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人事から世の中の事業を強くする──HRビジネスパートナーを人事のニューノーマルに

株式会社ディー・エヌ・エー / HRBP CRUNCH
HRビジネスパートナー(以下、HRBP)とは、経営者や事業リーダーのパートナーとして、組織や人の面から事業成長にコミットする人事を指します。戦略人事の実践者を増やし、人事の新しい働き方をつくるべく、HRBP CRUNCH(クランチ)を立ち上げたのが、株式会社ディー・エヌ・エーの坪井 一樹です。

戦略人事の実践を追求するコミュニティ「HRBP CRUNCH」を設立

▲株式会社ディー・エヌ・エー ゲーム事業本部 組織開発部 HRBP 坪井 一樹

「事業は人なり」。

経営において重要な資源であるといわれているのが「人」です。人事は「人」に携わる職種であるにも関わらず「距離が遠い存在」「売上を生まないコストセンター」など、ネガティブな印象を持たれているケースが少なくありません。そんな中、近年注目されているのが「HRBP」という人事の在り方です。

HRBPとは、経営者や事業リーダーのパートナーとして、主に人材・組織の課題解決や戦略実現の支援を通じて事業成長を牽引する人事のプロフェッショナルのことをいいます。そんなHRBPの概念を世の中に広め、人事のプレゼンスを向上させようと、2019年5月に「HRBP CRUNCH」という戦略人事の実践を追求するコミュニティを立ち上げたのが、株式会社ディー・エヌ・エー ゲーム事業本部 組織開発部にてHRBPを担当する坪井 一樹です。

坪井 「世の中には、人事に対するネガティブなイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、経営や事業に資する戦略人事の実践者が増えることで、人事全体のイメージはアップデートできると考えています。その変化の起点となるためにHRBP CRUNCHを立ち上げました」

HRBP CRUNCHは“人事から世の中の事業を強くする”というコンセプトのもと、戦略人事の実践を追求し、その知見を世の中に広く発信していくためのコミュニティです。これまでに4回イベントを開催しており、2020年現在では、400名を超えるコミュニティへと成長しています。

HRBPは人事がビジネス貢献できる最前線の仕事

▲HRBP CRUNCH 投影資料より「DeNAのHRBPとは」

HRBP CRUNCHの発起人である坪井は、新卒で組織人事コンサルティングファームに入社し、クライアント企業の組織課題の解決に多く取り組みました。その後、IT系の事業会社へ転職し、新規事業企画に携わったのちに、組織力の強化をミッションとした「組織づくり」の業務に従事。そこで、HRBPという役割の立ち上げを経験します。

キャリアにおいて「事業づくり」と「組織づくり」両方のおもしろさを体感した坪井は、企業の経営や事業に資する戦略人事としての働き方に可能性を感じ、2018年にDeNAへ入社しました。

坪井 「DeNAがHRBPに関して先進的な取り組みをしていると感じて入社を決めました。よりHRBPの経験を深め、さらにHRBPの世界観を世の中へ発信していきたいと考えていたんです」

DeNAは2014年からHRBPの概念を取り入れ、HRBPを「戦略人事を実践するHRゼネラリスト」と定義しています。人材の採用や評価、マネジメント強化、チームビルディングなどの人事施策はもちろんのこと、事業や組織を前進させるための“リーダーの壁打ち役”としての機能も持たせ、人事と経営をつなぐ働きをします。

坪井 「中長期的な事業戦略から組織戦略、採用や育成のデザインにいたるまで、事業や組織のリーダーと話し合いながら『事業を成功させるために、人事として何ができるか』を常に考え、提案・実行する。『人を通じてコトを成す』のがHRBPのミッションです」

最近の仕事の例をあげると、コロナによってリモートワークが当たり前になり、コミュニケーションの幅が狭まることで得られる情報が少なくなってしまうという課題への対応。特にお互いが何を感じているかの「感情」にフォーカスをあてた対話の場の重要性が高まっており、HRBPがミッションやビジョンづくり、チームビルディングといった対話が必要になる場でファシリテーターとなり、事業や組織に貢献するシーンが増えています。

