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WORKSTORYAWARD2020

これからの日本をつくる100の“働く”をみつけよう「Work Story Award 2020」の受賞ストーリー、
一次審査通過ストーリーを公開しています。

ニューノーマル時代の持続可能な働き方──「全社員毎日テレワーク」を広く世の中へ

シックス・アパート株式会社
CMSプラットフォーム「Movable Type」を開発するシックス・アパートは、2016年の夏からテレワークをベースとした働き方「SAWS」(シックス・アパートらしいワーキング・スタイル)を実施。そこで蓄積したノウハウを外部へ発信しています。その取り組みをリードする2名が語ります。

テレワークをベースとした働き方「SAWS」──ノウハウを広く発信

▲Twitterでは「#リモワノウハウ語るよ」のハッシュタグで発信

シックス・アパートは、2016年の夏から、個人の生産性とQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上のため、必要なときのみ出社し、普段はテレワークをベースとした働き方「SAWS」(シックス・アパートらしいワーキング・スタイル)を実施してきました。

その後、2020年にはコロナ禍で多くの企業がテレワークを導入したことにより、外部やメディアからの問い合わせが一気に増え、蓄積したテレワークのノウハウを、広く世の中へ発信しています。

取り組みをリードするのが、シックス・アパート株式会社代表取締役の古賀 早と、広報の寿 かおりです。

古賀 「テレワークの導入時には、自宅内の働く場所づくり、テレワーク手当などの制度設計、セキュリティチェック、リモートでのコミュニケーション、通信トラブル対策など、検討すべきことが多くあります。早くからテレワークを導入してきたからこそ持っているノウハウを、企業や個人の方、そしてメディアに提供し、ノウハウを積極的に発信しています」

寿 「『就業規則や手当支給の検討のために、具体的な事例が知りたい』という企業からの相談には、具体的な金額を含めて自社の事例を提供したり、『ゼミでテレワークの研究を行っているので取材させてほしい』という大学生の依頼に協力したりすることもあります。

また、企業や個人からの個別質問に返答するだけでなく、Twitterにて『#リモワノウハウ語るよ』というハッシュタグをつけ発信したり、媒体への寄稿、講演など、さまざまな手法でノウハウ提供を行っています」

「全社員毎日テレワーク」──導入により広がった働き方の選択肢

▲社員が自宅でテレワークしている様子

シックス・アパートが最初にテレワークを導入したのは、2011年。東日本大震災に起因する政府からの節電要求に従い、7月から9月の3カ月間は毎週水曜にオフィスをクローズさせ、全従業員でテレワークを実施しました。

その後、2016年のEBO(Employee Buy Out:従業員による企業買収)による独立時に、新しい組織での働き方について再検討を実施。このとき「全社員毎日テレワーク」という働き方を定め、「SAWS」と名付けました。

古賀 「社員約30名に対し、あえてオフィスには10席程度しか用意しませんでした。働き方については、経営側から細かく具体的な方針を打ち出すのではなく、社員個人のQOLを高めるため『必要な時だけ出社する』とだけ定めて、信頼をベースに自由度を持たせました。その中で、社員が自発的にさまざまな自分らしい働き方を作り出してきたのが現状です」

テレワーク導入後、社員の中には、通勤時間がないことを活かして、朝早く仕事を開始し、その分夕方は早い時間に仕事を終える人が増えました。また、長野在住のエンジニアを採用したり、都内在住の社員が関東近郊に移住したり、温泉地や海外にパソコンを持参し旅行がてら仕事をするメンバーがいるなど、多様な働き方が生まれています。

寿 「チャットで業務の話をしていたら、『今チームで伊東温泉に来てるんです』と言われたことがあります。遠方に行く際も事前の許可や申請が必要ないですし、そういう動きが自然と生まれていますね」

テレワークでも成果を上げ続けるために考案した、さまざまな工夫

▲シックス・アパート株式会社 代表取締役 古賀 早と公式キャラクター「トフ」

「雑談が減って寂しい」「通勤がなくなって運動不足になった」などの課題については、チームごとに月数回、会社全体で月1回など決まったペースで顔を合わせ、リアルに対面する機会を設けました。そのほかにも、シックス・アパートではテレワークを成功させるために、さまざまな工夫を取り入れています。

