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WORKSTORYAWARD2020

これからの日本をつくる100の“働く”をみつけよう「Work Story Award 2020」の受賞ストーリー、
一次審査通過ストーリーを公開しています。

サンシャインシティの第二創業期──開業40年を迎えた複合施設のこれから

株式会社サンシャインシティ ワークスタイル変革プロジェクト
現状に満足しチャレンジが失速する──これは、どの企業でも起こりうることではないでしょうか。40年以上池袋のサンシャインシティを運営する株式会社サンシャインシティもそのひとつ。現状満足から、どのように意識改革し挑戦する風土をつくり上げたのか、ワークスタイル変革プロジェクト事務局の大村 有佳と楠川 央之が取り組みを紹介します。

第二創業期で見えた課題──現状満足と現状維持がもたらす足踏みムード

▲株式会社サンシャインシティのMISSIONとVALUE

株式会社サンシャインシティは1978年にオープンした東京都池袋にある複合施設を運営する企業です。39周年には過去最高の来街者数をお迎えするなど、ひとりでも多くのお客様に愛されることを目標とし、施設運営に注力してきました。

開業40年を迎え、さらなる事業拡大の必要性を感じた当社は、第二の創業期と位置づけ新規事業の検討を開始しました。しかし進めるにあたり立ちはだかったのは、「新しいことを始めたくても余裕がない」という社員の声を示すかのごとく、新規事業を推進する実行力の足りなさでした。

また、現状のオフィスや会社の制度に対する社員アンケートでは、働くためのICTツールの不足や、成果に見合った評価がされていないという若手社員からの不満があぶりだされる一方で、社歴の長い人ほど満足度が高かったのです。

現状の働き方に課題を持っていない社員が多いので、忙しさを理由にアイデアは出ても実行に移らないのではないかと仮説を立てました。そこで2018年に「ワークスタイル変革プロジェクト(以下、WSP)」が立ち上がりました。

当時、宣伝販促広報業務を行うコミュニケーション部にいた大村 有佳は、今こそチャレンジするべきだと総務部へ異動を希望し、熱意が認められ晴れて異動となり、WSPのリーダーになります。

大村 「会社が変化すべき時期だと痛感していました。もっと良くしていきたいし、社会に取り残されないようにしないといけないという危機感がありました」

「理想の働き方とは?」ワークスタイルを浸透させるキーパーソンの存在

▲ワークスタイル変革プロジェクト事務局の楠川と大村

WSPでまず行ったのが、目指すべき「理想のワークスタイル」を明確にすること。会社自体のミッションやバリューはありましたが、理想の働き方に対しては明文化していませんでした。

そこで社員の納得感が得られることを重視しながら、社員とのディスカッションを繰り返し、当社らしい理想の働き方をまとめた「ワークスタイルブック」を完成させ、全社に配信しました。

ワークスタイルブックを周知させただけでは、絵に描いた餅。次に重要となるのはいかに浸透させ、一人ひとりがそれを体現するかです。

大村 「理想のワークスタイルを明確にしたところで、それだけでは単なる理想だけで終わってしまいます。いかに社内に浸透させ、社員自らがそのワークスタイルを実現させられるかが重要です。そこで実現するための役割を担う『エバンジェリスト』を募ることにしました」

エバンジェリスト──新しい働き方や取り組みを浸透させ実現していくのに重要な伝道者。取り組みを自ら実行・体現しながらも、部署や周りの社員に伝える存在です。

こうして立候補により集まった21名の社員により、「新たな発想や挑戦的な取り組みを後押しし、理想のワークスタイルを実現すること」を目的とした「エバンジェリスト活動」を開始しました。

まず、隔週で行われるWSP事務局とエバンジェリストの定例会にて、現状課題の解決に必要なことを洗い出しました。その結果、「意識風土の改革・制度整備・ワークプレイスの見直し・ICTツールの導入」の4本柱だと整理でき、これらの施策を一気に進める必要があると考えたのです。

そこで、人事制度や社則の見直し、ICTツールの導入や事務所の移転リニューアルの各施策などを推進していきました。しかし、そこで一番の困難を極めたのが、意識改革でした。

