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WORKSTORYAWARD2018

これからの日本をつくる100の“働く”をみつけよう「Work Story Award 2018」の受賞ストーリー、
一次審査通過ストーリーを公開しています。
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"フリーランス=信用できない"なんておかしい。誰もが自ら働き方を選択できる未来へ

ランサーズ株式会社
  • 社会システムを変革するWork Story賞
多くの企業で働き方改革が推進され、多様な働き方を選択できる世の中になりつつある一方で、「フリーランス」は会社員に比べて法律や制度が整っていません。そんな現状を打開すべく誕生したのが「Freelance Basics」。フリーランスの生活インフラを整えるべく立ち上げたこのサービスが誕生するまでのストーリーを紹介します。

働きたくても働けない人がいる現実への憤り。誰もが安心して働ける世の中へ

▲「Freelance Basics」プロダクトマネージャー 大藪祐一(左)、取締役執行役員 根岸泰之(右)

ランサーズは、仕事をしたい人と仕事をお願いしたい人のマッチングプラットフォームを提供している会社――。

新規事業「Freelance Basics」を企画した取締役CMOの根岸泰之は、強い信念を持ってランサーズに入社しました。

根岸 「ランサーズに入社した理由は、もちろんビジョンに共感したということが大きいのですが、ある経験が影響しています。私には現在11歳の双子がいるのですが、ひとりが3歳のときに白血病になったんです。
消灯時間まで付きっきりの看病が必要になりましたが、双子のうちのもうひとりは幼稚園に通っていたので、当然その子の送り迎えや育児もしなければいけません。私と妻で分担するしかありませんでした。
私は当時、人材ビジネス企業でマーケティングの仕事に携わっていました。会社は辞めるしかないと思ったのですが、ありがたいことに社長が親身に相談に乗ってくれ、やるべき仕事をきちんとこなすことを前提に、必要なとき以外は出社しなくていいという特例を認めてくれたんです。
自宅から通える場所に大きな病院があり、リモートワークでも成り立つ仕事内容。そのうえ会社に特例を認めてもらえた私は恵まれており、不幸中の幸いでした。
病院では、空きベッドを求めて仕事を辞め、遠方から引っ越してきているご家族もたくさんいたんです。子どもたちが寝静まったあと、『今月の家賃はどうするの?』という夫婦会議の内容が聞こえたこともあります。
仕事と家と、子どもの命。どれかひとつを選べと言われたら、答えは決まっています。子どもの命のために、仕事や家をあきらめなくてはいけない人たちがたくさんいるんです。
当時は私も子どもの命のことで頭がいっぱいでしたが、退院して元気になってきたときに、改めて『もっとインターネットをうまく使って仕事ができれば、こんな不平等なことは起きないのでは。機会の格差をなくすことができるんじゃないか』と強く思うようになったんです。
その後、代表取締役社長CEOの秋好陽介との出会いがあり、“テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる。”というランサーズのビジョンに強く共感して入社することにしました」

子どもが病気になり大きな不安を背負っているうえに、「仕事は会社に行ってするもの」という“常識”にはばまれて仕事を失ってしまう人たちがいる。病院で目の当たりにしたそんな不平等な現実を変えていきたい――。そうした思いが根岸の原動力になっています。

ランサーズは「クラウドソーシング」という仕組みで、インターネットを通じていつでもどこでも、状況に合わせて働けるサービスを提供してきました。そして2018年現在、根岸が目指しているのは、個人が会社員と同様に“安心”して働ける世の中です。

