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脱、属人化!平均成長率130%を誇る令和第1号上場IT企業の秘密は社内研修にアリ

バルテス株式会社
ソフトウェアの開発工程において、バグの検出を行う“ソフトウェアテスト”がメイン事業のバルテス株式会社。属人化しやすいこのテスト技術を体系化し研修に落とし込むことで、国際的な資格認定機関から日本初の最高位ランクを獲得するまでになった軌跡を、第3ソフトウェアテスト事業部事業部長の石原 一宏が語ります。

ニッチな技術、属人的、人材不足──急成長の裏に潜む影

▲ソフトウェアのバグを検出するテスト業務

私たちは、ソフトウェアの開発工程におけるバグの検出を行うソフトウェアテストをメイン事業とした少し珍しい企業です。

ただでさえエンジニアの人材不足が叫ばれていますが、テストを専門に扱うエンジニアはさらに慢性的な人材不足。加えて日本では、ソフトウェアの“開発”を学ぶ場や学校は数多くある一方で、ソフトウェアの“テスト”を専門的に学べる学校はほぼ皆無な状況です。

そのため、バルテスが創業した当初から「自社でテストエンジニアを育成する」のが根本的なテーマかつ目標で、人材の育成も含めこの業界を支えていくことが共通認識でした。

変化が激しいIT業界は、ソフトウェアが次々と進化するため、バグを検出するテスト技法もその都度アップデートさせなければいけません。ですので、テスト技法を体系化することも、社内全体に浸透させることも至難の業であり、どうしても属人化しやすい業務。そのため、テストは専門企業に外部委託する企業が増えており、当社も年々売上が伸びていきました。

当初、新入社員は1週間ほどで基礎的な知識を学んだ後は、OJT方式で技術教育を行っていました。日本のIT現場においては従来、テスト技法はOJTでしか教えられず、先輩の見よう見まねでしか学べなかったんです。

しかし、OJTは人によって指導内容にばらつきがあることで成長に差が出たり、指導者は通常業務もあるため負担になったりと、課題が多くありました……。

そんな課題が残る一方で、企業の急成長に伴い採用した人材をいかに早く戦力化できるかが急務に。そこで、外部セミナーや社内研修を担当する部署であるR&C部による、研修の本格的な再構築がスタートしました。

まるで「自転車になぜ乗れるのか」の説明書をつくるよう──研修運営の苦悩

▲独自開発された300ページにもなる教科書

本格的な研修の再構築が始まったのは2015年のこと。

まずはテスト技法を体系化し、誰もがつまずくポイントを明確にすることから始めていきました。

しかし当時、講師であるR&C部の社員はソフトウェアテストの経験者ばかり。未経験の方たちが何を理解できず、どこにつまずくのかが分からないため、未経験者と同じ目線に立った研修ができていなかったのです。

自転車に乗れる人は多いけれど「自転車になぜ乗れるのか」を体系的に書いた本がないように、すでに技術を習得している我々にとって「どうしたらソフトウェアテストができるのか」を体系化していく作業は苦労しました……。

まずは、スキルがある者はテストに対する考え方がみんな似ていたので、共通項を抽出していき、ロジカルに体系的に組み直していきました。そこでわかってきたのは、テスト技法は土台となる普遍的な部分と、時代とともに変化する部分の両方から成り立っていること。そして、前者の普遍的な部分をしっかり理解し身につけていることが大事であることでした。

こうして体系化したものを実際に教えてみると、今度は理解してもらえないことが出てくるんです。そこで、「この伝え方では未経験者にとっては理解できないのだ」と理解した上でさらに細分化していき、試行錯誤を繰り返しました。

そうやって月日を重ねていくうちに、初心者のつまずくポイントが私たちの中に蓄積されていき、改善することができたんです。

また、一方的に研修をするのではなく「演習・採点・レビュー」の流れを組み込むことで、受講者たちの苦手を把握し、段階的にそれらを学べるようなコンテンツへと変更していきました。