古賀 「オフィスで仕事している場合、隣の席の人と雑談をしたり、声をかけ合うシーンがありますが、テレワークではそれがありません。そこで、ビジネスチャットツールの中に公式キャラクター『トフ』のボットを導入し、オフィスの気温や湿度を報告するなど、簡単な仕掛けを用意しています。誰かがそれに反応すると、チャット上で自然と業務外のコミュニケーションが生まれるんです」

また、全社員に月1.5万円のテレワーク手当を支給。家やコワーキングスペース、カフェなどで働くためにかかる出費を補填する手当で、全社員一律、かつ使途自由、申請不要としています。「数ヶ月分の手当で木材を買い、棚付きのデスクをDIYした」「近所のコワーキングスペースに通うために自転車を購入した」など、自分が快適に働くために、遠慮なく何にでも使えるのが良いところです。

古賀 「また、当社では、コミュニケーションにおいて『ハイコンテクスト』と『ローコンテクスト』を使い分けることも重視しています」

コンテクストとは文脈や背景を意味する言葉で、「ハイコンテクスト」は文脈や背景が共通認識となっている状態であり、「ローコンテクスト」は逆の状態を表します。たとえば、さまざまな国籍やバックグランドを持ったメンバーが集うチームでは、それぞれの背景や常識が異なるため、ローコンテクストを前提としたコミュニケーションが必要です。前提条件から言葉にし、認識を揃えていく必要があるということです。

古賀「日本の会社では、『あれどうだった?』と聞くだけで、どの案件を指しているか通じる、などコミュニケーションが比較的スムーズだったと思います。しかし、テレワークではそうはいきません。相手の表情で判断するのではなく、仕事の前提条件、進め方や期日などを明確に言語化し、認識を揃えながら仕事を進めることが重要です。

当社のオンライン会議では、画面共有した資料(議事録)を中心に会議を進めるようにしています。どんな業務でも5W1Hを明確にし、それをリアルタイムに議事録へと書き込んでいくことにより、ローコンテクストの状況下でも認識を揃えることができるからです」

一方、オンライン飲み会やチャットでの雑談などは、存分にハイコンテクストなコミュニケーションを楽しんでいます。この使い分けこそ、テレワークでも成果を出し続けるための重要なポイントです。

古賀 「新型コロナウイルスの影響で、このようにコミュニケーション方法を使い分けるようになりました。これは、今後少子高齢化が進み、海外からの人材受け入れや高齢者の雇用を推進していく際にも有効な手法であり、意識していく必要があると考えています」

災害対策、地域活性、労働力の確保──テレワークの普及で社会に貢献したい

▲リモートワーカーの悩みを解決する105のノウハウ『リモートワーク大全』

このように、テレワークのノウハウを蓄積してきた結果、2019年には「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞(総務省主催)」や「スムーズビズ推進賞大賞(東京都主催)」などを受賞。また、外部からの相談や問い合わせも多くいただくようになり、2020年11月18日には「リモートワーク大全」というタイトルで、自社のノウハウをつめ込んだ書籍を発売しました。

また青森県や秋田県大館市、神奈川県鎌倉市など、テレワークによる関係人口増加を推進している自治体に対し現地でセミナーを開催するなど、積極的に地方活性化支援を行い、首都圏40社近くが協力して取り組むテレワーク推進活動「TDMテレワーク」にも参画しています。

寿 「テレワークの導入後、社員がオフィスだけでなくさまざまな場所で仕事することにより、他社の方との新たなつながりやアイデアが生まれるようになりました。また、家やその近くで働くことで、社員それぞれが居住するエリアとの関係性も深まっています。これらの出会いは、イノベーション加速させると考えています。このように、テレワークの推進は、ビジネスにとってもメリットが大きいと感じています」

古賀 「テレワークの導入は、感染症や災害など緊急時の対策になるだけでなく、勤務地を地方に広げられることで地方活性化にも寄与し、さらにフレキシブルに働けることで少子高齢化時代の働き手を増やすことにもつながります。

テレワークは今後の日本社会にとって非常に有効であり、その先駆者として取り組みを発信することで、日本社会に微力でも貢献したいと考えています」

早くからテレワークを取り入れ、働き方を確立してきたからこそできる形で社会貢献し続けるシックス・アパート。今後も挑戦は続きます。