「お金を借りづらい」「本業以外の業務に追われる」……フリーランスの苦悩

▲2018年夏に、鎌倉のコワーキングスペースで実施したチーム合宿の風景

根岸は人材ビジネス企業に入社する前、2年ほどフリーライターとして活動していました。“フリーランスならでは”の苦労も身をもって経験しています。

根岸 「確定申告をするにしても契約をするにしても全部自分でやらねばならず、わからないことばかりで困ることが多かったですね。当時の私は法律が苦手で、契約書で『甲』『乙』『甲』『乙』……と3回くらい出てきたらもう破り捨てたくなりました(笑)。
契約書を作成しなかったために、『言った』『言わない』の水掛け論に発展してしまったり、納品したらすぐにお金をもらえると思っていたら支払いがずいぶん先で、『今月どうやって暮らそう』と困ったりしたこともあります。
また、安定した収入がある人でも、“フリーランスだから”という理由で会社員よりも頭金を多く用意しないと家を買えなかったり、クレジットカードの審査が通りづらかったりすることも。会社員であれば“アタリマエ”のことがかなわない現状があります。
世の中全体としてインターネットを通じて仕事ができる環境は整いつつありますし、フリーランスを支援するサービスも増えてきました。しかし、ワンストップでフリーランスの支援をするサービスはありません。
全部自分でやるか、いろいろなところに個別に依頼するか……。いずれにしても手間がかかる状態。本来集中すべき業務に集中できる人を増やすためにも、個人のための生活インフラを整備したいと思ったんです」

「かつての自分と同様に困っているフリーランスの課題を解決したい」という思い。そして、彼らが本業に集中できる環境を整えることが、“社会全体の発展につながるはず”という思いもあります。

根岸 「フリーランスの方がある程度法律や会計の知識をつけることも重要だと思いますが、その分野のスペシャリストに任せたほうが、その人が社会に提供できる価値は増大するはず。
たとえばライターなら、その他の業務に追われるより、文章を書く練習や取材の練習に時間を使ったほうが圧倒的に意味があり、価値を生み出せるでしょう。そうすることで個人の成長や幸せにつながるのはもちろん、社会全体の発展にもつながると信じています」

根岸は、自身の経験やフリーランスの方々の声から、会計・法律などのバックオフィス系の知識やヘルスケア・所得補償などのセーフティネットの不足、クレジットカード・ローンなどの金融にまつわる信用の低さなど、さまざまな課題があることを認識していました。

そして2018年2月に起案したのが、フリーランスの生活インフラを総合的に支える「Freelance Basics」というサービスです。

成功の保証はない。共感してくれるパートナーとの出会いで乗り越えられた

▲シリコンバレーでリモート勤務の市川瑛子(プランナー)を交えて、週次の定例ミーティング中

Freelance Basicsは、“テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる。”というランサーズのビジョンに間違いなくマッチしています。

しかし、これまで世の中には存在していなかったサービス。当初は「本当にそんなことできるの?」という声もありました。

根岸 「代表の秋好を中心に、Freelance Basicsの必要性を理解してくれる社員ばかりでしたが、やはり『どう実現するのか』という意見はありました。
広義の意味での国内フリーランスは1100万人を超えていて、アメリカではフリーランス人口とノンフリーランス人口が2027年には逆転するというデータもあります。マーケットが伸びる可能性は高く、ほかにないサービスなのでポテンシャルがあるということは伝えられます。
ただ、未知数のことだけに、事業としての結果や展望を約束する根拠はなかなか示せません。新規事業はどれもそういう面があると思いますが、企画段階は“気合い”で乗り切った部分もありますね(笑)」

Freelance Basicsのサービス化が決定し、本格始動したのが2018年4月のこと。根岸とプロダクトマネージャーの大藪 祐一の2名からのスタートでした。

ランサーズには、仕事マッチングのノウハウはありますが、生活インフラを支えるノウハウは不足しています。サービスを実現するためには、パートナーさんの存在が必要不可欠。

根岸はまず、メールも含め100社程度の弁護士事務所や税理士事務所などの士業をはじめ、保険などの金融、ヘルスケア関連等、個人を支援する事業者の方々にアプローチをしていきました。

根岸 「『無理じゃない?』と言われることが多かったですし、『どのくらいの事業になる予定ですか?』という質問に対して目標値しかお答えできないので、苦労しましたね。
とにかく思いを伝えて『一緒に取り組んでください』と言うことしかできませんでした。どうすればいいか……とあれこれ思案しましたね。
でも、『ぜひやりましょう。いいサービスを提供できれば、結果的に事業として成り立つ方法が見つかるはず』と言ってくださったパートナーさんが見つかったんです。事業をどう形にするかというところから一緒に考えてくださることになり、本当にありがたかったですね」