石原 「限られた時間の中で、教えたいことはたくさんあるわけです。かといって詰め込んだら良いわけでもなく、人が吸収して成長するのに必要な期間がありますよね。ですので、限られた時間の中でスキルを身につけさせるにはどうしたら良いのか、長い試行錯誤がありました」

コンテンツ作成と並行して、研修期間の目安も決めていくことにしました。現場に配属しても問題のない合格ラインを設けて、卒業試験を設定。早い人は1カ月、遅い人でも2カ月ほどで合格ラインに達することが明確となったため、未経験者は2カ月間の5ステップ、経験者は1カ月間の3ステップを目安とした研修となりました。

自発的に学びと向き合える環境──成長意欲を後押しする「バルゼミ」とは

▲コロナ禍によりオンライン研修へ移行

入社時研修に力を入れていたわけですが、中堅社員にも、プロとしての確かな技術力を身につけて、常に自分をブラッシュアップできる環境をつくりたいと考えていました。

ただ、強制ではなく学びたいと思える環境──学ぶ意欲があればいくらでも学べ、スキルアップすればそれに対して会社は報いる、そういう環境をつくりたかったんです。

そこで32講座以上・計140時間以上もの年間研修である「バルゼミ」を整備しました。これは、テスト技術講習だけでなく、プレゼンの仕方や、ヒアリングの方法など、多方面のビジネススキルが磨ける講座です。

バルゼミでは、毎週数本の講座が開催されます。年間の講座スケジュールはあらかじめ展開されているため、社員は自分が好きなタイミングで受講できるようになっています。

また、積極的にブラッシュアップに励んでいる方に少しでも還元したいという想いから、2018年度に評価制度を改定して、講座への参加も賞与に反映されるようになりました。これは、「スキル」だけでなく「学ぶ姿勢」も評価するために、講座内での成果物だけでなく、受講ごとにもポイントが付与され、それが賞与へ反映されるしくみです。

もともと受講者は一定数いたのですが、新型コロナウイルスによりオンライン開催に変更したことで、自宅や通勤中でも聴けると受講者も増加しています。たくさん受けている方はメキメキとスキルをのばし、結果的に給与や賞与アップに結びついているので、相関関係があるなと思っています。

成長加速・社員数増加・日本初称号──社内研修がもたらす大きな波紋

▲世界で8社しかいないGlobalpartnerの称号

社内研修のおかげで思わぬ称号をいただくことにもなりました。

石原 「2006年から開始されたソフトウェアテストの国際的にも通用する資格試験があるんですが、この試験が始まった当初、当社の合格率は平均を下回っており、テスト専門企業と名乗るには絶望的な状況でした。それが、今となっては92%の資格保有率を誇っています。

その他にも、ソフトウェアテストに関する国際的な資格認定機関からは、世界でもわずか8社しかいない最高位ランクの称号を、2017年12月に日本で初めて認定していただいたのです」

学ぶ場が極端に少なく、属人化しやすいとされていたソフトウェアのテスト技術。それを体系化し、今もなお続くブラッシュアップのおかげで、社外からも認められるほどの技術スキルが担保できる状態にまでなりました。

それ以外にもリーダーになれるまでに平均3年を要していたところ、早い人は1年でリーダーに昇進するなど、成長速度も飛躍的に向上しています。また、研修体制が整ったことで、新卒だけでなく未経験の中途も積極的に採用できるようになりました。現在は正社員数が2018年3月末比の2倍近くまで増え、過去3年間の平均成長率が130%をキープできるなど、当社の成長をけん引しています。

当社は「ICT社会に貢献する人材を育成する」ことを企業理念として掲げています。昨今の複雑化していくICT社会が私たちのようなテストエンジニアの手によって支えられていることに誇りと責任を持ち、今後も常にアップデートし続けたいと思っています。