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WORKSTORYAWARD2020

これからの日本をつくる100の“働く”をみつけよう「Work Story Award 2020」の受賞ストーリー、
一次審査通過ストーリーを公開しています。

「働く」を彩り、人生を豊かにする──全員で共創したシッピーノの組織ビジョン

シッピーノ株式会社
組織のビジョンは会社が成長していく上でのコンパスになります。シッピーノ株式会社ではメンバー全員が対話を重ね、組織のゴールとなるビジョンを再設定しました。多くの時間をかけ、全員で会社の在り方に向き合った過程を代表取締役 田渕 健悟とマーケティング部 浪岡 直美が語ります。

個人ゴールの明確化が、組織ゴールの鍵となる

▲オフィスから海が見えるシッピーノのオフィス

シッピーノ株式会社は、ITソリューション事業を展開するベンチャー企業。自然豊かな海沿いの湘南エリアにオフィスを構え、充実したライフスタイルを実現したいという想いから、代表取締役の田渕が2010年に起業しました。

事業拡大に連れて、2020年現在までの数年間でメンバーも増加。一方で、メンバーの増員と企業の成長に伴い、起業時に掲げた「皆が最大限のバリューを発揮できる環境を作る」という企業理念はメンバーへ浸透しにくくなり、会社全体が共通のゴールに向かってスピード感を持って進むことが難しくなっていました。

田渕 「『事業を行う上で大切にしたいもの』は、私やメンバーの頭の中にそれぞれありましたが、全員が同じ共通の感覚を持っているわけではありませんでした。そのため、新しい事業を始める際には指針になるものが持ちづらく、ぶれてしまうことも多くありました。これから会社を前進させるためには、メンバー全員の共通指針となるものをつくらなければと感じていたんです」

そこで、経営メンバーのコーチングを担当していた、ベンチャー企業の組織・人事コンサルティングを行う茂木 健太をCHROとして迎え、会社全体の指針を新たに定め直すことに。

まず取り組んだのは個人ゴールの設定。組織ゴールは個人ゴールを包摂するものであるという考え方から、社員だけでなく業務委託やパートも含む30名全員が茂木と1on1セッションを行い、「個人の価値観の明確化」と「個人ゴールの設定」を推し進めました。

価値観の明確化では、各自の好きなことや得意なこと(=“Want to”)を言語化。そして、言語化した“Want to”をもとに、仕事・趣味・お金・健康・家族・知性・社会貢献・人間関係の8つの個人ゴール設定をしました。

田渕 「自分の経験から未来は想像できますが、セッションを経てその想像の幅をもっと広げていくのが個人ゴール設定の目的です。1on1は1回きりと決めず、個人ゴールが設定できるまで何度も茂木と1on1をするメンバーもいました。私も40〜50時間は個人ゴール設定に費やしました」

対話を中心に、組織ゴールのアイデアを全員で発散

▲オンライン上のホワイトボードを使い、アイデアを書き出し

各メンバーの個人ゴールが決まると、次は組織ゴールとなる「ビジョン」の設定へ。

組織ゴールは、個人ゴールとのつながりをつくることに重きを置き、誰かが一方的に決めるのではなく、メンバー全員で対話をしながらつくり上げていけるようワークショップを開催しました。

「組織ゴールを設定する上で、どんなことを大事にしていきたいか」についてメンバー全員でアイデアを付箋に書き出し、オンライン上のホワイトボードに貼っていきます。

浪岡 「コロナ禍でリアルに集まれず、オンラインでの開催となりましたが、オンラインで意見を言うのは緊張してしまう、というメンバーもいたので3〜4人ずつのグループに分けてアイデア出しを行っていきました。議論が白熱していく中で、『このメンバーはこう考えていたんだ』という驚きや発見も多くありました」

第1回のワークショップで出されたアイデアを具体的に組織ゴールに近づけていくため、2回目のワークショップでは「そもそも会社のビジョン・ミッション・バリューとは何か、なんのためにあるものか」について茂木が解説を行いました。

