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WORKSTORYAWARD2020

これからの日本をつくる100の“働く”をみつけよう「Work Story Award 2020」の受賞ストーリー、
一次審査通過ストーリーを公開しています。

「部活動」がビジネスをけん引?メンバー同士のコラボレーションを生んだ秘訣とは

株式会社ダイレクトソーシング
「個人が輝き、自由に働く環境」を推進してきた株式会社ダイレクトソーシング。その自由な社風がゆえに社員数が増えるにつれメンバー同士のコラボレーションが生まれにくい状況に。その打開策として生まれたのは社内の「部活動」でした。今ではビジネスをけん引するまでになった背景をご紹介します。

自由を推奨する社風の裏に潜んでいたのは、規律と協調性の低さ

▲ビジョンは「STAND ALONE COMPLEX SOCIETY」

株式会社ダイレクトソーシングは「人の能力の高い低いはなく、スキルと仕事のマッチ・アンマッチがあるだけだ」という考えのもと、スキルをもとに人財を探すダイレクトソーシングや採用ブランディングなどを行う企業です。

当然社内でも、社員一人ひとりのスキルが輝く組織であるために「個人が輝き自由に働く環境」をメンバーに提供してきました。たとえば、入社時に在宅用のモニターを支給し「リモートワークの推奨」をしたり、勤務時間内に自由に遊ぶ時間を取得可能な「ショートバカンス制度」を提供したりしています。

また採用要件も、これまでの既成概念にとらわれない「自由な発想ができるメンバー」を重視。 人材ビジネスを展開していますが、33名のメンバーの中で人材業界出身者はゼロ。 転職元もSIer、マーケター、エンジニア、自衛隊、理学療法士と千差万別です。

そんな中、各個人の能力値は高く仕事の効率性は上がっていく一方で、その自由さゆえに規律や調和性が低く、メンバー間のコラボレーションが生まれづらくなっていきました。

当時の状況をエンプロイサクセス部(部活動)の三上 遥楠はこういいます。

三上 「私が入社したばかりの2016年当初は、月1で行われていた全員参加のミーティングで、会社のこともお互いのことも共有し、キャッチアップできていました。

しかし2018年ごろから人数が増えチーム編成をするようになり、チームメンバー同士は共有し理解していても、会社全体や他チームのメンバーについて把握するのは難しくなって、このままでは組織として弱くなり、コラボレーションが生まれにくい状況になってしまうことに危機感を感じていました」

そこでこの状態を打開すべく、エンプロイサクセス部が中心となり、コラボレーションを促進するためのプロジェクトを立ち上げることになったのです。

まずは現状分析と社員の見える化からスタート

▲エンプロイサクセス部のメンバー

まずはメンバーが日々発している言葉や考え方などから、メンバーの特徴を洗い出すことにしました。

三上 「メンバーの言葉などを観察していると、たとえば『会社のために頑張る』という言葉が嫌いだったり、上下関係や競争などの『人との比較』が嫌いだったり。ほかには『非効率なこと』が嫌いなど、特徴が見えてきました。逆に好きなことは『徹底的な自由』や『結論を出すのは上下関係でなくデータ』などの特徴があったんです」

次に資質や才能が数値として可視化できる「ストレングスファインダー」という診断テストを行いました。その結果、エンプロイサクセス部が感じていたことは数値として裏付けられるものであるとわかったのです。

三上 「メンバーのストレングスファインダーの点数を合計すると『競争性・規律性・調和性』が下位3位に入っていました。これを見て、やはりコラボレーションが苦手なメンバーが多く、コラボレーションが起きにくい環境だとわかったんです」

現状を知り、コラボレーションが創出されるしかけが必要だとわかったため、社員の見える化を実行。

三上 「コラボレーションをしようと思っても、それぞれの社員が今まで身につけてきたスキルや、やりたいことがわからないなと思ったんです。お互いがわからないと、そもそもコラボレーションは生まれない……それならば、社内外に向けて社員の情報を発信しようと考えました」

まず社内に対しては、社内向けの社員紹介ページを作成し「Past」「Now」「Next」と、社員一人ひとりの「できること」や「今後やりたいこと」などを掲載。誰に何を聞くことができ頼むことができるのか、というコラボレーションの第一歩が生まれやすいページに仕上げました。

