at Will Work

WORKSTORYAWARD2020

これからの日本をつくる100の“働く”をみつけよう「Work Story Award 2020」の受賞ストーリー、
一次審査通過ストーリーを公開しています。

育児と仕事を両立させたい!パートから週四正社員へ、一人の女性が掴んだ理想の働き方

空き家活用株式会社
空き家活用株式会社でマーケターとして働く安藤 紗知は、社内第1号の週四正社員です。パートのときよりも、育児と仕事を両立させて、イキイキと仕事ができるようになったといいます。そんな理想の働き方を見つけた安藤が、週四正社員制度導入までのいきさつと、気持ちの変化を語ります。

パートと正社員──裁量ある仕事を通して感じた、立場と働き方への戸惑い

▲週四正社員として働く安藤 紗知

空き家活用株式会社のマーケティングを担う安藤は、社内初の週四正社員として働いています。小学3年生と1年生の子どもの母親として、家事や育児をしながら無理なく働くにはパートしかないと思っていた安藤にとって、週四正社員制度は働き方の選択肢を大きく広げるものでした。

結婚を機に専業主婦となり、ふたりの子どもを授かった安藤。ふたり目の子どもが幼稚園の年中にあがったタイミングで、子どもを預けている時間に働ける仕事を探し始めました。時短でなおかつ在宅という条件で見つけたのが、空き家活用株式会社のパート募集でした。

1日平均4時間、週4日扶養控除の範囲内で働き、日々の業務も問題なくこなしていました。しかし、入社から2年後、安藤の働き方を大きく変える転機が訪れます。それは、マーケティングチームへの異動。それまで社員が担当していた業務を、安藤とパートタイムで働くもうひとりの従業員の2名で担当することになったのです。

安藤 「それまでは、社員から指示をもらった仕事を、時間内に処理していくのが私のミッションでした。しかし、マーケティングチームの業務は、自分で考え行動するもので、これまでとはまったく違う内容でした。

また、以前の部署では社員が直属の上司でしたが、マーケティングチームでは、私を含むパート2名が外部のマーケティングのプロの方と仕事をする体制でした。

そのため、分からないことがあっても、すぐには質問できなくなったんです。そこで、自分で調べてなんとか解決するなど、自主的に仕事するようになりましたね」

最初こそ戸惑っていたものの、仕事を進めるうちに、自らアイデアを出して実行できることに楽しさを覚えていきます。また、社外の方とやりとりをする機会も増える中で、自分は会社の一員であるという意識も高まっていきました。

新しい部署での仕事に慣れ始めた一方で、マーケティングチームでの実務をパート仲間と回すうちに、自らの裁量の幅が広がり、戸惑うことも増えていきました。

安藤 「自分で判断しなければいけない一方で、パートなのにここまで判断していいのかな?と悩むことも増えました。あくまでパートという立場上、社員ほどの裁量がない前提だったので、その線引きが難しかったんです。自分が社員であれば、気兼ねなく判断できるのに……と感じていました。

とはいえ、子どもはまだまだ手がかかるため、フルタイムの正社員は負担が大きく、いつか身体を壊してしまうのではないかという心配もありました」

育児と仕事を両立できる「週四正社員制度」。その出会いから導入までの軌跡

悩んでいた安藤に解を導いたのは、会社専属の社労士 安中 繁でした。

安藤 「社内評価制度を決めるミーティングに安中先生がいらっしゃって、そこで先生が『週四正社員のすすめ』という本を出されていることを知りました。そのタイトルに惹かれて本を購入し、読むことにしたんです」

安藤は本を読み進め、法律上、正社員は必ずしも週五フルタイムで働かなくても良いことを知ります。つまり、会社の制度が整えば、週四勤務も成立するのです。

しかし、この制度を自分ひとりのために検討してくれるだろうか……。悩んだ末に、安藤は思いきって上司の上田 智治に週四正社員制度を提案しました。

安藤 「相談を持ちかけると、上司の上田は『いいんじゃない?やってみようか』と快諾してくださいました。当社はベンチャー企業ということもあり、チャレンジにとても柔軟で、今までにないことをしよう、前例がなくてもやってみようという文化がありました。そのため会社としても、最初から前向きに検討してくださり、スムーズに進みましたね」

