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WORKSTORYAWARD2020

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地方のママが複業する女性が、起業家に!ニューノーマルなインキュベーションへの挑戦

株式会社uni'que (ユニック)
株式会社uni’que(ユニック)が2019年に開始した、インキュベーション事業「Your」。女性起業家創出に特化し、伴走型で女性の事業アイデアを実現しています。今回は「Your」を立ち上げたCEOの若宮 和男と「Your」で事業を立ち上げた高本 玲代が、女性の起業への想いを語ります。

女性を起業のスタートラインに!「Your」で今の生活のまま事業を始める

▲Yourで夢をかなえた女性たち

イデアのブラッシュアップから事業立ち上げまで一連の流れをサポートするインキュベーションプログラム。

2019年の開設以降わずか1年で、すでに3つの新規事業が誕生しました。

その中で、フェムテック(女性が抱える健康課題をテクノロジーで解決する分野)事業として、女性の更年期に着目したサービス「wakarimi」を立ち上げた高本はこう話します。

高本 「私は今、地方在住で2児のママです。個人事業主ではなく、ある程度の事業規模を目指して起業したいと思っていました。ただスタートアップ界隈は、起業家や投資家も含めて大半が男性で、『上場を目指せ』『成功するには、自分の時間をすべて事業に注ぎ込め』という雰囲気がありました。

母親である私に、そんな起業は到底できません。起業したいママや、複業しながら起業を目指す女性は多いと思うのですが、そんな女性たちの起業をサポートしてくれる場が、私の周りにはありませんでした」

一方、以前からBtoCのネイル事業をしていた若宮は、多くの女性から「起業したい」という相談を受けていました。ところが、数カ月後に連絡を取ってみると、ほとんどの女性が起業を諦めており、実際に起業したのは100人中2~3人程度でした。

若宮 「彼女たちに話を聞くと、起業をするにも資金調達、財務、システム構築といった分野の知り合いがまったくおらず、誰に相談し、何をしていいのかわからないまま諦めるケースが多いことが判明しました。

ロールプレイングゲームでたとえるならば、男性が起業する場合、ゲーム開始時点で仲間と出会い武器を持ち、すぐに冒険を開始できますが、女性の場合は、そもそも仲間や武器が一切無く、ゲームのスタートすらできていない状態でした。

女性が起業のスタートラインに立てる環境がもっと整えば、女性向け商品やサービスの開発も今より進むはずです。そこで、ママや複業スタイルの女性が、今の生活スタイルを無理に変えることなく事業を立ち上げられるように、『Your』を立ち上げました」

遠隔でも、予定が合わなくてもできる!チームで高め合う新規事業立ち上げに

▲遠隔でノウハウを共有し、事業立ち上げを目指します

高本は、「Your」で起業に関する実用的なアドバイスを直接もらえたことが、大変有意義だったと振り返ります。

高本 「若宮が事業立ち上げを何度も経験しているので、何をするべきか、何をしてはいけないかという具体的なアドバイスをもらうことができました。そのような人たちに伴走してもらえたのがとても心強かったです」

とはいえ、ママや複業スタイルで働くメンバー間のコミュニケーションは、遠隔でのやり取りが基本。遠隔コミュニケーションの難しさについて高本はこう話します。

高本 「事務所で働くスタイルなら、ちょっとした相談も気軽にできますが、遠隔ではできません。なので毎朝、グループチャットに自分のスケジュールを書き込み『どの時間帯であれば話せるのか』がわかるように工夫をしました。

朝に予定を書き込むことで、『メンバーが動いている』と感じられ、コミュニケーションがとりやすい環境になりましたが、チームが遠隔で一度も会わずに事業立ち上げを行うというモデルが周りにないため、試行錯誤の連続でしたね」

また遠隔に加えて、お互いの時間を合わせにくいという難しさもありました。

若宮 「ママは『昼間は空いているけれど、夜は無理だ』という人が多く、複業スタイルの人は『昼間は仕事をしているから無理だけど、夜なら空いている』人が多いので、予定を合わせるのが難しいんです。

それを解決する工夫として『家庭が忙しい』『仕事が立て込んでいる』といった事業以外のプレイベートなことも、遠慮せず気軽にチャットで共有するようにしています。それにより、お互い助け合ったり声を掛け合ったりとコミュニケーションが増え、信頼関係が築けました」