また社外に対しては、社員一人ひとりをより深く知ることができるインタビュー記事を作成し発信していったのです。

興味関心や得意なスキルを「部活動」にすることで、コラボレーションを創出

▲活動が広がるきっかけとなった筋トレ部

社員自身のことを見える化し、互いを知ることができる土台ができたところで、次に目をつけたのは社内で自然発生していた数々の集まり。

三上 「社内でそれぞれが自由に『○○しよう』と自然に集まっていたんです。その中には『○○部』という言い方をしているところもあり、部活動としたらおもしろいんじゃないかって考えたんです」

自然発生している集まりやプロジェクトを、あえて「部活動」として推奨しました。すると“部活動“という表現でハードルが下がるのか、最初にできた「筋トレ部」と「フットサル部」をきっかけに、多くの部活動が生まれていきます。

三上 「『英語ランチ部』は、社内で英語を話せるようになりたいと言っていたメンバーのひと言がきっかけです。そこから『英語が話せるメンバーと一緒にランチをしながら、レッスンとかしてもらったらいいんじゃない?』と始まったんです。

エンプロイサクセス部が『こんな部活動をやってください!』と伝えるのではなく、あくまで自由に、メンバー間から生まれることを大切にしています。私たちは、立ち上がった部活動が活性化されるように、とりまとめて全社に周知する役割を担っています」

ほかにも、顧客の満足度向上を考える「顧客満足度アップ部」、メンバーが簡易的なコンピュータプログラムであるスクリプトがかけることを目指した「スクリプト部」、データ分析の手法について考える「統計部」など、合計27個もあります。

趣味の合う仲間と遊ぶ感覚から始まった部活動は、今ではスキルを持ったメンバーが、スキルを欲しているメンバーに教える、趣味を超えたユニークな集まりへと変化していきました。

たかが部活動、されど部活動。ビジネスをけん引する“なくてはならない”存在に

▲部活動の一環でスクリプト部が開発した社内ツールが業務の効率化に

あえてカジュアルに始めやすい「部活動」としたこの取り組みは、思いがけない効果を発揮することになりました。

三上 「営業メンバーがお客様に提案する際にデータを提示するのですが、その提案データを出すための社内ツールをスクリプト部が開発したんです。数値さえ入れればお客様が欲しいデータが瞬時に出るようになっていて、それを活用してお客様とのご契約につながった報告も受け、嬉しく思っています。

社内業務の効率化や、顧客満足度を向上させるツールが次々と生まれているので、今では『部活動』が当社のビジネスレベルを向上させる主要な機関となりました」

部活動の強みは社内での仕事上の役割に縛られない点にあります。社内で部署やチーム編成があると、「ツール開発は、システム開発メンバーの仕事」という役割を無意識で固定させてしまいがちです。

しかし、部活動のおかげで役割の概念が消え、営業メンバーがツールを開発するなど、枠にとらわれない自由な動きが活性化されています。

三上 「メンバー自身、本当は能力を生かし役立てたいと考えていたようです。ただ、それを表現する場がなかったことが、コラボレーションが起こらない要因だったと気づきました。

最近では、経理財務部長が経理財務の効率化のためにプログラムを学び始めたんですが、その過程でわからないことがあると、スクリプト部に相談しているんです。ほかのメンバーも、部活動ができたことで困ったときに質問や相談がしやすくなったと言っています」

メンバーの会社に対する総合満足度も、取り組みを実施する前後で74ポイントから82ポイントに向上しました。とくに「職場・会社風土」に対する満足度が上がり、部活動による成果を実感しています。

三上 「これは思いがけない効果なのですが、入社してくるメンバーのほとんどが、必ずといっていいほど友人を紹介してくれ、当社の採用の主力が社員紹介になっています」

社内のコラボレーション創出のきっかけとして始めた「部活動」の推奨は、今では当社のビジネスや社内文化、そして採用をも支える、なくてはならない存在となりました。まだまだ始めたばかりの施策ではありますが、今後も当社のカルチャーを守りつつ、発展させていく予定です。