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WORKSTORYAWARD2020

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すこやかフジッコ大作戦──おいしさ、けんこう、つぎつぎ、わくわくを体現する──

フジッコ株式会社 社推会本社支部
「おいしさ けんこう つぎつぎ わくわく」という企業スローガンを、従業者が自分の仕事を通じて意識・体現することで、社会におけるフジッコの役割や存在意義を理解し、ひいては会社に対するエンゲージメントを高めてもらいたい。そんな想いで活動をスタートさせた、フジッコ株式会社総務課の豊田 麻衣子と商品開発部の鍵和田 崇が、その舞台裏と活動を通じて描く未来を語ります。

本当の「けんこう」を手に入れ、豊かな生活を送ってもらいたい

▲ けんこうづくり応援Tシャツとともに(左:鍵和田、右:豊田)

「健康創造企業」を掲げ、2020年11月に創業60年を迎えたフジッコ株式会社。豊田は、入社以来こんなことを感じていました。

豊田 「私は約3年半前に入社し、これまでに企業理念を再構築・普及する活動に取り組んできました。当社では、企業理念を構成するキーワードのひとつとして『健康創造企業』を掲げていますが、入社以来、この言葉を体現している従業員が少ないということに疑問を感じていました。

こういうことは、毎日意識していないと体現できませんし、一方で『意識しろ』と言えば言うほど白けてしまうものです。世の中を食で健康にしたいという想いを持ってフジッコに入社した人も多いはずですから、その想いを入社後に挑戦・実現できる風土が必要だと思いました」

豊田自身、前職で過労による不整脈により苦しんだ経験を持つことから、「あのような経験を従業者にさせたくない」と、健康については強い想いを持っていました。

豊田 「入社して1年ほど経ったころ(当時はダイバーシティ推進室に勤務)、『健康経営』に着手したいと上司に提案したことがありました。ところが、『生産性向上との因果関係やデータを示してもらわないと、わからない』と言われてしまって……。

『健康な状態で働いた方が社員のやる気も上がるし絶対に良い仕事ができるに決まってる!』と会議の途中で悔しくて泣いてしまったこともありました。そして、いつかチャンスがきたら取り組んでやる!と、さらに闘志を燃やしたんです」

そうした一方で、当時「働き方改革」にも取り組んでいた豊田。その改革の目玉は、長時間労働の解消でした。

そんな豊田が目にしたのは、従業者全体が、なんとなく元気がなく、覇気に乏しい姿。さらに当時は、自分自身の健康より、仕事を優先する風土も根強く残っており、誰しもがそのことについてあまり深く考えていない様子でした。

もちろん、従業員の多くが、心の底では心身ともに健やかな状態であるほうがいいと思っていたはずです。

「これではいけない。従業員が自分の心と体をしっかり整えて、やりたい仕事を楽しんでやれる会社にしたい」──こうした状況に対し、豊田はさらに決意を強くしました。

「おいしい×おもしろい」に人は集う──小さく試し、大きく響かせる

▲お料理倶楽部の作品(とろとろたまごのオムライス)

入社2年目、豊田は労働者団体の支部長に選出されます。「会社でできないことを、支部で試してみよう」と、意気込む豊田にチャンスがやってきました。

豊田 「最初はごく小さい規模で試してみました。お昼の休憩時間にストレッチ教室を行ったり、終業後にボクササイズ教室を試したり。 多少強引な勧誘も行うこともありましたが、毎回40名ほどの参加者が集まったんです」

「ちゃんと反応がある!みんな、こういうことに関心があるんだ!」と、確信した豊田。とはいえ、通常業務の片手間でこういったイベントを行っていたため、運営に限界を感じていました。

そこで、複数のホテルで料理人としての実績を持つ商品開発部の鍵和田に「お料理倶楽部」の設立を提案しました。お互い、おいしくて面白い活動に人は集まるという自信があったことから話はとんとん拍子に進みました。

鍵和田 「食べ物をつくっている会社なのに、『食』に興味がない人が多いなと感じていました。だから、この活動では、参加者が食に対する意識を少しずつ上げていくことができるよう、最初は料理の話から、食と健康、スポーツ選手の栄養管理、運動に効果的な食事とは、など、徐々に話題を掘り下げていくことにしました」

こうした料理教室の活動には、食の意識にアプローチすることに加えて、別の狙いもありました。

豊田「18時まで仕事で、18時10分から倶楽部活動開始というスケジュールで進めてもらいました。学校の部活みたいな感覚です。18時に仕事を終えて、早く部活に行かないと!そんなノリでやってもらいたくて。それが、自然と早く帰ろうという動きにつながり、結果的に働き方改革を推進しているという状態になれば良いと思いました」

