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これからの日本をつくる"働き方"のストーリー

日本一の人材成長企業を目指すために生まれた、 "リーダーを生む"人事評価制度

株式会社うるる
在宅ワーカーとクライアントをマッチングするサービス「シュフティ」などを展開し、2017年3月に東証マザーズ上場を果たした株式会社うるる。さらに価値ある企業に進化すべく取り組んだのが、「人事評価制度改革」でした。社員の成長を促し、新たなマネージャー候補を生み出した新制度は、どのように生まれたのでしょうか。

“たんなる年功序列“になりがちな人事評価制度を、ゼロから考え直す

▲2015年当時のうるる(決起会の様子)

人事評価の目的とは何でしょうか? 私たちうるるは、「社員の成長を応援するツール」だと考えています。

社員一人ひとりが成長し、会社のビジョンにひもづく目標を達成できれば、うるるはさらに成長することができます。そこで欠かせないのが、社員の行動を促し、目標を達成した社員を公正に評価する人事評価制度です。

2017年3月に東証マザーズへの上場を果たしたうるるですが、2014年当時、「マネージャー候補となる人材の不足」という問題を抱えていました。株式上場後のビジネス展開を考えると、新規事業を自らの力で回せるマネージャー候補の育成が急務だったのです。

私たちは、クラウドワーカーによる「人のチカラ」を活用した「CGS事業」を展開していますが、特定の管理職が新規のCGS事業を兼務する状態が慢性化していました。一方で、一般社員の人事評価は停滞しがちで、キャリアパスを描きづらいという課題も……。

そこで、これらの問題を解決するため、「人事評価制度の改革」というミッションを与えられたのが、総務人事部の部長である秋元優喜です。従来の人事評価制度に精通し、課題を認識していた秋元は、ゼロから新たな制度設計に取り組むことになります。

秋元 「もともとの人事評価制度は、『どのような行動が評価につながるのか』という点が曖昧でした。そのせいで、本来は能力評価だったはずが、つい、『Aさんは3年やってこの評価だから、1年目のBさんは、まだこの評価』という、年功序列評価になりがちだったんです」

人事評価の仕組みをゼロから作るのは簡単なことではありません。うるるの成長を最終目標に置きつつ、人件費の予算などの制約をクリアし、しかも社員全員が納得する公正な仕組みを作らなくてはなりません。しかし秋元は、難しいからこそチャレンジしたいと考えていました。

秋元 「正直、めちゃくちゃ大変だろうなと内心は予想していました(笑)。ただ、このミッションを達成できれば、会社に強いインパクトを出せますし、私自身の成長にもつながると感じましたから、『やってやる!』という意気込みでしたね」

新たな人事評価制度を公開するまでの期間は6ヶ月。秋元の予想に違わない、困難なチャレンジがはじまりました。

「成果がすべて」「協調性も大事」――経営陣の異なる意見をひとつにまとめる

▲理念とうるるスピリットについて説明する代表・星

「うるるらしい人事評価とは何だろう?」——。そんな疑問を抱えながら秋元は新たな制度づくりに取り掛かります。最初に考えたのは、評価の軸として、「うるるとして求める人物像」をはっきりと定義することでした。そこで企画したのが、社長を含む経営陣全員が参加する2日間のワークショップです。

秋元 「求める人物像については共通認識がある気がしていたんですが、実際に話してみると、意外とバラバラだったんですよね(笑)。あくまで結果を重視する人もいれば、結果よりもむしろチームワークを求める役員もいました」

経営陣から出た、多様な意見を取り入れようと考えた秋元は、うるるが求める人材に必要な能力要素として「5つのコンピテンシー」を定義します。「問題解決」「対人関係」「テクニカルスキル」「マネジメント」、そして「うるるスピリット」です。

コンピテンシーのひとつである「うるるスピリット」とは、ビジョンを達成するための価値観として、従来から社内で共有されているもの。「当事者意識を持って、納得して働く」ことや「ベンチャースピリットを持ち、成長し続ける」といった「うるるスピリット」を評価基準に取り入れたことで、人事評価基準に、うるるらしさを取り入れました。

秋元 「経営陣のワークショップを終えた後に、経営陣以外の全社員と個別に面談する機会がありました。そこで感じたのは、『成長を応援してくれる人事評価』が求められている、ということだったんです。コンピテンシーを明確に定めることで、こうした社員の希望にも応えられると確信しました」

