ゼロから始め、採用倍率は41倍に!インターン生の可能性を事業の可能性へ
人材難を教育で解決──自社でデータサイエンティストを育てる挑戦へ
SaaS型アルゴリズム提供事業を行うかっこ株式会社では、2015年よりデータサイエンスサービスの提供を開始しました。サービス開始と同時に事業を推進する人員が不足し、データサイエンティストの中途採用を検討したものの、データサイエンティストの技術力の見極めは難易度が高く、採用コストと労力を考えると現実的ではありませんでした。
そこで、インターン生を募り、自社でデータサイエンティストを育てることに。データサイエンス事業部の部長 成田がその決断に踏み切ったのは、ある学生アルバイトとの出会いがきっかけでした。
成田 「東京大学の大学院生が当社でアルバイトをしてくれていたのですが、その学生がとても優秀で、社員と同じくらいの責任感を持って仕事にコミットしてくれていたんです。
今までは社員と学生、と私が勝手に立場を分けて考えてしまっていましたが、『会社の仲間として同じ意識を持っていれば立場の違いは関係ない』と彼に教えてもらいました。そのため、中途採用するよりも、彼のようなポテンシャルの高い学生をインターンとして採用し、自社でデータサイエンティストを育成した方がいいのでは、と考え始めました。彼との出会いがなかったら、インターン生を採用しようという考えにはいたらなかったと思います」
インターン学生に可能性を感じた成田。事業を一緒に成長させる、未来のデータサイエンティストを育てるチャレンジが始まりました。
未経験でも採用のチャンス!1カ月の試用期間で実践練習を
2015年当時、かっこ株式会社ではインターン生の受け入れを制度化することが初めてだったため、まずは教育や制度から整える必要がありました。
インターン生が会社の戦力として活躍するには、ある程度のレベル感を合わせる必要があります。そのため実践的な課題に取り組み、採用の合否を決める1カ月の試用期間を設けることに。
成田 「eラーニングなどの学習方法もありますが、自分たちの計算が実際にどのように役に立つのか、どのような使われ方をするのかを意識しながら取り組んでもらうことを大切にしました。そのため、『山手線沿線で生ビールが一番安く飲める駅はどこかデータを収集し、集計・可視化しなさい』という問題など、より現実的で楽しみながら取り組める課題を出しました。そして、最終的には成果を社員の前でプレゼンしてもらいます。
『正しくデータを取り扱い、計算して、わかりやすく第三者に説明できるかどうか?』を基準にインターン生を本採用していきました」
また、この試用期間では成果も重要ですが、積極性がなければ課題をクリアすることはできません。
成田 「試用期間は基本的に自主的に取り組んでもらいます。自分だけではわからないことがあれば自ら質問し解決していけるかなど、積極的なコミュニケーションを取れるかが成果を出す鍵です。
データを使った分析が未経験でも、積極的に質問し課題をやり切って採用されたインターン生もいます」
試用期間を経て本採用されたインターン生は、晴れてデータサイエンス事業部の仲間に。
無事インターンの受け入れ体制は整ったものの、学生を受け入れる事業部側にも大きな壁が残っていました。
成田 「インターン生を採用することはできましたが、一番の課題は部長である私自身がデータサイエンティストではないために、彼らが『何をできるか』『どんな知識と技術を持っているか』を把握しづらいということでした。そこで社内のエンジニアを巻き込んで、インターン生それぞれが何をできるのか?を可視化できるスキルシートをつくったんです。データサイエンスは技術の裾野が広いので、インターン生それぞれの力を可視化することで、適切な課題を割り振れるようにしました」
この、自己評価に基づく70項目にわたるスキルシートを材料に、3カ月に1度の面談が設けられました。部長である成田自身が直接フィードバックする機会をつくり、彼らの近況や、課題感などについてコミュニケーションを深めることで、インターン生自身の成長について部内で理解が深まるようにしたのです。
そして、技術のレベルに応じて時給が変動する方法をとり、できることが増えたときには時給が上がるようにすることで、よりインターン生の自信がつくようなしくみを整えました。
学校では学べない、ビジネスの体験をインターン生に
社員と同じように仕事をする中、気づけば数億円規模の業務効率向上につながるプロジェクトの中心で、インターン生が活躍するような場面が現実のものになっていきました。
かっこ株式会社では社会人経験のないインターン生に、ビジネスを体感してもらえる機会を積極的につくるような文化が生まれ始めています。
成田 「たとえば、お客様との会議に同席してもらい、自分が担当した分析に関して実際にお客様にプレゼンしてもらうこともよくあります。
自分の出した分析結果が実際に経営判断に使われ、役に立っていることを目の当たりにすることで、自分の分析結果に価値があることを実感できます。これは、決して机上や学校の研究では得られない経験です。
また、インターン生に関わらず、データサイエンティストは計算をするのがメインの仕事なので、ビジネスの本質的な部分はわからないことが多いです。そのため、お客様に結果を報告する際に、ビジネスサイドの人間である私が良い意味でフィルターとなり、社外であるお客様にも伝わるレポートか判断しフィードバックをしています」
自分が学ぶ学問や習得した技術がどのように社会で役立っているのか、学校ではわからないもの。実際に仕事の環境で自分たちの取り組みが役立っている経験は、多くの学生の意識を変えています。
成田 「アパレル業界のお客様の分析を担当したインターン生は、会議で自分の分析結果が使われたことをきっかけに、アパレルブランドに関心を持ち始めました。
自分が役に立てていると感じると、相手の幸せのために、もっと何かできないかという感情が生まれます。
今までは私が指示を出していましたが、成功体験を積むことで『次はこういう分析をしたら成果につながると思うのでやってもいいですか』と提案してくれるようになりました」
インターン生から社員雇用も!インターン生とともに成長する組織へ
2017年はインターンシップを経てまず1名、18年にもう1名と計2名の学生が社員として入社。採用にも大きな成果が現れています。インターンシップから入社した社員は、2年以上インターン生として働いていたため、入社してからの活躍スピードが早いのはもちろん、ミスマッチがありません。インターン生時代からのお客様をそのまま担当するため、入社日から即戦力となっています。
データサイエンス事業でのインターン生採用の成功をきっかけに、他部署でもインターン生の採用が始まりました。2021年現在までに100人以上のインターン生の受け入れを実現しています。
また、コロナ禍でフルリモート体制になったことで、今まで採用できなかった地方の学生からの応募も増加。応募数は約3倍、インターン採用倍率は40倍近くに上りました。
成田 「地方にはデータサイエンスを用いてインターンシップができる企業はあまりありません。そのため地方に住む学生の中には、1年休学して上京し、働いてみたいという声もあがって、毎年数名、インターンのために上京されるケースも出ていました。
しかし、今はフルリモートのため、全国だけでなく海外の留学先からも優秀な学生の応募が集まってきており、幅広い学生に知ってもらえるようになりました。
インターン生がジョインしてから、社員もインターン生も対等に刺激を与え合える組織になってきたのは、おもしろいなと感じています。
学生にとって、最初にビジネスに触れる社会人が自分たちであるということは、彼らの人生におけるひとつの物差しを私たちが一緒につくるということ。そういった責任感と事業への挑戦を大切にしつつ、今後もインターン生とともに成長していきたいと思います」
インターン生の受け入れにより、新たな戦力と多くの刺激を得たかっこ株式会社。インターン生とともに、企業として今後も発展を続けていきます。