いざ「おいしさ×けんこう」へ!コロナ禍で掴んだ、健康経営推進のチャンス

▲おいしさ×けんこう食堂(第1回:チキンカツ又は白身魚フライの大豆ヨーグルトタルタルソース)

お料理倶楽部を通して、「従業者はちゃんと『食』や『健康』に興味を持っている」とさらなる確信を得た豊田と鍵和田。

しかし、会社が創業60年を迎えるタイミングで新型コロナウイルス感染症が世界を襲いました。

豊田 「新型コロナウイルス感染症の影響で、ものづくりや物流の現場を除き、一気にテレワークが推進されました。しかし私は総務課です。宅配便や郵便といった仕事はなくなりません。緊急事態宣言の期間も最小の人数で業務をこなしていましたが次第に疲れ果て、買い物に行く気力もなくなり、ろくに食事も摂れず、心身のバランスを崩してしまったんです」

それを見かねた鍵和田が、週に1回の出社時に手づくりの「ミールキット」を手渡してくれるようになりました。そしてそれを食べて、心と体の状態が回復していった豊田は確信を深めました──。

「美味しいものをしっかり食べることで、心と体は回復する。やっぱり「食」は仕事や生活の質とパフォーマンスを上げる」。

また、時を同じくして会社から「健康経営」を具体化し、推進するよう指示を受けます。

豊田 「これまで非公式でやっていたいろいろな活動を、公式にすることができる。そこで、ずっと前からやりたいと思っていた『社員食堂の充実』にも乗り出すことを決めました。やるからには、フジッコの持ち味をしっかりとブレンドして、あの有名な会社の社員食堂を超えたい!と。

そして、10月からは、毎月第4金曜日を『おいしさ×けんこうの日』と定め、まずは本社社員食堂で『おいしさ×けんこう食堂』をオープンしました」

鍵和田が提案したメニューを、安価でおいしく提供するスタイルのその食堂には、第1回目から普段の約1.5倍の利用者が訪れました。テレワーク下においてもその人気は変わっていません。

今では次のメニューは何だろうと、この食堂を心待ちにしてくれている従業者も増え、豊田と鍵和田は確かな手応えを感じています。

やらされ感からの卒業!活動を通じて生まれ、育まれる未来

▲自分たちで活動をデザインするからおもしろい!(フットサル部)

2020年現在、本社では、従業者が自らフットサルなどのクラブを立ち上げ、仕事終わりや休日に活動するなどの動きが見られるようになりました。

これこそまさに豊田が実現したい状態。健康経営に取り組む会社であるからには、従業者自身が「うちの会社ではこんなことをやっている!」と、堂々と主張できることが大切だと豊田は言います。

豊田 「やらされ感で活動しても意味がありません。食べることや運動することを自分で楽しめる状態になれば、なんとなく自分に自信がつき、良い仕事ができるということを実感してもらいたいんです。

とくに、鍵和田の生み出すお料理はフジッコの持ち味を存分に引き出しつつ、しかもおいしい。まさに、『おいしさ けんこう つぎつぎ わくわく』なんです。私も、幼稚園以来口にしたことのない苦手なお豆を食べようと思えるようになりました」

鍵和田 「僕はフットサルクラブをやっていますが、以前は3カ月に1回の開催だったものを、毎月開催としました。支部が活動資金を援助してくれるのもありがたいです。今では近隣の会社の方も参加してくれて、横のつながりも生まれています。

会社でおいしく健康的な食事を摂って、仕事終わりにフットサルをして帰る。こんなことが自社で実現できるなんてすごく面白い!」

最初は小さく始めた取り組みが、今や本社中に発展を遂げる中、これから描く未来について、ふたりはこう話します。

鍵和田 「日本のみなさんが健康になると、医療費が減るわけですから、その浮いた予算で、たとえば公園や芝生が増えたり、子どもたちへの教育の質が少しでも良くなったりするといいなって思います。だから、フジッコの活動を通して、食を意識してくれる人が、これからも増えていってほしいです」

豊田 「『何だか調子が悪い』と感じる人は一定数いると思うのですが、将来的にはそういう人たちが減るといいなと思っています。そのためには予防が大切なので、体にいいものを食べて、適度に運動をしてストレスを発散するというサイクルを自分で回してもらいたい。

また、本社のあるポートアイランドには、すてきな企業がたくさんあって、実際とある企業で鍵和田のメニューが社食に採用されるなど、コラボレーションも生まれています。

将来的には、鍵和田の出張社食料理人なんかもやりたいです。そして、この活動が多くの人の目にとまり、フジッコのブランド価値が向上できれば、最高だと思います」

「フジッコには、まだまだ多くの伸びしろが詰まっている!」そんな想いを抱き続ける、豊田と鍵和田の挑戦はこれからも続きます。