早速制度を整えるため、社労士の安中に導入方法を確認し、週四正社員制度を固めていきました。安藤、上田、そして総務の松田 ひかるの3人で計2回のミーティングを実施。「希望する勤務時間」「勤務シフトの決め方」などについて話し合い、制度の中身を詰め、社労士の安中のチェックを通し、正式に週四正社員制度が導入されました。

こうして、安藤は社内の週四正社員第1号となったのです。

社内初の“週四正社員”として働く──最も変わったのは自らの意識でした

正社員になったことで、社員として会社への帰属意識も芽生え、積極的にチームに関わることが増えた安藤。関わるプロジェクトの数は2つから6つに増え、2020年現在ではマーケティングだけでなく、広報など多岐にわたる業務を行っています。

安藤 「社員になって、現在は一日7時間、週四日で働いています。パートのときは、時給制なので、良くも悪くも時間の融通が利きました。なので、今日は時間があるから延長して働こうなど、今振り返れば、時間のメリハリがついていないこともありましたね。

しかし、社員になり、決められた時間で業務をこなすようになったことで、より効率的に仕事をしようという意識が生まれました。働く時間は長くなりましたが、時間が決められている分、仕事とプライベートのオンオフもつけやすくなったと感じます」

また、社員として責任がある分、自発的にできることの幅が広がり、結果的にメンバーとのコミュニケーションの仕方なども変わったといいます。

安藤 「会社のビジョン実現のために考え、積極的に発言することが増えました。さらに、他チームと関わる機会が増えたり、メンバーの能力を引き出すにはどうしたら良いかと考えたりするようになりましたね。「パートだから」という理由で部署をまたいだ提案などを遠慮していたころと比べると、圧倒的に社内のコミュニケーションの量が増えました」

また、安藤が週四正社員となったことを機に、社内でも働き方の多様性について考えるように。「家族の扶養の範囲で働くべきかどうか」について相談できる窓口を設置するアイデアが生まれるなど、働き方に対する視野が広がっています。

女性のキャリアを途絶えさせないために──週四正社員制度がもたらす希望

▲週に1度の平日休みでは勉強や自己啓発のため、本を読む時間をつくるようにしています

週四正社員は正社員でありながら、平日に1日休みがあるのが大きな特徴。家事と育児で忙しい中、自己実現やリフレッシュのために時間をつくれることは、働くママにとって大きなメリットです。

安藤 「平日にも1日お休みがあるので、その1日を自分の好きなことに充てられます。私は子どもたちが学校に行っている時間に買い物をしたり、気になっていたお店にランチを食べにいったり本を読むなどの自己啓発に充てたり……。時間的な余裕があることでリラックスして視野を広げることができ、それが結果的に仕事にも生きていると感じています。

この制度のおかげで、キャリアを積みながら、ひとりの人間として充実し、親としても一層子どもに関われるようになったと思っています」

仕事と育児の両立に悩む女性は多くいます。毎日の家事や育児がある中で、社員としてフルタイムで働き、無理をしてしまう、という女性も多いのではないでしょうか。

週四正社員制度は、そんな働く女性の選択肢を広げる希望でもあるといいます。

安藤 「専業主婦のママ友の中には、以前はバリバリ仕事をしていたキャリアウーマンの方もいます。しかし、そんな方でも、育児と家事がある中でのフルタイム労働は難しいと、キャリアを諦めてしまっているんです。週四正社員制度はそういった女性のキャリアを途絶えさせない、ひとつの選択肢でもあると思っています」

子育て中のママだけでなく、親の介護やフルタイムで働けない事情を持つ人々にも希望となる制度。キャリアも自分の生活も、どちらも大切にする──そんな働き方を見つけた安藤は、自分のように多くの人が週四正社員制度を使い、理想の働き方を手に入れられることを願っています。