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WORKSTORYAWARD2020

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大切な取引先を想い、生まれた「声で広げる!ソーシャル ディスタンス プロジェクト」

株式会社USEN‐NEXT HOLDINGS
音楽配信事業を中心に各方面で事業を展開するUSEN-NEXT GROUP。新型コロナウイルス感染症の影響を受ける取引先の状況を知り、“我々だからこそできること”でこの状況を少しでも明るくしたいと、「声で広げる!ソーシャル ディスタンス プロジェクト」を立ち上げました。その全容をお伝えします。

想像以上のコロナの影響──我々だからできることで世の中を明るくしたい

▲株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS

2020年春、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の影響により、私たちはこれまでの生活様式を変えなければならない状況となりました。2020年4月7日に発令された緊急事態宣言を受け、全社員を原則リモートワークに移行し、新入社員の入社式をオンラインに切り替えるなど当社の働き方も臨機応変に変えてきました。

コロナの影響はもちろん我々だけではありませんでした。当時の状況を株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS 執行役員 コーポレート統括部長の住谷 猛はこう話します。

住谷 「緊急事態宣言が発令される前からこの状況に危機感を持っていましたが、発令後は飲食業の取引先を中心に危機感が一気に加速したように思います。実際、取引先の業績悪化による閉店が増加していました」

大切な取引先の想像以上の被害に社員の心は沈む一方。そんな中、代表取締役社長CEOの宇野 康秀を中心に、あるプロジェクトが立ち上がることになったのです。

住谷 「私たちは音楽配信事業者として、社会問題を音や音楽で解決できることはないか日々考えています。そんな中、日頃お世話になっている取引先の大変な状況をなんとかしないといけないと考え、宇野を中心にグループ会社の垣根を越え、『USEN-NEXT GROUPだからこそできること』の話し合いを重ねていきました」

USEN-NEXT GROUPだからこそできること──この状況を少しでも明るくするために「声で広げる!ソーシャル ディスタンス プロジェクト」が誕生しました。

声で広げるソーシャルディスタンス──感染防止放送の無償提供へ

▲感染防止行動呼びかけチャンネル「We believe future!」

プロジェクト発案から約2週間、新型コロナウイルス感染防止メッセージ放送「We believe future!」を無償提供することにしました。これはUSEN放送で流れる音楽の合間に、ご賛同いただいた著名人からの感染防止対策メッセージが流れる放送です。

「We believe future!」を立ち上げた株式会社 USEN 執行役員 コンテンツプロデュース統括部長の山下 光儀は、プロジェクトに賛同した総勢60名程の著名人のアサインを始め、メッセージ収録など実施に向け取りまとめていきました。

山下 「単なる感染防止メッセージではなく、聞いた皆さまに印象が残るインパクトと、実際に行動に移してもらえるメッセージの浸透が重要だと考えました。そこで、さまざまなジャンルの著名人にご賛同いただきオリジナルメッセージを流すことにしたんです。

すでにお取引いただいている施設だけでなく、コロナ禍でも活動を続けなければならない全国の病院、交通機関、公共施設、生活必需品を取り扱う店舗など約5万施設を対象に無償提供することにしました」

通常、施設内の音楽の合間に流れるコメント放送は、主にご契約いただいている企業や店舗からのメッセージで構成されています。それを、著名人のメッセージや注意喚起など53種類のアナウンスを独自に制作し、各業種や施設に適したコメントを選んで利用できるよう工夫しました。

また、感染防止に注意を払いながら活動を続けなければならない事業所や施設への敬意を表すとともに、この放送を活用することで感染防止と働く方々のストレス軽減に少しでも役立てていただけるようにと願いを込め、実施に向けて急ピッチで進めていきました。

1日ひとり250件。グループの垣根を越え一致団結し奮闘する日々

▲グループ会社の垣根を越え、新入社員が一丸となって取り組んだ架電業務

「We believe future!」の準備と同時並行で、全国の対象施設に対し「We believe future!」を放送していただくための架電業務が始まりました。新入社員を中心に、5月から6月までの2カ月間、ソーシャルディスタンスプロジェクトチームが立ち上がりました。

ソーシャルディスタンスプロジェクトチームの中心となり、新卒の指導や全体の進捗管理を担当した、USEN Business Design 株式会社 兼 USEN-NEXT Design 株式会社 代表取締役社長の髙木 謙充は当時の想いをこう振り返ります。

髙木 「4月に入社して1カ月間はオンライン研修を行っていましたが、5月以降もオンライン研修を継続していいものか考えていました。一生に一度しかない新卒入社を社会情勢で『しょうがないよね』と諦めさせるのではなく、このプロジェクトを新入社員に任せることで、前を向いていくきっかけになればと思いました」

新入社員の中には、先の見えない状況に「なぜこのプロジェクトに参加するのか」と不安と戸惑いの声もありました。そんな中、5〜6名で1チームとなり、先輩社員のサポートを受けながら架電を繰り返していくことに。1日の架電件数ノルマはひとり250件と厳しいものでした。

髙木 「最初はマニュアル通りにこなすことで精一杯の様子でした。話さえ聞いてもらえずに電話を一方的に切られてしまうことや、 否定的なご意見をいただくこともあり、何度も心が折れかけたメンバーや涙が溢れるメンバーもいました」

しかし、架電を繰り返していくうちに徐々に話を聞いてもらえるように。マニュアル通りの対応をするのではなく、相手の立場になって話を進めることを一人ひとりが意識していくうちに、自然とチーム全体の承諾数が増えていきました。

プロジェクトを通して再確認した、声の力と人のあたたかさ

▲全グループ会社の新卒社員で構成された「ソーシャルディスタンスプロジェクトチーム」

約2カ月間のプロジェクトが終了し、電話のコール総数は44万件以上、総通話時間は約4,000時間に。その数字を物語るかのように「We believe future!」は全国に広がり、商店街や地下鉄、公共施設などさまざまなシーンで流れることになりました。

髙木 「新入社員に対しても思わぬ効果がありました。2020年度に入社した新入社員に対しては周りから悲観的にとらえられることが多いですが、この経験を通じて真の意味で『働くこと』『社会のために役立つこと』に向き合えたのではないかと思います。

また、グループ会社全体の新入社員が一丸となりプロジェクトを遂行したので、社を越えた“グループ全体での同期感”が育まれることになりました。別々の会社に配属された現在も、定期的に連絡を取り合っているということを聞くと嬉しいですね」

「We believe future!」を立ち上げた山下が実感したのは、声の力と人のあたたかさです。

山下 「今までの音楽配信サービスは音楽に傾倒していた部分があったのですが、今回のことで“声の力”にあらためて気付かされました。今後はメッセージを届けるメディアとして、音楽だけでなく声の力も活かしていきたいと思っています。

また著名人からのメッセージを当社のスタジオで収録できない状況でも、ご自身で録音した音声をデータで送っていただいたり、『この状況下で役立てることに協力できて嬉しい』という言葉をいただいたりと、表面的ではなく心からご賛同いただいたのを感じました。皆さんのあたたかさに感謝しかないです」

大切な取引先の状況をきっかけに、少しでも現状を明るくしたいという想いから始まった「声で広げる!ソーシャル ディスタンス プロジェクト」。各方面から感謝の言葉をいただき、このプロジェクトの意義をあらためて実感するとともに、“USEN-NEXT GROUPだからこそできること”を今後も発信していきたいと強く思っています。