アイデアの火を絶やさない──新規事業の起爆剤になった制度モデルとは

▲アイデアの種を花咲かせるためのチャレンジオーナー制度

エバンジェリスト活動により、意識改革の必要性を感じている社員が増えてきたと実感していたものの、まだまだ起爆剤にはなっておらず、見えない壁を感じていました。

大村 「せっかく立候補で集まったエバンジェリスト活動も、同じ志を持つメンバーが集まったにもかかわらず『志があっても実務に落としきれない』『アイデアを自分では実現できない』と、実行に移せない社員がいることがとてももどかしく、この活動の意義を模索し続けていました。

当初、エバンジェリスト活動は『意識の底上げ』に重きを置いてきました。ただ、これだけではチャレンジ風土を活性化できないと考えたんです。ひとりでも多くの先駆者が自らチャレンジして突き進んでいくことで、全体が動くだろうと方針を変え、『チャレンジオーナー制度』を考案しました」

何か新しいことにチャレンジしようとするとき、「相談相手がいない」「上司の共感が得られない」「部署間を超えた協働が難しい」など、せっかくのアイデアの火が消えてしまい、実行せず終わってしまうことは少なくありません。

「チャレンジオーナー制度」はここに着目し、解決する制度。アイデアの発案者がリーダーとなり、「この指とまれ方式」で横断的なプロジェクトチームをつくり推進できるしくみです。

大村 「おもしろいアイデアの種を持っている社員を事務局がバックアップし、エバンジェリストと意見交換をすることで内容を発展させます。そして最終的には、会社に直接課題提起や経営会議付議が可能となります。スピーディな決裁プロセスで、チャレンジを加速させることができるんです」

楠川「チャレンジオーナーには『新規事業を考え実行する』と『会社をより良くするしくみや制度をつくる』の2種類のタイプがあります。この制度が開始してから、新しいアプリ開発の新規事業が始まったり、フレックス制度が導入されたりと、すでに10個以上の活動につながっています。実際僕も事務所のキッチンで、料理をつくりながら社員同士がコミュニケーションを図れる活動をこの制度で始めました」

チャレンジオーナーという、アイデアの火を消さず実行にまで移せるバックアップ制度により、チャレンジ風土が活性化していきました。

オフィスのリニューアルで、昭和の働き方から令和の働き方へ

▲“理想の働き方”に焦点を当てオープンスペースを設けた新オフィス

チャレンジオーナー制度と並行して行ったのは、事務所移転とワークプレイスのリニューアル。共に働き、共に創る──そんなキャンプのような働き方ができるオフィスという想いを込め、新オフィスのコンセプトは『Sunshine Camp』としました。

まずこれからの働き方に焦点を当て、事務所内の個人デスクが置かれた執務エリアを半分に。また、「共創・協働」を実現するため、新事務所の中央にはグループ社員が自由闊達な意見交換ができるようなコミュニティスペースを大きく設け、サンシャインシティグループ4社の受付を合同にしました。

このワークプレイスの大リニューアルは、思いのほか、社員の意識改革へ大きなインパクトを与えたと楠川はいいます。

楠川 「事務所の移転という目に見える変化によって『変わっていく』『変わらなければならない』というムードが醸成されたように感じます。リニューアルにあたり、合計300個ほどの要望や移転の留意事項が出ました。その中には、今までの働き方の延長から、壁に囲われた会議室を減らすことに抵抗を持つ社員もいました。ただ、意見を精査する中で軸にしたのは『理想の働き方』です。

実際に移転してみると、オープンスペースで新入社員研修の発表会のときには、ほかの社員が立ち止まって優しく見守っていたんです。社員からは『新しい発想が湧くようになった』『社員同士のコミュニケーションが取れるようになった』など、好評です。グループ会社とも物理的距離が縮まり、偶発的なコミュニケーションが生まれることも実感しています。昭和の働き方から令和の働き方へ一気にワープした感覚です」

大村 「1年前と比べても、チャレンジマインドが醸成され、意識改革ができていると実感しています。チャレンジオーナーやオフィスリニューアルなどを通して、役割や空間など、良い意味で枠がなくなりました。その分自由になるので、今後は自分を律することがより重要になると実感しています。

これからは仕事をしていく中で、社員一人ひとりが自由に自分らしさを発揮しながらも、目指すべき方向性はみんな一緒で頑張れるような、会社がみんなの拠り所になるようにしていきたいです」

ワークスタイルの変革は、まだまだ道半ば。今後は「なんか面白いこと、その創造力を街の力に」という当社のミッションを実現するため、地域を巻き込み、街のより一層の発展に寄与するさまざまな仕掛けを施す予定です。