HRBPのミッションや仕事内容を聞くと、非常にハードルの高い課題解決を求められるように感じる方もいるかもしれません。しかし、DeNAでは「HRBPスクラム」という手法を取り入れ、チームとして戦略人事を実践しているため、すべてをひとりのHRBPで解決する必要はないのです。

HRBPスクラムとは、ソフトウェア開発の手法であるスクラム開発を組織開発に適応したもの。隔週ごとに2時間のセレモニー(レビュー・振り返り・プランニング)と、毎日30分のデイリースクラム(OKRや業務の進捗共有)を実施し、HRBP同士で意見交換をします。

坪井 「経営や人事は答えが決まっているものではありません。それゆえ、チームメンバーそれぞれの角度からの複眼によって、ビジネス貢献につながる成果の最大化を目指しています」

日本の人事を強くする──強い想いを胸にHRBP CRUNCHを始動

▲HRBP CRUNCH イベントの様子

坪井は、DeNAでゲーム・エンターテインメント事業のHRBPを担当しながら、2019年5月に戦略人事の実践を追求するためのコミュニティ、HRBP CRUNCHを立ち上げました。

坪井 「多くの人事が『戦略人事は重要である』と思いながらも、実践できていない現状があります。戦略人事の実践者を増やすためにも、わかりやすい旗印を立て、多くの事例を結集させて、世の中にシェアしていく必要があると考えていました」

HRBP CRUNCHを始動するにあたって、仲間に協力してもらうために「何のためにこの活動をするのか」を突きつめる必要があったのです。そこで、坪井は他のメンバーにこの想いを伝え、HRBPが集う合宿にて、HRBP CRUNCHを始める意義を話し合う場を設けました。

その結果、「日本の人事を強くしたい」「人事の働き方が変わるきっかけをつくりたい」という想いを語り合うことができ、メンバー同士も共感し合い、やるからには意志を持って発信し続けることを重視した上で、HRBP CRUNCHの活動を開始。

イベントづくりにこだわるため、HRBPメンバーだけでなく、DeNAの役員や事業リーダー、デザイナーチーム、イベントチーム、広報チーム、他社のHRBPなど多くの人に声をかけ、関係各所を巻き込みながら、2019年6月、ついに第1回目のイベントを開催しました。

明日からアクションできる学びを。目指すは、戦略人事の実践と普及

▲HRBP CRUNCH イベント内のグループセッションの様子

HRBP CRUNCHイベント終了後のアンケートでは「内容が具体的ですぐに自分の会社でも活かせるヒントがありました」「人事ではなく事業側の人間として参加させていただきましたが、人事との連携を高めるきっかけを得られました」など好意的なコメントをいただきました。さらに、100%の方が「次回も参加したい」と回答するなど、満足度の高さが伺えます。

坪井 「HRBP CRUNCHのイベントは、具体的な事例や対話を軸に企画しているんです。戦略人事の実践を追求するために、悩みや知識を相互に意見交換しながら、具体的な解決策が見つけられるよう、イベントは少人数で実施します。グループセッションでは各グループにDeNAのHRBPが1名入り、参加者の課題と打ち手について話し合う時間をつくっています。

これらにこだわった結果、イベントの満足度が高く、社外の方から活動に共感できるという評価までいただけるようになりました」

イベントを実施する一方で、より多くの方へHRBPに関する情報を届けるために、外部メディアでの情報発信も実施。「HRBP CRUNCHの発信内容は再現性が高く、また実際の失敗や苦労体験まで生々しく語ってくれるため、イメージが湧きやすい 」という評価コメントが届くなど、HRBPの働き方や在り方に共感してくれた方々からポジティブな反応が増えています。WEBメディアにはDeNAのHRBPの記事が約1年間で20回以上も掲載されたようです。

坪井 「ありがたいことに、HRBPに関する取材や登壇依頼が増えました。これまでHRBP CRUNCHはリアルイベントをメインにしてきましたが、今後は異なる方法でも広く情報を届けていきたいと思っています。『人事から世の中の事業を強くする』というコンセプトに共感してくれる戦略人事を実践する人を増やして、仲間同士で切磋琢磨し高め合えるつながりを増やしたいですね」

目指すは、人事から世の中の事業を強くすること──。今後も坪井の挑戦は続きます。