その上で「社会や顧客に対して私たちはどんな影響を与えていきたいか」「自分たちはこれからどうしていきたいか」をメンバー全員交えて意見交換していきました。

自分たちの手でゼロからつくり上げ、ついに決まった組織ビジョン

▲年齢も経歴もバラバラなメンバーが全員で組織ゴールをつくったことで、全員の中に共通認識が生まれました

3回目以降のワークショップでは、これまで出尽くした組織のゴールのアイデアを結晶としてまとめるため、企画メンバーを募集。8名の社員がコアメンバーとして立候補しました。

浪岡 「私自身も手を挙げたうちのひとりです。今まで勤めてきた会社では、経営メンバーや人事部だけで会社の理念を決定することが多かったので、組織をつくる部分からメンバーが参加できるのはとてもおもしろいと感じました。

集まったメンバーは部署もバラバラでしたが、基本的にはみんなシッピーノが大好きで、『自分たちの会社をより良くしたい』という想いを全員が持っていました」

シッピーノを代表して、会社の組織ゴールを決めるべく集まったメンバーたち。しかし、第1回、第2回でメンバー全員から出た多くのアイデアを一言にまとめる作業は簡単なものではありませんでした。計6回にわたって何度も対話を重ね、少しずつ「豊かさ」「彩り」といった社内で大事にしたいキーワードが浮かび上がってきました。

そして企画から1年半、約700時間をかけて取り組んだ会社の指針がついに決定。シッピーノの新たな組織ゴールは「『働く』を彩り、人生を豊かにする」。社会・顧客・従業員・パートナーなど、シッピーノに関わるすべての人の人生を豊かにしたい、そんな想いが込められています。

個人ゴールと組織ゴールの交点で生まれた、新たなチャレンジの数々

▲人生の豊かさを感じる瞬間は人それぞれ。仲間と趣味を楽しみたいと、釣りを企画するメンバーも

全メンバーでつくりあげた組織ゴール。個人ゴールと組織ゴールが明確になり、個人と組織の交点が浮き彫りになったことで、メンバーの行動にも多くの変化がありました。

田渕 「あるメンバーは『人生に笑いの場をつくることだ』という個人ゴールを持っているのですが、組織ゴールとの交点を考えたときに、『メンバー同士の本質的なコミュニケーションの中に笑顔は生まれるのだ』という答えにたどり着きました。

そこで、社内でより多くのコミュニケーションが生まれるよう、オンラインやオフラインのイベントを企画したり、メンバー同士を積極的につないだりしてくれています」

それぞれが自身の“Want to”を意識することで、社内では積極的にチャレンジをするメンバーが増えています。Work Story Awardへの応募に取り組んだ浪岡もそのひとりです。

浪岡 「このWork Story Awardに応募してみようと思ったのも、私自身の個人ゴール設定で『情報を整理して伝えることが好き』という価値観に気づいたことがきっかけでした。普段はマーケティング部で業務を行っていますが『会社の良さを伝える』というチャレンジをしてみたいと思い、業務領域を広げて取り組んでみました」

さらには、会社の組織ゴールが明確化したことをきっかけに行動が変わり、業績が上がった事業部もありました。EC事業部では、組織ゴールが決まってからは能動的に、前向きに楽しみながら働く姿が見られるようになり、結果として黒字化に成功。

お客様の人生を豊かにすることを起点に商品を生み出すだけでなく、他の事業者にも良い影響を与えていきたいと、そのノウハウを学ぶためのワークショップにも参加しています。

また、「心に余裕を持って仕事をしたい」「自由に働く場所を選択したい」というメンバーの声から社内制度としてワーケーションの実施も決まるなど、メンバーの“Want to”の実現を通して、今まで以上にイキイキと働ける雰囲気が社内に生まれています。気づけば取り組みが始まって以来、退職者は0名に。

全社員の意識がひとつになったシッピーノ。メンバーだけでなく、関わるすべての人が豊かになることを目標に、今後も個人ゴールと組織ゴール、両者の実現を目指し進んでいきます。