具体的にサービスを設計していくにあたり、フリーランスの方々へのインタビューも行ないました。

根岸 「スケジュールや時間の使い方、具体的にどんな困り事があるのかをうかがい、参考にしました。想定が確信になるような意見もありましたし、言われてみれば確かに!という声もありました。
たとえば、フリーランスの方が職種に関係なく困っているのは、『Wi-Fi』『電源』『個室』の3つだとわかりましたね。
シンプルなんですが、実はものすごくクリティカルなんです。特に発見だったのは『個室』です。
カフェで仕事することも多いと思いますが、たとえばトイレに行こうと思ったとき、パソコンを持っていくと席が埋まってしまいますし、置いていくとセキュリティ上問題があります。また、守秘義務があるなかで、公的な場で電話をするにも苦労している、という人も。
私がフリーランスだったのはずいぶん前のことですし、最近のフリーランスの方ならではの悩みを聞けたのは大きな発見でしたね。ほかにも、『フリーランス同士のコミュニティが欲しい』という声が意外に多かったです。
最終的には総合サービスの提供を目指していますが、一度にすべてをリリースすることはできないので、一定の形になったものから積極的にリリースしていきたいですね。
サービス運営側が完成形と思いこんでいるものをじっくりつくりこんでリリースするよりも、実際に現役フリーランスの意見を聞きながらブラッシュアップしたほうが早いですし、より良いものができるのは間違いありません。
だからこそ、こうした生の声も参考にしながら優先順位を随時改変し、次々とサービス化を進めています」

断られ続けた状況から一転――想定以上の反響で仲間も増加

▲10月に千葉県金谷で実施したフリーランスとの合同合宿。熱量の高いフリーランスとの出会い

2018年6月に第一弾となる士業専門家支援サービスを。8月には第二弾となるヘルスケアサービスをリリース。想定以上の良い反響がありました。

根岸 「メディアにたくさん取り上げていただき、ソーシャル上でも好意的な意見ばかりでした。経済産業省の方から『話を聞きたい』というお声がけもありましたね。
『こんなサービスが欲しかった』という声や、実際に一部の有料サービスに課金してくださった方がいたことは本当にうれしかったですね。はじめて課金してくださったユーザーさんのランサーズのページはすぐに見に行きました(笑)。
パートナーやフリーランスの方から『手伝いたい』というお声をいただくようになり、仲間がどんどん増えているのもありがたいですね。立ち上げ当初はなかなか決まらずに凹んでいましたから(笑)」

2018年現在、新生銀行と協同してフリーランスのためのクレジットカードも開発中。

コワーキングスペースの割引が受けられる、カフェに行った際にコーヒーが無料になるなど、特典を一人ひとり選べるようなクレジットカードになる予定です。それ以外にも、続々と新しいサービスを企画しています。

根岸 「まだまだやらなければいけないことはたくさんあるので、サービスのラインナップをそろえることが直近の目標です。
“フリーランスは不安定”という先入観をなくして、フリーランスの信用力を高めていきたいですね。実際は、信用と雇用形態に関係はありません。会社員でもフリーランスでも。
一方で、フリーランスの方のなかにも事業主としての意識が足りない人もいると思っています。“ひとりでやっている”というだけで、実際は事業を動かす社長であるという認識が必要でしょう。
フリーランスの方々に対しても、自分自身で信用力を高めていかなくてはいけないんだという理解を促していきたいですし、努力しようとする方をエンパワーメントする仕組みはつくっていきたいですね。
両面からアプローチしていくことで、自分らしい働き方が選択できる世の中になっていくと信じています」

誰もが自分らしく、不安なく働ける――。

そんな世の中を少しでも早く実現するために、ランサーズはこれからも新しい価値を提供し続けていきます。

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