助け船を出したのが音瀬だったのです。

音瀬は別のチームで同様の経験があり、シフト組みのためのアイデアを出しました。メンバーからは単に勤務時間の希望を聞くだけでなく、家庭状況や、どんな働き方をしたいのかも細やかにヒアリングしたうえで、シフトを決めていきます。音瀬は今までにない発想をもち、チームの力を引き上げました。

秋窪はその頃、音瀬のもとで業務に携わっていました。そして、その抜きん出た分析力がふたりの目に止まったのです。秋窪はメーカー、飲食チェーンのIT部門でデータ分析を経験。介護の必要が生じたため短時間勤務のテレワークを選びましたが、前職での経験はここでも生かされました。

音瀬 「秋窪はパソコンのスキルが抜群で、なおかつコミュニケーション能力も高かったんです。しかも、コールセンターの業務レポートなどを見て、問題点を抽出し原因を把握する能力もすぐれていました。そこで、秋窪にぜひ一緒にリーダーをやってほしい、とお願いしたんです」

3人で考え、3人で決める。簡単なことではありません。衝突することも多々ありました。しかし意見が違うのは当たり前。相手がどのように考えているのか、お互いにていねいに時間をかけて共有することを意識的におこなっていきました。

音瀬 「違うな、と思ったことには、きちんとこちらの意見を言いながら、相手の意見に対してもしっかり考えます。クライアントに満足していただきたいというのは 3人に共通する根底の思いです。その思いをベースに話し合いを重ねることで、何が最適か 3人で導き出せるようになりました」
秋窪 「 3人とも、考え方の基本はすごく似ていますが、目的へのアプローチが全然違います。同じことをするにもいろいろなパターンが生まれるので、それがより良い課題解決に結びつくんですね。
話の中にはかならず何か新しい提案を入れるようにしていました。だから話し合いは基本的には前向きで、苦しいという感じたことは一度もありません」

行動力・発想力・分析力の3つの能力を組み合わせた3人リーダー制を進める

自然発生的にはじまった3人リーダー制。しかしこれが功を奏し、テレワーカー3人で150名程度までのマネジメントが可能となりました。売り上げベースでは前年比120%をマークする見込みです。

成功の大きなポイントはなんといっても、相性がぴったり合った点にあります。この“相性”の部分をひもといてみると、それぞれ長けた能力が異なっており、その組み合わせが的確であることが重要だと、私たちイマクリエは考えるようになりました。

秋窪はメンバーの行動・パフォーマンスを分析し、そのデータをもとにメンバーに寄り添う「分析力」。音瀬は、新しいマネジメント方法やチーム運営を考え、気持ちよく働くための環境をつくり出す「発想力」。そしてもうひとりは、顧客・社内調整を担い、行動でメンバーを引っ張る「行動力」に秀でているのです。

そこで、新たな3人リーダーチームを発足させるにあたって重視したのは、これまでの業務の成果のほかに、「分析力」「行動力」「発想力」の3つ。筆記試験や面談を通して、リーダーに必要とされる能力を判断しました。現在、すでに2グループで育成がはじまっています。

こういった組織運営をはじめたことによって、「どこにいてもリーダーになれる」という認識がメンバー全体に広がり、相対的にモチベーションやチーム志向が高まっています。

また、3人のチームが、離れていても緊密なコミュニケーションを取ることを重視していく過程で、新たに「井戸端会議」というチャットルームが誕生しました。子育てや料理、趣味といった、仕事とは関係ない息抜きの時間を用意して、メンバー同士の距離感を縮めようというものです。

社長は禁制というこの部屋、リーダーたちが想像以上の盛り上がりを見せています。

秋窪 「こちらが意図したことではないんですが、メンバー同士でシフト調整をする呼びかけの場にもなっています。そういうことも含めて、『井戸端会議』によって初めて横のつながりが生まれたことを確認できました」

多様な働き方を掛け合わせることで新たな価値をつくる

3人は誰も「マネジメントをするための勉強」をしてきたわけではありません。あくまでも、テレワーカーとして自分の家庭や生活と仕事とのバランスをとるメンバーたちの目線でコミュニティを構築。互いに協力して事業の成果を出してきました。

働き方が多様化し、縦割りやツリー型といった、いわゆる昔ながらの会社組織がどんどん形を変えていくなか、これからは、フラットなコミュニティベースでの経営・マネジメントも当たり前になっていくのではないでしょうか。

リーダーとしての働きを通じて、メンバー一人ひとりの力が最大限に発揮される未来を思い描いています。

音瀬 「今後はほかのメンバーとも密につながっていきたいと思っています。仕事のことだけでなく、いままでどんなことをしてきて、どんな暮らしをしているのか、もっとコミュニケーションをとって、人として寄り添い助けられるようなチームにしていくのが目標です。
おかげさまで良い業績を残していますが、一緒に大きな目標を立ててがんばっていくことで、もっといいチームになっていくと思います」
秋窪 「テレワーカー同士、どうしても顔を合わせていないことで生まれるすれ違いはあります。いまはまだまだ課題が多く、挙げていったら日付が変わっても終わらないくらいです。でも、それをみんなで変えていく。
それでイマクリエがいまよりもずっと成長したときに、『秋窪がいて良かったな』と言ってもらえるように、いまはただ走っていくのみです」

人がもつさまざまな能力や経験、やりたいこと、費やせる時間や空間。多様なものを掛け合わせていくことで、もっと大きな価値をつくり出すことができます。私たちイマクリエは事業を通じて、個人にとっても社会にとっても、より自由で価値の高い、新しい働き方を創造していきます。

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