また最近は、先に事業を立ち上げた先輩が、後からチームに参加した応募者に自分の経験をシェアする光景も見られるように。

上下関係はなく共に事業を立ち上げる者同士が、ノウハウを共有し助け合うことで、事業立ち上げスピードやその質がさらに高まりつつあります。

「Your」の強みはサービスのユニークさと、スピード感にある

▲高本が立ち上げた事業「wakarimi」

高本は、「Your」にアイデアを応募してわずか半年で事業を立ち上げられたことに驚いたといいます。

高本 「私はママですし、チームも複業スタイルで働くメンバーばかりなので、プロジェクトがゆっくり進むイメージを持っていました。ですが、みなさん、さすがはプロフェッショナル。アドバイスが的確でやり取りにスピード感があり、事業立ち上げにかかる時間がとても短くて驚きました。

また立ち上げ後、若宮から『事業や自分の想いについて、どんどん発信した方がいい』と教わり、ブログを書き続けたところ、新聞やテレビ局から取材が舞い込むようになりました」

ママや複業をしている女性は時間に制約があるため、最初の事業アイデアから必要のないものを削ぎ落とし、シンプルにする必要があります。

その結果、他社とはちがう、これまでにないニーズにアプローチできるユニークなサービスになり、注目を集め、広報もうまくいくという好循環が生まれているのです。

若宮 「高本が立ち上げた、更年期の解決をコミュニケーション改善でするというアイデアは、男性はまず思いつきません。女性の着眼点はこれまで男性からは見過ごされていた盲点をついていてニーズもあるので、あとは事業化のための仲間や武器がそろえば事業化できて、注目もされやすい。これまで女性起点の事業が少なかったからこそ、宝がたくさん埋まっているというか、むしろチャンスがあると言えます」

自分のアイデアが事業化されたことについて、高本はこう話します。

高本 「私の事業は、数十年前であれば『そんなものマネタイズできますか?無理ですよ』と言われ、実現不可能だったと思います。それが、Yourを通して形にできて、とても嬉しいです」

また多くの女性のアイデア事業化をサポートしている若宮は、女性の起業について、こんな考えを持っています。

若宮 「Yourには、気軽な気持ちで応募してもらいたいですね。収支計画が書かれた綿密な事業計画書は必要ありません。だって、進めていくうちに最初の計画とはまったく違う形になることは、よくありますから」

事業計画書づくりに多くの時間を費やして時間が過ぎてしまったり、「数字が苦手だから事業計画書なんてつくれない」と諦めてしまったりするのではなく、まずはアイデアベースの段階でYourの門をたたいてほしいと若宮は話します。

若宮 「何をするにも、最初はみんな初心者です。サッカーだって、多くの人が草サッカーから始めて、おもしろさに気づくと思います。その段階でプロから『今のドリブルは違う!そんなことじゃプロになれないぞ!覚悟が足りない!』と指導されたら、やる気は失せてしまいますよね。

プロになるかどうかはもっと後から考えればいい話で、スタートは気軽でいいんです。やっていく中で、もっとうまくなりたい、試合に勝ちたいという気持ちが芽生えて、次第にいろいろなものが見えてくるのです。起業も同じだと思います」

「女性」起業家という言葉を消したい!男女問わず、起業できる世の中へ

▲ママも起業できる先に、誰もが起業できる世の中を目指して

Yourで事業立ち上げに成功した高本。Yourの未来について、こう話します。

高本 「まだ世の中にない、ユニークなアイデアをもった女性は、きっとたくさんいると思います。だから、ママでも複業しながらでも事業を興せるシステムが整い、男女問わずフラットに、やりたいと思った人が起業できる世界をつくっていきたいです」

そして、Yourを立ち上げた若宮が見据える未来──それは、本当の意味での男女平等な社会の実現です。

若宮 「今は社会の移行期なので、意識的に『女性』という枕詞をつけていますが、将来はこの言葉をなくしたいですね。女性の起業家や投資家が増え、男性も女性も関係ない世界になれば、『女性』起業家と言う必要もなくなります。そんな世の中にしたいのが、今の想いです」

女性のアイデアの実現が進んだ先に、男女問わず起業できる世の中を目指し、彼らの挑戦はこれからも続きます。