5つのコンピテンシーを定義できたことで、人事評価の大きな枠組みを作ることができた秋元ですが、問題はここからでした。制度を実際に運用していくために、コンピテンシーを具体的な評価基準に落とし込むことに苦慮することになります。

感覚的な人事評価基準を、「具体的な行動」を示す言葉に落とし込む

▲すべては、社員みんなが笑顔で働ける職場にするために

「彼は優秀だ」「もう少し努力が必要だ」――そのように人を評価するとき、評価者は何らかの思考過程を経ているはずです。ただ、それを言葉にするのは非常に難しいもの。秋元がとりわけ時間をかけたのが、コンピテンシーを具体的な評価基準として言語化する作業でした。

秋元 「たとえば、『問題解決』というコンピテンシーがありますが、何をすれば『問題解決ができている』というのか、その線引きはどこなのかと考えはじめると、なかなか言葉にできないんですよね。どうしても特定の社員を頭に浮かべて考えるんですが、評価する人間によって見え方も違いますし……非常に難しかったです」

そこで、秋元は「ステージごとの評価基準」を設けることに。それまでの制度では、新人であれベテランであれ、同じ評価基準のなかで査定を行なっていました。これは公正な能力評価のためではあったのですが、社員にとっては、「どうすれば次の段階に上がれるのかが見えない」という声にもつながっていました。

秋元 「新制度では、管理職なら管理職の成長段階を設けた評価基準、一般社員なら一般社員の成長段階性を設けた評価基準を設定し、すべての基準を公開することにしたんです。こうすることで、たとえば管理職になるためには、どういう行動が求められているのかを知ることができますし、部下を育成するときにも、具体的な行動に照らして指導できるようになります」

こうして作り上げた新制度がようやくカタチになった2015年4月。秋元は全社員に向けて新制度の内容を説明しました。6ヶ月間取り組んだ成果に対して、「社員からどんな反応が出るだろうか」と気にしていた秋元は、意外にも“無反応な社員”の姿を目の当たりにします。

秋元 「あとから社員に聞いて分かったんですけど、『給料が下がる』と誤解されてしまったようなんです。実は、新たな評価基準では、社員に求める仕事のレベルが上がっていたんですね。ですから、『今以上の仕事をしないと給料が下がる』と思われてしまったようで……誤解だったんですけど」

実際には、新制度の運用後、給料が下がる社員はほぼいませんでした。秋元は、社員に不利益にならないよう、徹底してシミュレーションを重ねていたのです。むしろ、求める仕事のレベルを上げる分、給料面でもしっかりと報いたいと考え、基本給全体のベースUPも行いました。

社内で徐々に新制度への理解が広がっていきます。すると、秋元が思い描いていたように、社員の行動は変化していきました。

会社の成長に合わせて、人事評価のあり方は変化していく

▲総務人事部 部長・秋元優喜

「良い人事評価制度が人を育てる」――秋元がそう信じていたとおり、2015年4月の新制度リリース後の2年間で、うるるには新たにマネージャー候補となる社員が5名生まれました。旧制度ではなかったハイペースです。

秋元 「うるるでは、もともとマネージャー層となるポテンシャルをもった社員を採用しているんです。そうした資質のある社員が、新制度によって求められる行動を理解できたんでしょうね。後輩などを指導する姿も目立ってきました」

このように具体的な成果をあげた新制度ですが、人事制度は、「導入したら終わり」というものではありません。新制度リリース後も、秋元は新制度をより良くするため、基準を分かりやすくするなどブラッシュアップをしています。今後も、会社の成長に合わせブラッシュアップを続けていく必要があるでしょう。

うるるの創業目的は、「在宅ワークのスタンダード化」です。そのためには、在宅ワーカーの方たちが安心して働けるよう、新たな仕事を次々と生み出さなくてはなりません。秋元は、人事の立場から、うるるのミッション達成を近づけていきたいと考えています。

秋元 「私は、『うるるに来れば、めちゃくちゃ成長できる!』という会社にしたいと思っているんです。成長面においても、金銭面でも、もっともっと上を目指したい。こういう熱い気持ちは、組織が大きくなると薄まりがちですが、私は人事制度を通じて社内に広げていきたいんです」

うるるのビジョンは、「人のチカラで、世界を便利に」。社員の可能性を信じ、育てながら、ビジョンの実現を目指していきます。

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